聖女の騎士と不埒な獣

ましろはるき

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15 叱られた犬

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「……あっ! やっ、ま、まて……ひいっ!」

 ばちゅん、と音を立てて、ウォルフの昂った性器がエアネストの中に埋まりきる。

「ひ、やっ! ああっ! うぉる、ふ……ぅんッ!」

 先ほどまでの、獣の交尾のような手酷い責めではない。ゆっくりと引き抜いては、腹の中に出された精液を擦り付けるように奥まで突き入れられる。

「あっ、ひぅっ、……やあっ、まて、ま、あぁっ、ああ……っ!」

 待て、という言葉が用をなさない。せめて行動で意思を示したくとも体に力が入らない。元々が不利な体勢な上に体格差もある。エアネストの拒絶はただもがくだけで終わる。

「ひぅうっ! あッ! やあっ! そこ、だめ……っ、ああっ! うぁああッ……!」

 何度も突き入れられ、体は既に行為に順応し始めている。圧迫感があるものの、苦痛はない。ウォルフが動くたびに、腰が甘く疼く。体が熱く昂る。このままでは――。

「――だめだ! やめろ!」

 内側から込みあげてくる未知の感覚に怯えたエアネストは、焦燥に駆られて叫んだ。
 明確な拒絶の言葉に、ウォルフは動きを止める。素直に命令を聞き届けてもらえたことに安堵するが、ウォルフの表情を見てぐっと息を詰まらせた。
 心底辛そうに眉根を寄せて。体の芯を悲哀に貫かれたような、ひどく悲しげな眼差しが注がれる。
 ――普段は無表情なくせに、こんな時だけ叱られた犬のような顔をするのは、卑怯ではないか。

「ウォルフ……、すまないが……これ以上は……」

 なぜか自分の方が不当な要求をしたような気持になりながら、エアネストは手を伸ばしてウォルフの頬を撫でた。

「これ以上、気持ちのいいことを、されてしまったら……この行為を、好きになってしまいそうで……困る……」

 性器に触れられてもいないのに、あらぬ場所を犯されて、気持ちよくなってしまうなどとは。自らの体の変化を恥じて、エアネストは潤んだ瞳を伏せた。
 本来であれば、他者と性的に交わるのは、お互いの想いが重なってこそ意味を成すものだ。愛の交歓でもなく、子を授かる為でもなく、ただ快楽を追い求めるのは恥ずべき事。エアネストはそう教育され、忠実に守ってきた。ましてや神に命を捧げた身。呪いを解くという特別な理由もなく、不道徳な行いに流されるわけにはいかない。
 エアネストの言葉に動きを止めていたウォルフは、小さく息をもらした。

「……ウォルフ?」

 月明かりに浮かぶその表情は、まるで微笑んでいるように見えるが――いや、ように、ではない。間違いなく微笑んでいる。
 ――ウォルフもこんな風に優しい表情をすることがあるのか。
 呆然とウォルフに魅入っていたエアネストだったが、腰の引けていたウォルフが再び腰を押し進めたせいで悠長に眺めている余裕がなくなる。

「ひううッ!」
「――それなら、好きになったらいいじゃねえか」
「やっ、だ、だめ……っ! だめ、やっ、あっ!」

 ウォルフはゆっくりと腰を動かしながら、エアネストの胸をまさぐる。桃色の小さな肉の粒を探り当て、指先でこね回す。くすぐったさに身を捩れば、結合した場所が擦れて、上ずった声が出てしまう。

「んんっ……! やっ! ふ、あぁ……!」

 赤子に与える乳を出せるわけでもないのに、男の乳首など触っても意味はない。それでもウォルフは執拗にエアネストの乳首を刺激する。くすぐったいだけのはずが、そうされるとどうしようもなく腰が疼いてしまう。

「……はっ、すげえな……少し前まで、指一本入れるのもキツかったのに……俺のものを突っ込まれて、気持ち良くなっちまってんだもんなぁ……」
「ち、ちがう……あっ、あぅ、あああっ!」
「気持ちよくねえのか? こんなに腰をくねらせてんのに」
「――……っ!」

 ウォルフに指摘されて、もっと、とねだるように腰を動かしてしまっているのを自覚する。奥に突き入れられるよりも、ゆっくりと引き抜かれるのが気持ちいい。浅い場所をぐっと押しつぶされると、腹の中が熱くなって、ひくひくと勝手に収縮してウォルフの性器を締め付けてしまう。
 ウォルフの昂りを発散させるのに付き合うのは百歩譲って応じられるが、自分まで気持ちよくなってしまうのはだめだ。快楽から逃れたくて、少しでも媚びるような声を出すまいと奥歯を食いしばるが、弱い場所を突かれてあっさり喘ぎ声をもらしてしまった。

「ん――っ! ああっ、そこ、は……!」

 ウォルフに探り当てられてしまった、腹の内側。そこを穿たれたら、得体のしれない熱が、呼び覚まされてしまう。
 わずかに自由になる手を伸ばしてウォルフの胸板を押す。それはウォルフの目に抵抗として映らない。縋るように差し出された手に指を絡めて、囁きかける。

「なあ、教えてくれよエアネスト様。ここ、こうされるのが気持ちいいんだろ?」

 最も感じる場所を穿ったまま、ウォルフが動きを止める。既に篭絡されきっている体は素直にウォルフの意図を読む。
気持ち良いと口にしなければ、続きをしてもらえない。
 だめだ。怖い。これ以上されたら、どうなってしまうかわからない。これ以上知ってしまってはいけない。理性ではそう思うのに、もっとほしいと心の奥底で叫んでいる自分の本能が、恐ろしい。

「う……ウォルフ……」

 どうしたらいい。助けを求めるように見つめたウォルフの瞳は、欲に濡れていた。切羽詰まって、今にも爆発しそうな欲求を抱えて、エアネストを貪りたいと訴えている。
 ――ウォルフに、求められている。
わずかに残った理性を、ウォルフの眼差しが打ちのめす。

「……き、もち、いい……」

 ほとんど聞き取れないほどの小さな声音に、ウォルフは蕩けたように微笑んだ。
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