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四章
60 王族→奴隷→男娼→商人兼冒険者→魔王
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ギルディラースに代わって魔王となった俺は、アルティメット・ドラゴンの世界をぶち壊すための計略を練った。
――復讐のために、俺はアーサーから何もかも奪う。
まずは勇者としての存在意義。アルドラでは各地でイベントが起こるが、基本的には魔物の脅威から人々を救う流れになっている。つまり、魔物が人間に悪さをしなければ勇者がいる意味もなくなる。
そのために俺はアーサーが二十歳の誕生日を迎えるまでに各地を周り、あらかじめ魔物たちを調伏しておいた。これはギルディラースからコピーした〔隷属〕のスキルのおかげで容易く実行することができた。隷属させた魔物たちはみんな魔境へ連れ帰った。
次に、アルドラに登場するダンジョンを片っ端から調べた。本来であればレッドドラゴンやブルードラゴンの出現によって消滅するはずだった町を救ったように、まだ存在しない場所はダンジョン化を阻止。すでにダンジョンとして存在している場所からは魔物だけではなく宝箱も回収しておいた。
そもそも勇者が有利になるアイテムをダンジョン内に置いておくのが不自然なんだよな。その点についてギルディラースに尋ねると「疑問にも思わなかった」と目を丸くして答えた。
ギルディラースの頭が悪いわけではない。ゲームの筋書きを変えてしまうような行動を取れないのは、アルドラの魔王としての縛りなのだと思う。
ともかく。これで魔物が人間を襲うことによって発生するイベントは起こらない。アーサーは活躍の場を失い、魔物がいないからレベル上げもできない。ダンジョンに眠る貴重なアイテムを手に入れることもできない。
それに並行して、俺は能力集めにも励んでいた。
これまではニールちゃんのかわいさを武器に奮闘していたが、〔変身〕のスキルを手に入れてからは超効率化した。小さなチスイコウモリに変身して、目当ての能力を持った人物が寝ている隙にひっそりと血液をチュウチュウさせていただく戦略である。念のため〔スリープ〕の魔法で深く眠らせて、血を吸った後は〔ヒーリング〕で傷跡を癒してしまえば完全犯罪成立。
魔物から能力をいただきたいときは〔隷属〕のスキルで従わせて、血を一口分徴収するだけでいい。今の俺はこの世界に存在する能力をほぼすべて手に入れたのではなかろうか。我ながら恐ろしい。自分でも今の俺の倒し方がわからない。もしかしてガチで最強の魔王になっちゃったんじゃない? なんて。調子に乗っていたのだ。ラパス村で起きた惨劇を知るまでは。
「まさか、あそこまでクズだったとは……」
「我も元魔王ながら、あの外道ぶりには引く……」
俺のつぶやきに、ソファに並んで腰掛けていたギルディラースが答えた。
いま俺たちがいるのは魔王城の一室。「鏡の間」と呼んでいる部屋だ。部屋の中央にはゆったりと腰掛けられるソファ。周囲にはいくつもの鏡が置かれている。
鏡に映し出されるのはイービルアイが目にした光景。かつてギルディラースが俺を監視していたのと同じ方法で、俺はアーサーを監視していた。
魔物であるイービルアイは、結界石で守られている町や村の中までは入り込めない。監視できるのは道中の様子だけだが、それでも十分な情報を得られる。
ラパス村でのイベントは、妖精が魔物化することで発生する。だけれど今は俺がギルディラースを隷属させて力を抑えるよう命令している。ギルディラースの力に触発されて妖精が魔物と化すことはなかった。村も平穏無事なので、エミリアが勇者と共に旅立つ動機は消える。
それでもなんらかの強制的な力――この世界の神とやらが干渉して、アルドラのストーリー通り仲間になるのかもしれない。
アーサーはエミリアを仲間にするため、ラパス村まで赴いたようだったが、空振りに終わった様子だった。
大人しく引き下がるアーサーを見て俺は安堵した。ゲームの筋書きを確かに変えたという達成感もあった。だから完全に油断していたのだ。まさか俺が監視していなかった深夜に単独でラパス村に向かい、エミリアを殺すなんて。しかも村を守る結界石を壊して放火した上、村人を虐殺するなんて、思いもしなかった。
俺が甘かった。弱者を人と思っていない奴が、不従順な相手に何をしでかすか。自分の思い通りにいかなかったときにどうするか。想定しなければならなかったのだ。
「早速約束を破ってしまって、申し訳ない……」
俺が頭を下げると、ギルディラースが不満そうな声をあげた。
「ニール様が謝ることなど何ひとつないであろう。だいたい、このような人間の手など借りなくても、我らだけで十分に対処可能であるのに」
「ほう、ニールがこの私を必要としているのがそんなにも不満か」
ギルディラースの言葉に、俺の左隣に座していたクロヴィスは口の端を上げて笑った。
――復讐のために、俺はアーサーから何もかも奪う。
まずは勇者としての存在意義。アルドラでは各地でイベントが起こるが、基本的には魔物の脅威から人々を救う流れになっている。つまり、魔物が人間に悪さをしなければ勇者がいる意味もなくなる。
そのために俺はアーサーが二十歳の誕生日を迎えるまでに各地を周り、あらかじめ魔物たちを調伏しておいた。これはギルディラースからコピーした〔隷属〕のスキルのおかげで容易く実行することができた。隷属させた魔物たちはみんな魔境へ連れ帰った。
次に、アルドラに登場するダンジョンを片っ端から調べた。本来であればレッドドラゴンやブルードラゴンの出現によって消滅するはずだった町を救ったように、まだ存在しない場所はダンジョン化を阻止。すでにダンジョンとして存在している場所からは魔物だけではなく宝箱も回収しておいた。
そもそも勇者が有利になるアイテムをダンジョン内に置いておくのが不自然なんだよな。その点についてギルディラースに尋ねると「疑問にも思わなかった」と目を丸くして答えた。
ギルディラースの頭が悪いわけではない。ゲームの筋書きを変えてしまうような行動を取れないのは、アルドラの魔王としての縛りなのだと思う。
ともかく。これで魔物が人間を襲うことによって発生するイベントは起こらない。アーサーは活躍の場を失い、魔物がいないからレベル上げもできない。ダンジョンに眠る貴重なアイテムを手に入れることもできない。
それに並行して、俺は能力集めにも励んでいた。
これまではニールちゃんのかわいさを武器に奮闘していたが、〔変身〕のスキルを手に入れてからは超効率化した。小さなチスイコウモリに変身して、目当ての能力を持った人物が寝ている隙にひっそりと血液をチュウチュウさせていただく戦略である。念のため〔スリープ〕の魔法で深く眠らせて、血を吸った後は〔ヒーリング〕で傷跡を癒してしまえば完全犯罪成立。
魔物から能力をいただきたいときは〔隷属〕のスキルで従わせて、血を一口分徴収するだけでいい。今の俺はこの世界に存在する能力をほぼすべて手に入れたのではなかろうか。我ながら恐ろしい。自分でも今の俺の倒し方がわからない。もしかしてガチで最強の魔王になっちゃったんじゃない? なんて。調子に乗っていたのだ。ラパス村で起きた惨劇を知るまでは。
「まさか、あそこまでクズだったとは……」
「我も元魔王ながら、あの外道ぶりには引く……」
俺のつぶやきに、ソファに並んで腰掛けていたギルディラースが答えた。
いま俺たちがいるのは魔王城の一室。「鏡の間」と呼んでいる部屋だ。部屋の中央にはゆったりと腰掛けられるソファ。周囲にはいくつもの鏡が置かれている。
鏡に映し出されるのはイービルアイが目にした光景。かつてギルディラースが俺を監視していたのと同じ方法で、俺はアーサーを監視していた。
魔物であるイービルアイは、結界石で守られている町や村の中までは入り込めない。監視できるのは道中の様子だけだが、それでも十分な情報を得られる。
ラパス村でのイベントは、妖精が魔物化することで発生する。だけれど今は俺がギルディラースを隷属させて力を抑えるよう命令している。ギルディラースの力に触発されて妖精が魔物と化すことはなかった。村も平穏無事なので、エミリアが勇者と共に旅立つ動機は消える。
それでもなんらかの強制的な力――この世界の神とやらが干渉して、アルドラのストーリー通り仲間になるのかもしれない。
アーサーはエミリアを仲間にするため、ラパス村まで赴いたようだったが、空振りに終わった様子だった。
大人しく引き下がるアーサーを見て俺は安堵した。ゲームの筋書きを確かに変えたという達成感もあった。だから完全に油断していたのだ。まさか俺が監視していなかった深夜に単独でラパス村に向かい、エミリアを殺すなんて。しかも村を守る結界石を壊して放火した上、村人を虐殺するなんて、思いもしなかった。
俺が甘かった。弱者を人と思っていない奴が、不従順な相手に何をしでかすか。自分の思い通りにいかなかったときにどうするか。想定しなければならなかったのだ。
「早速約束を破ってしまって、申し訳ない……」
俺が頭を下げると、ギルディラースが不満そうな声をあげた。
「ニール様が謝ることなど何ひとつないであろう。だいたい、このような人間の手など借りなくても、我らだけで十分に対処可能であるのに」
「ほう、ニールがこの私を必要としているのがそんなにも不満か」
ギルディラースの言葉に、俺の左隣に座していたクロヴィスは口の端を上げて笑った。
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