【本編完結】二度も殺されたくないので最強魔王になりました

ましろはるき

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四章

64 運命(レナード視点)

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「何なんだよ、ふざけやがって! メイベルもバグってるじゃねえか!」

 メリディエースの王城にて。メイベル殿下との謁見を断られたアーサー殿下は、応接間の椅子を蹴り上げて怒りをあらわにした。
 ――メリディエース王国の姫君、メイベル殿下が旅の仲間になる。それが運命なのだとアーサー殿下は主張した。
 恐ろしい魔物に呪われたメイベル殿下の命は風前の灯。魔物を倒すことでメイベル殿下が仲間になる。アーサー殿下はそう仰っていたが、メイベル殿下は呪われてなどいなかった。メリディエース王国内で魔物が被害をもたらしているという話すらない。国は平穏そのもの。そんな中で「王女が魔物に呪われる」という不吉な予言を持ち込んだアーサー殿下は警戒され、謁見すらかなわなかった。

「なんと乱暴な……」
「やはり噂は本当だったのだな」

 メリディエースの大臣と家臣たちが眉をひそめている。
 アーサー殿下がミッドランドの王子だということは信用してもらえた。しかし王女殿下との謁見を断られたのは、アーサー殿下本人の悪評が広まっているからだと思われる。
 ここまでの旅路で、アーサー殿下は少なくない数の人々に暴力を振るってきた。ミッドランドの王子が勇者と名乗り、各地を巡っては狼藉を働いている――そう噂になっているに違いない。今もなお、冷めやらぬ怒りを持て余している状況だ。

「アーサー殿下、どうかお鎮まりください」
「うるせえ! どうせお前も俺のことを馬鹿にしてんだろ!」
「いいえ、けしてそのようなことはございません」

 旅を始めた当初は家臣である私に対して丁寧だったが、私の前でもついに優しい王子の仮面を脱ぎ捨ててしまわれた。私は外交問題になる前にアーサー殿下を説得して、どうにか宿まで戻った。



 ミッドランドの国王は神の声を聞くことができる。予言により国家は安泰。そんな国王陛下は、第一王子が生まれた際に「この者はいずれ魔王を誅する勇者となる」と予言なさった。それは祝福であると同時に、封印された魔王が蘇るという呪わしい予言でもあった。
 そしてこの私も、恐れ多くも勇者と共に旅立つ聖騎士となるという予言を受けた。

「へー、君がレナードか。ドット絵だとわかんなかったけど、結構顔がいいんだな」

 七歳になったアーサー殿下に初めて謁見した際、不思議なことを仰っていた。ゲーム。アルドラ。よくわからない言葉を使うのは、神に選ばれた勇者であるからだと周囲は解釈していたし、私もそう思うようにした。
 ――幼い頃より神童との呼び声高い王子と、魔王を討つべく旅立つ。そのことは名誉だと思う。アーサー殿下に忠誠を誓い、命をかけてお守りしよう。そう思っていたのも束の間。やがてアーサー殿下が恐ろしい一面を合わせ持っていることに気がついた。
 私の他にも貴族子弟が数人、学友として側に侍っていた。アーサー殿下は私の前では優しい顔しか見せなかったが、影では特定の一人を大勢に虐めさせていたようだった。度し難いことだが、子供の悪戯の範疇として、アーサー殿下のふるまいは黙認されていた。――侍女に暴行を加え、殺害するまでは。
 私には詳しく知らされることはなかったが、噂によればひどい有様だったという。それでも悪びれることなく楽しげに笑っているアーサー王子と、諌めもしない周囲に、私は疑問を抱くようになった。
 このまま唯々諾々と従っていてはいけない。危機感を覚えた私は、十五歳の成人を迎えたのち、冒険者になるべく旅立った。当然ながら周囲には反対されたが、押し通した。
 
 他国に渡り、外の世界に出てみれば、王侯貴族の抱える欺瞞が一層明らかになった。
 王侯貴族は偉大な魔力を行使することで魔物から平民を守る。魔物の脅威から守られた平民たちは税金を納め、王侯貴族に忠誠を誓っている。――ということになってはいるが、実際に貴族が平民のために魔物を討つ機会は滅多にない。
 魔物を倒しているのは主に冒険者たち。貴族は冒険者ギルドに出資することで、貴族としての義務を果たしているつもりになっている。
 身分を隠して冒険者として戦っている間は、充実していた。王都にいたときとは違って、この手で人々を守っているという実感があった。
 同じように貴族の生活に馴染めず冒険者となった仲間たちにも出会った。中には困窮した貴族家の、跡を継げない次男や三男が出稼ぎをしていることもあった。様々な事情はあれど、みんなそれぞれに自由に生きていた。私にもはっきりと、生きているという実感があった。
 そして七年余りの時が流れ、私は運命に――ニールに出会った。
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