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四章
63 誘拐イベント(アーサー視点)
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エミリアが仲間にならないというアクシデントはあったけど、俺たちは冒険を続けた。
女はエミリアだけじゃない。そのうちもう一人、メイベルという名前の魔法使いが仲間になる。メイベルはメリディエースという国の王女。エミリアみたいな田舎者のヒス女とは違って、きっと上品でおとなしい美少女のはずだ。
――それにしてもクソゲーかよこの世界は。どこに行っても平和で、ゲームでは発生したはずのイベントが起こらない。ミッドランドの王子で勇者である俺が来てやってきたというのに、どの町でも反応が薄かった。尊敬も感謝もされない。
一応ダンジョンに行ってみてもゴブリンが数匹いるぐらいで、野生動物のほうが多いぐらいだった。宝箱も空っぽ。アイテムが手に入らない。俺はいつまでたってもレベル16のままだった。
でも、旅に飽きてきたころ、ようやくイベントらしいイベントが起こった。
メリディエースの端。寒さの厳しい漁村を訪れると、誘拐事件が起きていた。妻や子供が連れて行かれてしまったと嘆く男たちの話をレナードは生真面目に聞いているが、ゲームだと子供たちは村から南西に位置する塔に囚われている。魔物が子供をさらって生贄にしようとしてるんだよな。
「――旅商人が? その者はどのような外見でしたか?」
「どのようなって言われても、なんの変哲もない商人で……まあ、顔だちは男だけど可愛い方っていうか……かなり可愛かったけど……」
「その者の名前は、もしや――」
「レナード。話はもういいから、塔に行こう」
なんでか村人の話を熱心に聞いているレナードを連れて塔に行く。ここにもやはり魔物の姿はなかった。棲みついていた野生動物がたまに襲いかかってくるぐらい。人間も野生動物も、倒したところで経験値は加算されないんだよな。全部レナードに対処させながら、ひたすら塔を登っていく。
苦労してようやく頂上にたどり着いたのに、この塔にいるはずのボスはいなかった。
「ここにも魔物がいねえのかよ! じゃあなんで子供が拐われてるんだ!?」
「……おそらく、魔物の仕業ではなく、商人が噛んでいるのかと思われます」
「はあ? 奴隷商人てこと?」
「いいえ。村の者たちの話によれば――」
レナードの話を聞きながら村までの復路をたどる。
村人が言うには、今から半年以上前に移民の話を持ってきた商人がいるという。
開墾したばかりの新しい村があって、そこでは弱い者が虐げられることはない。食事と安全な住居の保障つき。それぞれの能力に適した仕事を斡旋してもらえる。暴力は禁じられており、加害者は厳罰を受ける。
聞いている限り、かなり怪しい話のように思える。それでも村で虐げられてきた女子供は、商人の手引きでみんなそこへ逃げてしまったのだという。
「はあ!? じゃあ誘拐でもなんでもなくて、嫁と子供に逃げられただけってこと!?」
「……はい。少なくとも誘拐ということではなさそうです」
村に戻ってみて納得した。いるのは年寄りや男ばかり。モブなんて気にしてなかったけれど、よく見ればどいつもこいつも、女子供をいびってそうな意地の悪い顔をしていた。
「なあ、あんたたち。何をしにあんな古びた塔まで行ってきたのか知らないが、勇者様なんだろ? それなら誘拐された子供達を連れ戻してきてくれよ」
「そうだそうだ、嫁が勝手に子供を連れて出ていきやがったんだから、誘拐だ。働き手がいなくなって困ってるんだよ、なんとかしてくれ」
「女のくせに逆らいやがって……とっ捕まえて、思い知らせてやらなけりゃ」
目を血走らせた男たちが、口角泡を飛ばして俺に詰め寄ってくる。
「いや、そんなの知らねえし。そんな態度だから嫁に逃げられるんだろうが」
「なんだと!? 俺たちが悪いって言いたいのか!?」
「勇者のくせに困った人間を見捨てるのか!」
「――チッ。不敬だぞ貴様ら」
血迷って俺の胸ぐらにつかみかかってきた男の手を捻り上げて地面に突き倒す。そのまま剣を抜いてぶっ殺そうとしたが、例によってレナードが止めに入った。
「おやめくださいアーサー殿下!」
「いやいや、レナード。こいつらの方から手を出してきたんだから。少なくとも王族に狼藉を働いたこいつの右手は切り落とさないと」
「ここはミッドランドではありません! このままこの者を処分すれば、メリディエースとの外交問題になりかねません」
「ハァ、面倒くせぇなぁ……。じゃあレナードがこいつ殴っといて」
「……それは」
「レナードは俺の騎士だろ? 守るべき君主である俺に楯突いた平民を罰するのはお前の義務だ」
しばらく迷った様子を見せていたレナードだったが、力なく「ご下命に従います」と言って、俺の胸ぐらを掴んだ男を殴った。無様にひっくり返った男の情けない姿に満足して、俺は剣を鞘に収めた。
村人たちは怯えた様子で遠巻きにその様子を見ていたが、こんな村どうでもいい。
次は新たな仲間であるメイベルとのご対面だ。俺は意気揚々と王都へ向かった。
女はエミリアだけじゃない。そのうちもう一人、メイベルという名前の魔法使いが仲間になる。メイベルはメリディエースという国の王女。エミリアみたいな田舎者のヒス女とは違って、きっと上品でおとなしい美少女のはずだ。
――それにしてもクソゲーかよこの世界は。どこに行っても平和で、ゲームでは発生したはずのイベントが起こらない。ミッドランドの王子で勇者である俺が来てやってきたというのに、どの町でも反応が薄かった。尊敬も感謝もされない。
一応ダンジョンに行ってみてもゴブリンが数匹いるぐらいで、野生動物のほうが多いぐらいだった。宝箱も空っぽ。アイテムが手に入らない。俺はいつまでたってもレベル16のままだった。
でも、旅に飽きてきたころ、ようやくイベントらしいイベントが起こった。
メリディエースの端。寒さの厳しい漁村を訪れると、誘拐事件が起きていた。妻や子供が連れて行かれてしまったと嘆く男たちの話をレナードは生真面目に聞いているが、ゲームだと子供たちは村から南西に位置する塔に囚われている。魔物が子供をさらって生贄にしようとしてるんだよな。
「――旅商人が? その者はどのような外見でしたか?」
「どのようなって言われても、なんの変哲もない商人で……まあ、顔だちは男だけど可愛い方っていうか……かなり可愛かったけど……」
「その者の名前は、もしや――」
「レナード。話はもういいから、塔に行こう」
なんでか村人の話を熱心に聞いているレナードを連れて塔に行く。ここにもやはり魔物の姿はなかった。棲みついていた野生動物がたまに襲いかかってくるぐらい。人間も野生動物も、倒したところで経験値は加算されないんだよな。全部レナードに対処させながら、ひたすら塔を登っていく。
苦労してようやく頂上にたどり着いたのに、この塔にいるはずのボスはいなかった。
「ここにも魔物がいねえのかよ! じゃあなんで子供が拐われてるんだ!?」
「……おそらく、魔物の仕業ではなく、商人が噛んでいるのかと思われます」
「はあ? 奴隷商人てこと?」
「いいえ。村の者たちの話によれば――」
レナードの話を聞きながら村までの復路をたどる。
村人が言うには、今から半年以上前に移民の話を持ってきた商人がいるという。
開墾したばかりの新しい村があって、そこでは弱い者が虐げられることはない。食事と安全な住居の保障つき。それぞれの能力に適した仕事を斡旋してもらえる。暴力は禁じられており、加害者は厳罰を受ける。
聞いている限り、かなり怪しい話のように思える。それでも村で虐げられてきた女子供は、商人の手引きでみんなそこへ逃げてしまったのだという。
「はあ!? じゃあ誘拐でもなんでもなくて、嫁と子供に逃げられただけってこと!?」
「……はい。少なくとも誘拐ということではなさそうです」
村に戻ってみて納得した。いるのは年寄りや男ばかり。モブなんて気にしてなかったけれど、よく見ればどいつもこいつも、女子供をいびってそうな意地の悪い顔をしていた。
「なあ、あんたたち。何をしにあんな古びた塔まで行ってきたのか知らないが、勇者様なんだろ? それなら誘拐された子供達を連れ戻してきてくれよ」
「そうだそうだ、嫁が勝手に子供を連れて出ていきやがったんだから、誘拐だ。働き手がいなくなって困ってるんだよ、なんとかしてくれ」
「女のくせに逆らいやがって……とっ捕まえて、思い知らせてやらなけりゃ」
目を血走らせた男たちが、口角泡を飛ばして俺に詰め寄ってくる。
「いや、そんなの知らねえし。そんな態度だから嫁に逃げられるんだろうが」
「なんだと!? 俺たちが悪いって言いたいのか!?」
「勇者のくせに困った人間を見捨てるのか!」
「――チッ。不敬だぞ貴様ら」
血迷って俺の胸ぐらにつかみかかってきた男の手を捻り上げて地面に突き倒す。そのまま剣を抜いてぶっ殺そうとしたが、例によってレナードが止めに入った。
「おやめくださいアーサー殿下!」
「いやいや、レナード。こいつらの方から手を出してきたんだから。少なくとも王族に狼藉を働いたこいつの右手は切り落とさないと」
「ここはミッドランドではありません! このままこの者を処分すれば、メリディエースとの外交問題になりかねません」
「ハァ、面倒くせぇなぁ……。じゃあレナードがこいつ殴っといて」
「……それは」
「レナードは俺の騎士だろ? 守るべき君主である俺に楯突いた平民を罰するのはお前の義務だ」
しばらく迷った様子を見せていたレナードだったが、力なく「ご下命に従います」と言って、俺の胸ぐらを掴んだ男を殴った。無様にひっくり返った男の情けない姿に満足して、俺は剣を鞘に収めた。
村人たちは怯えた様子で遠巻きにその様子を見ていたが、こんな村どうでもいい。
次は新たな仲間であるメイベルとのご対面だ。俺は意気揚々と王都へ向かった。
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