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四章
68 新たな国王(アーサー視点)
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「マジでクソゲーだったわ。つーか時間を無駄にした」
倒れたレナードの脇腹を蹴り飛ばして、仰向けにひっくり返す。血だまりが広がった分だけ顔面は蒼白になり、目は虚に見開かれたまま。間違いなく死んだのを確認して、俺はため息をついた。
旅をしている間、ずっと俺のやることに口出しして、本当にうざかった。そこそこ強いし雑用をまかせられるから連れ歩いていたけれど、もういい。
「脇役の分際で生意気なんだよ、クソッ!」
もう一度蹴り飛ばすと、足元が血で汚れた。聖剣も血溜まりの中に落ちている。念のためもう一度拾い上げようとしたが、やっぱり弾かれてしまった。クソが。
――聖剣が俺のものにならない。ということは、この世界には魔王もいないんだ。魔物もいなかったし。完全にバグっている。
「あーあ……もう魔王とか聖剣とか、どうでもいいや。アホらしい。帰ろ」
せっかくゲームを楽しもうと思ったのに、心底無駄な時間を過ごしてしまった。俺はマジックポーションでMPを回復させて、〔テレポート〕を使ってミッドランドの王都に戻った。
「おお、アーサー殿下! 無事のご帰還、何よりでございます」
城に戻ると家臣たちが俺を出迎えた。
魔王は倒した。レナードは魔王との激闘で命を落とした。そう説明してやると家臣たちはどよめいたが、俺の言葉を疑っている様子はなかった。
俺は魔王を倒した勇者として、次代のミッドランド国王に即位する。そうしたらやりたい放題だ。このクソゲーから解放されて好きに生きる。思いっきり贅沢して、馬鹿なやつらに政治を教えてやって。
やろうと思えば戦争だって起こせる。まずはあの村。ノルト王国領にあった、人間と共に暮らしていた魔物たちを捕らえて奴隷にしよう。闘技場で見世物にしながら殺して経験値を稼ぐ。
そんな楽しいことを考えながら、父である国王陛下に謁見する。同席していたレナードの父親は、息子の訃報にがっくりと肩を落としていた。優しい俺は、レナードが勇敢に戦ったという作り話をして励ましてやった。
でも父は、俺が魔王を倒したという話を信じようとはしなかった。うつろな表情で、旅立ちのときと同じセリフを口にする。
「――魔王は未だ健在である。我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
「陛下、何をおっしゃるのです。この私が、この手で倒したと言っているのですよ? レナードだって、その命を散らしてまで貢献してくれました」
「我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
「――ですから、魔王は倒したのです」
「我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
何を言っても無駄だった。壊れたように同じセリフを繰り返す国王に、周囲の者たちも訝しんでいた。
やっぱりバグってるんだな、この世界は。魔物もいないし、エミリアもメイベルも仲間にならなかったし、父はこのザマだし。
まあでも、父に関しては都合がいい。俺は深々とため息をついて、国王の不気味な様子に動揺する家臣たちへ向けて声を張った。
「父上は精神を病まれた。父に代わって、この私が国王として即位する。異論がある者はいないな?」
謁見の間にどよめきが走る。父はうつろな表情のまま、俺に向けて口を開いた。
「息子はお前だけではない」
「――は?」
「幾度も繰り返した。お前が何をしようが、また、繰り返すだけ。また新たな息子がやってきて――私は――」
意味不明なことをつぶやいて、父は両手で頭を抱えた。
「……連れて行け」
父のそばについていた侍従に命じる。戸惑っていた家臣たちも、明らかに病んでる父はもう使えないと思ったのだろう。粛々と俺に従った。
その後、凱旋パレードを行うと同時に、俺の即位を国民たちに知らしめた。叔父のクロヴィスの後押しもあって、何もかもスムーズにいった。ゲームに登場しないモブの分際で国民からの支持を集めていることは気に入らないが、なかなか役に立つじゃないか。立場をわきまえている奴は嫌いじゃない。俺はクロヴィスを重用してやることにした。
これで俺は名実共にミッドランドの国王だ。クソゲーとはおさらばして、新たな人生を楽しもう。
――ただ、父の言葉が妙に引っかかった。
息子はお前だけではない、と言っていた。
そういえば俺には弟がいたんだった。父と同じく、あいつもぶっ壊れてたけど。いや、あいつに関しては俺がぶっ壊したのか。あれはなかなか面白かったな。もうとっくに死んだんだから関係ないけど。
これからは誰にも邪魔されず、面白いことがたくさんできる。そう思うと笑いが止まらなかった。
倒れたレナードの脇腹を蹴り飛ばして、仰向けにひっくり返す。血だまりが広がった分だけ顔面は蒼白になり、目は虚に見開かれたまま。間違いなく死んだのを確認して、俺はため息をついた。
旅をしている間、ずっと俺のやることに口出しして、本当にうざかった。そこそこ強いし雑用をまかせられるから連れ歩いていたけれど、もういい。
「脇役の分際で生意気なんだよ、クソッ!」
もう一度蹴り飛ばすと、足元が血で汚れた。聖剣も血溜まりの中に落ちている。念のためもう一度拾い上げようとしたが、やっぱり弾かれてしまった。クソが。
――聖剣が俺のものにならない。ということは、この世界には魔王もいないんだ。魔物もいなかったし。完全にバグっている。
「あーあ……もう魔王とか聖剣とか、どうでもいいや。アホらしい。帰ろ」
せっかくゲームを楽しもうと思ったのに、心底無駄な時間を過ごしてしまった。俺はマジックポーションでMPを回復させて、〔テレポート〕を使ってミッドランドの王都に戻った。
「おお、アーサー殿下! 無事のご帰還、何よりでございます」
城に戻ると家臣たちが俺を出迎えた。
魔王は倒した。レナードは魔王との激闘で命を落とした。そう説明してやると家臣たちはどよめいたが、俺の言葉を疑っている様子はなかった。
俺は魔王を倒した勇者として、次代のミッドランド国王に即位する。そうしたらやりたい放題だ。このクソゲーから解放されて好きに生きる。思いっきり贅沢して、馬鹿なやつらに政治を教えてやって。
やろうと思えば戦争だって起こせる。まずはあの村。ノルト王国領にあった、人間と共に暮らしていた魔物たちを捕らえて奴隷にしよう。闘技場で見世物にしながら殺して経験値を稼ぐ。
そんな楽しいことを考えながら、父である国王陛下に謁見する。同席していたレナードの父親は、息子の訃報にがっくりと肩を落としていた。優しい俺は、レナードが勇敢に戦ったという作り話をして励ましてやった。
でも父は、俺が魔王を倒したという話を信じようとはしなかった。うつろな表情で、旅立ちのときと同じセリフを口にする。
「――魔王は未だ健在である。我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
「陛下、何をおっしゃるのです。この私が、この手で倒したと言っているのですよ? レナードだって、その命を散らしてまで貢献してくれました」
「我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
「――ですから、魔王は倒したのです」
「我が息子アーサーよ。魔王が復活したとの予言があった。世界を守る勇者として、か弱い民衆を魔族の手から助けるために、旅立つが良い」
何を言っても無駄だった。壊れたように同じセリフを繰り返す国王に、周囲の者たちも訝しんでいた。
やっぱりバグってるんだな、この世界は。魔物もいないし、エミリアもメイベルも仲間にならなかったし、父はこのザマだし。
まあでも、父に関しては都合がいい。俺は深々とため息をついて、国王の不気味な様子に動揺する家臣たちへ向けて声を張った。
「父上は精神を病まれた。父に代わって、この私が国王として即位する。異論がある者はいないな?」
謁見の間にどよめきが走る。父はうつろな表情のまま、俺に向けて口を開いた。
「息子はお前だけではない」
「――は?」
「幾度も繰り返した。お前が何をしようが、また、繰り返すだけ。また新たな息子がやってきて――私は――」
意味不明なことをつぶやいて、父は両手で頭を抱えた。
「……連れて行け」
父のそばについていた侍従に命じる。戸惑っていた家臣たちも、明らかに病んでる父はもう使えないと思ったのだろう。粛々と俺に従った。
その後、凱旋パレードを行うと同時に、俺の即位を国民たちに知らしめた。叔父のクロヴィスの後押しもあって、何もかもスムーズにいった。ゲームに登場しないモブの分際で国民からの支持を集めていることは気に入らないが、なかなか役に立つじゃないか。立場をわきまえている奴は嫌いじゃない。俺はクロヴィスを重用してやることにした。
これで俺は名実共にミッドランドの国王だ。クソゲーとはおさらばして、新たな人生を楽しもう。
――ただ、父の言葉が妙に引っかかった。
息子はお前だけではない、と言っていた。
そういえば俺には弟がいたんだった。父と同じく、あいつもぶっ壊れてたけど。いや、あいつに関しては俺がぶっ壊したのか。あれはなかなか面白かったな。もうとっくに死んだんだから関係ないけど。
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