ケダモノ王子との婚約を強制された令嬢の身代わりにされましたが、彼に溺愛されて私は幸せです。

ぽんぽこ@3/28新作発売!!

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引き裂かれた初恋

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「非常に申し上げにくいのですが、実は……娘には以前より、想いを寄せている相手がおりまして……」
「なに? 王子の他にか?」

 王はミーアを上から見下ろす。

 驚いたミーアはビクッと身体を大きく跳ねさせ、視線を会場の中にいた同世代ぐらいの男の子に向けた。


「それは婚約者か?」
「え、えぇ。そのようなものです……」

 キャッツレイ侯爵の言う通り、ミーアは幼馴染の令息に恋をしていた。

 相手は伯爵家の三男坊で、明るく愛嬌のある好青年。つい先程まで、ミーアはその彼と楽しく談笑していたところだった。

 背伸びをして頑張ったメイクも、苦手なダンスの練習も、すべては彼の為。

 キャッツレイ侯爵も、娘の頑張りを微笑ましく応援していた。それがまさか、国王によって妨害されるとは。


 彼女らを見て事情を理解した王だったが――ゆっくりと首を横に振った。

 若者の淡い恋に水を差したくはないが、彼にも譲れない事情があるのだ。


「ふむ、なるほどな……だが我が息子、シルヴィニアスが珍しく女に興味を示したのだ。この機会を逃すわけにはいかぬ」

 視線をミーアから横にずらし、今度はシルヴィニアス王子を見た。

 王子はずっと俯きっぱなしで、猫のように柔らかな銀髪が顔を覆っている。表情は窺えないが、耳が真っ赤に染まっていた。どうやら彼は人見知りのようだ。


「貴殿もこの国の貴族なら、血筋を残す重要性を分かっておるだろう。特にシルヴィニアスの場合はな」
「殿下の、ですか……」


 この世界には、と呼ばれる神様がいる。

 普段は動物の姿をしているが、家族の危機ならば姿を変えて助けに来てくれる。そんな家族思いの、優しい神様がこの世界のどこかにいるそうだ。


 大陸の覇者である神聖ウルフェン王国。
 この国の始祖は神である神獣と結ばれ、王となって国をおこしたという伝説がある。

 そして神獣の血は今もなお受け継がれ、王家や貴族となってこの国を治め続けてきた。


「神獣の血を色濃く引くシルヴィニアスは、神聖なる神獣人だ。本人は気弱で、その片鱗は中々見られぬが……」

 神獣の血を持つ人間は膨大な魔力と強靭な力、さらには驚異的な回復力を持つ。そしてその者は身体に神獣特有のとある特徴が現れることから、畏怖を込めて神獣人と呼ばれていた。

 その神獣人は王家にとって……いや、王国にとってかけがえのない存在。その上、最近では神獣人が生まれることも少なくなり、その希少性は高まっている。

 その血を強く残すためにも、国王はシルヴィニアスの嫁探しに必死だった。


「これは王命である。異論があれば、早急にシルヴィニアスの伴侶に相応しい者を用意せよ」

 王はそれだけ告げると、王子を連れて会場から去って行ってしまった。
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