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引き裂かれた初恋
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「非常に申し上げにくいのですが、実は……娘には以前より、想いを寄せている相手がおりまして……」
「なに? 王子の他にか?」
王はミーアを上から見下ろす。
驚いたミーアはビクッと身体を大きく跳ねさせ、視線を会場の中にいた同世代ぐらいの男の子に向けた。
「それは婚約者か?」
「え、えぇ。そのようなものです……」
キャッツレイ侯爵の言う通り、ミーアは幼馴染の令息に恋をしていた。
相手は伯爵家の三男坊で、明るく愛嬌のある好青年。つい先程まで、ミーアはその彼と楽しく談笑していたところだった。
背伸びをして頑張ったメイクも、苦手なダンスの練習も、すべては彼の為。
キャッツレイ侯爵も、娘の頑張りを微笑ましく応援していた。それがまさか、国王によって妨害されるとは。
彼女らを見て事情を理解した王だったが――ゆっくりと首を横に振った。
若者の淡い恋に水を差したくはないが、彼にも譲れない事情があるのだ。
「ふむ、なるほどな……だが我が息子、シルヴィニアスが珍しく女に興味を示したのだ。この機会を逃すわけにはいかぬ」
視線をミーアから横にずらし、今度はシルヴィニアス王子を見た。
王子はずっと俯きっぱなしで、猫のように柔らかな銀髪が顔を覆っている。表情は窺えないが、耳が真っ赤に染まっていた。どうやら彼は人見知りのようだ。
「貴殿もこの国の貴族なら、血筋を残す重要性を分かっておるだろう。特にシルヴィニアスの場合はな」
「殿下の神獣の血、ですか……」
この世界には、神獣と呼ばれる神様がいる。
普段は動物の姿をしているが、家族の危機ならば姿を変えて助けに来てくれる。そんな家族思いの、優しい神様がこの世界のどこかにいるそうだ。
大陸の覇者である神聖ウルフェン王国。
この国の始祖は神である神獣と結ばれ、王となって国を興したという伝説がある。
そして神獣の血は今もなお受け継がれ、王家や貴族となってこの国を治め続けてきた。
「神獣の血を色濃く引くシルヴィニアスは、神聖なる神獣人だ。本人は気弱で、その片鱗は中々見られぬが……」
神獣の血を持つ人間は膨大な魔力と強靭な力、さらには驚異的な回復力を持つ。そしてその者は身体に神獣特有のとある特徴が現れることから、畏怖を込めて神獣人と呼ばれていた。
その神獣人は王家にとって……いや、王国にとってかけがえのない存在。その上、最近では神獣人が生まれることも少なくなり、その希少性は高まっている。
その血を強く残すためにも、国王はシルヴィニアスの嫁探しに必死だった。
「これは王命である。異論があれば、早急にシルヴィニアスの伴侶に相応しい者を用意せよ」
王はそれだけ告げると、王子を連れて会場から去って行ってしまった。
「なに? 王子の他にか?」
王はミーアを上から見下ろす。
驚いたミーアはビクッと身体を大きく跳ねさせ、視線を会場の中にいた同世代ぐらいの男の子に向けた。
「それは婚約者か?」
「え、えぇ。そのようなものです……」
キャッツレイ侯爵の言う通り、ミーアは幼馴染の令息に恋をしていた。
相手は伯爵家の三男坊で、明るく愛嬌のある好青年。つい先程まで、ミーアはその彼と楽しく談笑していたところだった。
背伸びをして頑張ったメイクも、苦手なダンスの練習も、すべては彼の為。
キャッツレイ侯爵も、娘の頑張りを微笑ましく応援していた。それがまさか、国王によって妨害されるとは。
彼女らを見て事情を理解した王だったが――ゆっくりと首を横に振った。
若者の淡い恋に水を差したくはないが、彼にも譲れない事情があるのだ。
「ふむ、なるほどな……だが我が息子、シルヴィニアスが珍しく女に興味を示したのだ。この機会を逃すわけにはいかぬ」
視線をミーアから横にずらし、今度はシルヴィニアス王子を見た。
王子はずっと俯きっぱなしで、猫のように柔らかな銀髪が顔を覆っている。表情は窺えないが、耳が真っ赤に染まっていた。どうやら彼は人見知りのようだ。
「貴殿もこの国の貴族なら、血筋を残す重要性を分かっておるだろう。特にシルヴィニアスの場合はな」
「殿下の神獣の血、ですか……」
この世界には、神獣と呼ばれる神様がいる。
普段は動物の姿をしているが、家族の危機ならば姿を変えて助けに来てくれる。そんな家族思いの、優しい神様がこの世界のどこかにいるそうだ。
大陸の覇者である神聖ウルフェン王国。
この国の始祖は神である神獣と結ばれ、王となって国を興したという伝説がある。
そして神獣の血は今もなお受け継がれ、王家や貴族となってこの国を治め続けてきた。
「神獣の血を色濃く引くシルヴィニアスは、神聖なる神獣人だ。本人は気弱で、その片鱗は中々見られぬが……」
神獣の血を持つ人間は膨大な魔力と強靭な力、さらには驚異的な回復力を持つ。そしてその者は身体に神獣特有のとある特徴が現れることから、畏怖を込めて神獣人と呼ばれていた。
その神獣人は王家にとって……いや、王国にとってかけがえのない存在。その上、最近では神獣人が生まれることも少なくなり、その希少性は高まっている。
その血を強く残すためにも、国王はシルヴィニアスの嫁探しに必死だった。
「これは王命である。異論があれば、早急にシルヴィニアスの伴侶に相応しい者を用意せよ」
王はそれだけ告げると、王子を連れて会場から去って行ってしまった。
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