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捨てる男あれば拾う男あり②
「ど、どうしてローグ君が!?」
突然現れたのは――お母様の元に帰省しているはずの後輩、ローグ君だった。
だけど当の本人は、平然としながらこう告げた。
「貴方がシャーレ・リケットか?」
「えぇ、そうですが……」
突然現れた謎の男に困惑するシャーレ様だったが、彼の言葉によってその態度は一変する。
「ならば、僕は貴方に苦言を呈さねばならないようだ」
「苦言? 私が何をしたというんですか」
シャーレ様は、ムッとした様子で彼を睨みつける。
「僕は貴方が多額の寄付で医療に貢献していることを知っている。多くの人々を救ってきたことも。だが……貴方のやり方には異議がある」
「は? いったい何を言って……」
「貴方はこの女性の尊厳を踏みにじった。それは紳士としてあるまじき行為だ」
チラ、と私を見たローグ君の言葉に、シャーレ様は額に青筋を浮かべた。
「は? いったい何を根拠にそんな……」
突然の話に戸惑いを見せるシャーレ様だったが、すぐに反論を始めた。
「言いがかりは止めてくれ。証拠もないのに、そんなことを言われては困るな」
だがローグ君も負けじと、鋭い視線でシャーレ様を射抜く。
「証拠ならある」
「ほう?」
彼は懐から一枚の紙を取り出し、それを広げてシャーレ様に提示した。
それは私の周囲にいる人物に対する“買収リスト”だった。
研究所の職員から私が住む家の近隣住民、そして通っていた飲食店の店員まで、幅広い人物の名前が羅列されていた。そしてその人たちから得た情報も。中には私の母についての詳細まで書かれている。
つまり私の趣味嗜好や弱みは、すべて把握されていたということだ。
「これを見てもらえば分かるだろう。国の重要な魔法薬師である女性を手に入れるために、金をちらつかせて随分と強引な手を使ったご様子で」
そのメモを見た途端、シャーレ様は言葉を失っていたが……フッと笑ってこう答えた。
「……ふん、何を言うかと思えば。貴族であれば根回しなんて、むしろ常套手段じゃないか。それを証拠などとは片腹痛い」
「貴方の考えは間違っていない。貴族として当然の行いだ。だが人として正しい行いかどうかは別だ。彼女を傷付けていい理由にはならない」
「……では私が彼女を虐げていると、そう言いたいのか? 具体的には? 国の法には何にも触れていないのに?」
「彼女が泣いているのが、何よりの証拠だ」
ローグ君は真剣な眼差しでそう言うと、シャーレ様は呆れたようにこう言った。
「まったく……困ったものだな。いくら貴方が相手でも、そこまで言われてただ黙っているわけにはいきませんよ。私にも貴族としてのプライドがある」
どうしよう、このままじゃローグ君が危ない。ここまで何もできなかった私も、ここにきてようやく声を上げた。
「ローグ君やめて! わ、私は大丈夫だから……」
「大丈夫、ここは僕に任せて」
「どうして!? なんでそこまでして私を守ろうとするの!?」
そんな私の問いかけに、ローグ君は少し照れくさそうにこう言った。
「言ったはずでしょ? 必ず恩は返す、と。……いや、そうじゃないな」
そして彼は私の手を取りながらこう告げた。
「僕は貴女が欲しいんです」
「……?」
突然の言葉に私は困惑する。いったい何を言っているの……? “欲しい”ってなにを?
突然現れたのは――お母様の元に帰省しているはずの後輩、ローグ君だった。
だけど当の本人は、平然としながらこう告げた。
「貴方がシャーレ・リケットか?」
「えぇ、そうですが……」
突然現れた謎の男に困惑するシャーレ様だったが、彼の言葉によってその態度は一変する。
「ならば、僕は貴方に苦言を呈さねばならないようだ」
「苦言? 私が何をしたというんですか」
シャーレ様は、ムッとした様子で彼を睨みつける。
「僕は貴方が多額の寄付で医療に貢献していることを知っている。多くの人々を救ってきたことも。だが……貴方のやり方には異議がある」
「は? いったい何を言って……」
「貴方はこの女性の尊厳を踏みにじった。それは紳士としてあるまじき行為だ」
チラ、と私を見たローグ君の言葉に、シャーレ様は額に青筋を浮かべた。
「は? いったい何を根拠にそんな……」
突然の話に戸惑いを見せるシャーレ様だったが、すぐに反論を始めた。
「言いがかりは止めてくれ。証拠もないのに、そんなことを言われては困るな」
だがローグ君も負けじと、鋭い視線でシャーレ様を射抜く。
「証拠ならある」
「ほう?」
彼は懐から一枚の紙を取り出し、それを広げてシャーレ様に提示した。
それは私の周囲にいる人物に対する“買収リスト”だった。
研究所の職員から私が住む家の近隣住民、そして通っていた飲食店の店員まで、幅広い人物の名前が羅列されていた。そしてその人たちから得た情報も。中には私の母についての詳細まで書かれている。
つまり私の趣味嗜好や弱みは、すべて把握されていたということだ。
「これを見てもらえば分かるだろう。国の重要な魔法薬師である女性を手に入れるために、金をちらつかせて随分と強引な手を使ったご様子で」
そのメモを見た途端、シャーレ様は言葉を失っていたが……フッと笑ってこう答えた。
「……ふん、何を言うかと思えば。貴族であれば根回しなんて、むしろ常套手段じゃないか。それを証拠などとは片腹痛い」
「貴方の考えは間違っていない。貴族として当然の行いだ。だが人として正しい行いかどうかは別だ。彼女を傷付けていい理由にはならない」
「……では私が彼女を虐げていると、そう言いたいのか? 具体的には? 国の法には何にも触れていないのに?」
「彼女が泣いているのが、何よりの証拠だ」
ローグ君は真剣な眼差しでそう言うと、シャーレ様は呆れたようにこう言った。
「まったく……困ったものだな。いくら貴方が相手でも、そこまで言われてただ黙っているわけにはいきませんよ。私にも貴族としてのプライドがある」
どうしよう、このままじゃローグ君が危ない。ここまで何もできなかった私も、ここにきてようやく声を上げた。
「ローグ君やめて! わ、私は大丈夫だから……」
「大丈夫、ここは僕に任せて」
「どうして!? なんでそこまでして私を守ろうとするの!?」
そんな私の問いかけに、ローグ君は少し照れくさそうにこう言った。
「言ったはずでしょ? 必ず恩は返す、と。……いや、そうじゃないな」
そして彼は私の手を取りながらこう告げた。
「僕は貴女が欲しいんです」
「……?」
突然の言葉に私は困惑する。いったい何を言っているの……? “欲しい”ってなにを?
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