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第2章 最初のお供は犬耳のアイツ
2-3 鬼と魔法と犬耳娘
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むかーし、むかーし。
あるところに、童貞桃太郎と悪役犬令嬢がおりました。
変態下着悪役負け犬令嬢が何も考えずに放った炎上魔法に引き寄せられ、山の中に潜んでいたケモノや鬼人たちがやってきたようです。
「な、なんだか誰かに凄く馬鹿にされている気がするんだけど……」
「気にするな。今のこの状況を見たヤツなら、例え神だって笑ってくると思うぜ」
狼と鬼人たちは雄叫びを上げながら、目の前にあるルナの放った炎に向かってきている。
その速さが尋常じゃないと思ったが、どうやら鬼人が狼に騎乗しているようだ。
森の中なので真っ直ぐは走れないようだが、あのスピードならここに来るのも時間の問題だ。
「こいつ、他のケモノを使役できるのかよ。クソ、数が多いのは厄介だな。それにしても、なんでこんなところに鬼どもが来たんだ!?」
未だ消えることも無く緑色に燃え盛る炎を指さしながら、原因であるルナにその理由を問いただす。
この火に近付いても全く熱くはない不思議な炎。
だが触れたら最後、炭になるまで消えないっていうんだから恐ろしい。
「鬼が来る理由? あー、もしかしてアレかなぁ? でも……うぅ~ん??」
「ん? なんだよ、歯切れの悪い言い方しやがって」
コイツがすぐ何かをやらかすのは、出逢ってからこの1日でよく分かった。
だからもう大抵のことでは驚かないと思うが。
「たぶんなんだけどね? 私の国、っていうか一族にかかわることなんだけど……」
頭につけた犬耳をへにょりとさせ、申し訳なさそうにゴニョゴニョと喋り始めるルナ。
どうでもいいが、そのロリぷにボディで上目遣いをするはやめろ。
背が俺の胸辺りまでしかないような美少女が、そんなご主人様に甘える子犬みたいな仕草なんてしたら……俺みたいな童貞は昇天する。
「あのね? もともと禁忌魔法っていうのは、鬼神の別名でもある邪神たちが使っていた魔術が元になっているの。そしてその魔術は眷属たちにも引き継がれているんだけど……」
「おい、まさか。その眷属ってもしかして……」
「そう。その眷属の血を引くと言われているのが私たち、化身族なの。そして化身族が編み出したのが、今私が使っている魔法というわけなのよ……」
あぁ、それで俺が育ったこの国では魔法が無かったのか。
じゃあ昨晩コイツが山を吹き飛ばした魔法なんかも、化身族が住むフォークロア王国の秘技ってことなんだろうな。
「ルナの魔法と鬼神が関係あるのは分かったけどよ。鬼が引き寄せられる理由にはなってねーよな?」
「えーっと、それはね? 私も絶対にそうだっていう確証が無いんだけど、鬼人は鬼神が魔術を使って生み出したって言われているの。だからあいつらの魂は魔法の根源である、魔力と似ているの」
「んん? ってことは化身族が使う魔法は……」
「そう。魔力は鬼人にとっての力の源であり、極上の餌でもあるってワケ」
……なるほどな、これで合点がいったわ。
もうすでに目の前にまで迫ってきているあの鬼人共は、この無限に燃え続ける極上の魔力を求めてやってきた、というわけか。
「ごめんね、テイロー。私が魔法なんて使ったせいで……こんな力、他の人から見たら穢らわしいよね。呼び寄せちゃったのは私のせいだし、一人で頑張って鬼たち倒すから……」
「ああん? 急に何言ってんだお前は?」
「だって……だってっ!! 鬼神はテイローを育ててくれた勇者様たちの仇なんでしょっ!? それと同じ力を使う私なんて……」
なんだよ。おいおいおい。
そんなことでか? そんなことで、この俺様がルナのことを拒絶するとでも思ってるのか――!?
「俺様をみくびってんじゃねぇよ、ルナ。お前のその魔法はあのクソ共を蹴散らす、そりゃすげぇ力なんだろ?」
昨日の爆散魔法然り、この炎上魔法然り。
物理特化な俺にとっちゃ、それは喉から手が出るほど羨ましい力だ。
「その禁忌の力だって、この世のゴミから国民を守るために、御先祖サマが苦労して編み出したんだろ? むしろ他の奴には出来ないスゲェことなんだろ!? だったら、お前にはその血が流れてるって胸張って誇れよ!」
「てっ、ていろぉ……!! グスッ……」
敵の魔術を奪って自分の糧にするなんて、そんな簡単にできるわきゃねーだろ。
俺だってここまで強くなるのに、この山ン中で血反吐吐いてまでジジイに扱かれたんだ。
ルナの一族だって未知の技を会得するためには並大抵の努力をしてないだろう。少なくない犠牲も絶対にあったはずだ。
なによりルナが居てくれれば、鬼神をブチ殺すのにこんなに心強いことは無い。
あの妖狐の尻尾と呼ばれた英雄たちが負けたんだ。
俺一人でも楽勝……とは、正直言いがたい。
「俺の仇討ちには他の誰でもない……ルナ、お前が必要なんだ。だから是非とも俺にその力を貸してくれよ。……な?」
「……グスッ。本当についていっていいの? だって私……災厄の魔女、なんだよ?」
「はっ! 災厄? 上等じゃねーか。その名の通り、鬼どもに災厄を届けてやろうぜ。ほら、前を見てみろよ――さっそく欲しがりな鬼さんが到着したみたいだぜ?」
『ギャウウゥウン!!』
俺はルナに言葉を掛けながら、先行して飛びかかってきた狼に刀を一閃。
ナマクラな刀だと骨を断ち切る感触があるのだが、ジジイの愛刀は何の抵抗も無く狼の胴体を前後に真っ二つにする。
哀れな犬っころは断末魔をひと鳴きして、その生命の炎を散らしていった。
「よぉ、おはようさん。そして逝ってらっしゃい!!」
『ギャウン!!』『ギャンッ!』
「おうおう、朝から威勢がいいなワンコロどもォ! ククク、もっと俺様と遊ぼうぜェ?」
『ギャウウゥ!?』
肉食獣の持つ鋭い歯をむき出しにして向かってくる狼に対し、こちらも獰猛な笑みで挑発してやる。
既にコイツらには最初のような威勢はない。その代わりに勝っている数を利用して俺たちの周りを取り囲み、唸り声を上げて警戒するようにになった。
いくら鬼に使役されているとはいえ次々と仲間の数を減らされては、さすがに命を投げ捨てるような無茶はしたくないようだ。
「んんん~、どうしたァ? 手下ばっか様子見で戦わせていないで、お前らもさっさと来いよ。ははは、それとも俺様にビビっちまったのか?」
刀に付いた血を振り払い、木の陰に隠れている鬼人共に切っ先を向けて問いかける。
言葉が通じるかは分からないが、馬鹿にしていることぐらいは分かるだろ。
『グギャ! ゲギャギャ……』
「チッ、ケモノと違って頭の回るヤツは面倒臭ェな。さっさと来いっつーの……あん? ルナは下がってろ。危ねぇぞ?」
さすがに前に出られたままじゃ俺も戦いにくい。
どこかに避難してもらうか、大人しくしていてもらわねぇと……。
「――私はもう大丈夫。それに、私は貴方にお姫様のように守ってもらうためについていくんじゃないもの。隣りで共に戦う仲間なんだってこと、今から証明して見せるんだから!! ……だから、テイロー。私の覚悟――見ていてくれる?」
涙目だったルナはすっかり自信たっぷりの表情に生まれ変わったようだ。
俺の隣に進み出ると、短杖を手に詠唱を始めた。
魔法と鬼神たちとの関連性を知った桃太郎。
邪神の系譜をもつ血族を呪っていたルナ。
しかし彼女は桃太郎の鼓舞によって、己の力の真の価値を理解した。
奮い立ったルナは勇気と誇りを取り戻し、鬼人にその力を魅せつける――!!
めでたし、めでたし??
あるところに、童貞桃太郎と悪役犬令嬢がおりました。
変態下着悪役負け犬令嬢が何も考えずに放った炎上魔法に引き寄せられ、山の中に潜んでいたケモノや鬼人たちがやってきたようです。
「な、なんだか誰かに凄く馬鹿にされている気がするんだけど……」
「気にするな。今のこの状況を見たヤツなら、例え神だって笑ってくると思うぜ」
狼と鬼人たちは雄叫びを上げながら、目の前にあるルナの放った炎に向かってきている。
その速さが尋常じゃないと思ったが、どうやら鬼人が狼に騎乗しているようだ。
森の中なので真っ直ぐは走れないようだが、あのスピードならここに来るのも時間の問題だ。
「こいつ、他のケモノを使役できるのかよ。クソ、数が多いのは厄介だな。それにしても、なんでこんなところに鬼どもが来たんだ!?」
未だ消えることも無く緑色に燃え盛る炎を指さしながら、原因であるルナにその理由を問いただす。
この火に近付いても全く熱くはない不思議な炎。
だが触れたら最後、炭になるまで消えないっていうんだから恐ろしい。
「鬼が来る理由? あー、もしかしてアレかなぁ? でも……うぅ~ん??」
「ん? なんだよ、歯切れの悪い言い方しやがって」
コイツがすぐ何かをやらかすのは、出逢ってからこの1日でよく分かった。
だからもう大抵のことでは驚かないと思うが。
「たぶんなんだけどね? 私の国、っていうか一族にかかわることなんだけど……」
頭につけた犬耳をへにょりとさせ、申し訳なさそうにゴニョゴニョと喋り始めるルナ。
どうでもいいが、そのロリぷにボディで上目遣いをするはやめろ。
背が俺の胸辺りまでしかないような美少女が、そんなご主人様に甘える子犬みたいな仕草なんてしたら……俺みたいな童貞は昇天する。
「あのね? もともと禁忌魔法っていうのは、鬼神の別名でもある邪神たちが使っていた魔術が元になっているの。そしてその魔術は眷属たちにも引き継がれているんだけど……」
「おい、まさか。その眷属ってもしかして……」
「そう。その眷属の血を引くと言われているのが私たち、化身族なの。そして化身族が編み出したのが、今私が使っている魔法というわけなのよ……」
あぁ、それで俺が育ったこの国では魔法が無かったのか。
じゃあ昨晩コイツが山を吹き飛ばした魔法なんかも、化身族が住むフォークロア王国の秘技ってことなんだろうな。
「ルナの魔法と鬼神が関係あるのは分かったけどよ。鬼が引き寄せられる理由にはなってねーよな?」
「えーっと、それはね? 私も絶対にそうだっていう確証が無いんだけど、鬼人は鬼神が魔術を使って生み出したって言われているの。だからあいつらの魂は魔法の根源である、魔力と似ているの」
「んん? ってことは化身族が使う魔法は……」
「そう。魔力は鬼人にとっての力の源であり、極上の餌でもあるってワケ」
……なるほどな、これで合点がいったわ。
もうすでに目の前にまで迫ってきているあの鬼人共は、この無限に燃え続ける極上の魔力を求めてやってきた、というわけか。
「ごめんね、テイロー。私が魔法なんて使ったせいで……こんな力、他の人から見たら穢らわしいよね。呼び寄せちゃったのは私のせいだし、一人で頑張って鬼たち倒すから……」
「ああん? 急に何言ってんだお前は?」
「だって……だってっ!! 鬼神はテイローを育ててくれた勇者様たちの仇なんでしょっ!? それと同じ力を使う私なんて……」
なんだよ。おいおいおい。
そんなことでか? そんなことで、この俺様がルナのことを拒絶するとでも思ってるのか――!?
「俺様をみくびってんじゃねぇよ、ルナ。お前のその魔法はあのクソ共を蹴散らす、そりゃすげぇ力なんだろ?」
昨日の爆散魔法然り、この炎上魔法然り。
物理特化な俺にとっちゃ、それは喉から手が出るほど羨ましい力だ。
「その禁忌の力だって、この世のゴミから国民を守るために、御先祖サマが苦労して編み出したんだろ? むしろ他の奴には出来ないスゲェことなんだろ!? だったら、お前にはその血が流れてるって胸張って誇れよ!」
「てっ、ていろぉ……!! グスッ……」
敵の魔術を奪って自分の糧にするなんて、そんな簡単にできるわきゃねーだろ。
俺だってここまで強くなるのに、この山ン中で血反吐吐いてまでジジイに扱かれたんだ。
ルナの一族だって未知の技を会得するためには並大抵の努力をしてないだろう。少なくない犠牲も絶対にあったはずだ。
なによりルナが居てくれれば、鬼神をブチ殺すのにこんなに心強いことは無い。
あの妖狐の尻尾と呼ばれた英雄たちが負けたんだ。
俺一人でも楽勝……とは、正直言いがたい。
「俺の仇討ちには他の誰でもない……ルナ、お前が必要なんだ。だから是非とも俺にその力を貸してくれよ。……な?」
「……グスッ。本当についていっていいの? だって私……災厄の魔女、なんだよ?」
「はっ! 災厄? 上等じゃねーか。その名の通り、鬼どもに災厄を届けてやろうぜ。ほら、前を見てみろよ――さっそく欲しがりな鬼さんが到着したみたいだぜ?」
『ギャウウゥウン!!』
俺はルナに言葉を掛けながら、先行して飛びかかってきた狼に刀を一閃。
ナマクラな刀だと骨を断ち切る感触があるのだが、ジジイの愛刀は何の抵抗も無く狼の胴体を前後に真っ二つにする。
哀れな犬っころは断末魔をひと鳴きして、その生命の炎を散らしていった。
「よぉ、おはようさん。そして逝ってらっしゃい!!」
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