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4 神様のゲーム(する方)
しおりを挟む「それではナユタ様。生命体のクリクリも成功したことですし、次の段階へと進みましょう」
インテリ風美人メイドとなったアイは、クリエイトの元になった赤縁眼鏡をクイッとさせると創造主である俺に話を進ませようとしてくる。
――だがちょっとだけ待って欲しい。一見クールビューティーにも見える彼女だが、思いの外スキンシップは激しいし、使ってくるワードが変なのだ。
声質こそさっきまでスマホのアプリから流れていた音声ガイドの知性的なボイスそのモノなのに、現在彼女から発せられる言葉の選び方には妙なバグにやられてしまっているような違和感が……っていうかクリクリってなんだよ、クリクリって。ちょっと卑猥だぞ。
「なにを黙りこくっているのです? 私の性格の事でしたら、この眼鏡に宿った思念が影響しておりますの。つまり、私の趣味嗜好はナユタ様の長年染み付いた変態的な映像や偶像が……どうしました? そんな固い地面で四つん這いなんてされていたら、服が汚れてしまいますよ?」
岩肌が見えている大地で、頭を抱えて蹲る俺。
……つまりアレか? 日々あんな動画や画像、好きなタイプの女性やらなんやらを見ていた時の思考がその眼鏡に思念として宿っていた……だと!?
もしや俺がマウスのホイールボタンを弄りながら「おらおらッッこの私のクリクリ捌きでお前の大事なサイトをスクロールしてやろうか~」とか言って遊んでいたのもバレてるというのか!?
おそるおそるアイを見上げてみると、彼女は慈愛に満ちた笑顔でニッコリしている。
「鬱だ……もう死にたい……」
「鬱なら医師である御自身で診察してみては? まったく、何をくだらない冗談を言っているのですか、ナユタ様がお亡くなりになったら、この世界は文字通り死の惑星となるのですよ。そんなことよりも早く、次のステップに進みませんこと?」
そんなことって……唯一のパートナー(しかも美人)に自分の黒歴史を殆ど知られているって、普通に考えたら相当な羞恥プレイなんだぞ!?
……とはいえ。
このまま地面でゴロゴロ転がっていても仕方ないか。一か月以内にこの星の環境を整えないと、どっちみち俺は死んでしまうんだ。
考えてみたら、俺はこの世界の創造神なんだろ?
むしろ神ならあんな変態行為してたった許されるハズ。
いや、むしろ推奨される世界にしよう!
なんだ、こんな些末なことで悩むことなんて無いじゃないか!!
「よっっしゃ!! 俺はエロが許容される世界を創るぞ!! 俺は俺の欲望の為にこの新世界の神になってやる!!」
俺は勢いよく立ち上がり、太陽に向かって拳を突き上げた。
その顔を見れば先程のことも忘れ、この世界の恒星と同じようにスッキリ晴々としていたことが窺えただろう。
すっかりやる気を取り戻した俺は、新たなる決意を胸にアイに話しかける。
「アイ! これから俺はどうしたらいい? まずは天地創造か? それともメルヘンに花でも創るか? そ、それとも俺とお前で新たな生命体を……」
ぐふふ、と気持ち悪い顔をして妄想を膨らませる。
こんな怪しい人間が道端に居たら職務質問されていただろう。
だがここには法も警察も居ない!
そんな残念な主人に対して、アイは微塵も笑顔を崩さずに答えた。
「ゲームをしましょう!!」
「……はい?」
何かの聞き間違いかな?
俺の耳にはゲームをするって聞こえた気がしたんだが……?
「スマホゲームを致しましょう!!」
あれぇ? 世界を創る話だったよね??
←↑→↓○×△□↑↑↓↓
「なぁ……この星の環境を整えるのに、ゲームでスコアを稼がなきゃいけないってどういうことなの? 傍目から見たら、俺がただスマホで遊んでいるだけなんだけど……」
俺は今、自分のスマホにいつの間にか入っていたパズルゲームをしている。
その名も『にゃんにゃんパラダイス』だ。
可愛くデフォルメされた猫が画面上の木から下にある鍋に落ちてくる。猫を上手く誘導して鍋にピッタリ敷き詰められるとクリアというシンプルなゲームなのだが……。
「しかもなんでアイは猫耳メイドさんになっているの? 俺の持ち物には無かった筈だよね?? 俺がケモミミフェチだって知っててそういう要素増やしてるよね??」
『にゃーん』と言う可愛らしい猫撫で声と共に再び鍋が一杯になった。同時に出てきた『Clear!』という文字と、画面内でぴょんぴょん飛び跳ねているアイと同じ格好の猫メイド。
すごく可愛いけど、何となく腹が立たしい。
「にゃにゃ? スタートボーナスで、もうゼウスポイントが三〇〇〇ポイントも貯まりましたにゃん。これならご主人様がたくさん溜めたポイントで色々できるにゃん。これ以上、溜め過ぎても良くないにゃん?」
「俺は突っ込まんぞ……もう今日のツッコミは閉店ガラガラだ。それ以上の俺のキャパシティを超えたボケは、全部スルーするからな……!!」
地面に直接あぐらをかいて座っている俺の隣りで、四つん這いの状態で猫のモノマネをするメイドのアイ。胸元からはプルンプルンなお胸様がこぼれ落ちそうになっている。
紳士としてソレをジロジロと見てはいけないのは理解しているが、どうしても気になってしまって仕方がない。
いや、チラッと見るだけならバレないか……!?
『ギニャーッ!!』
「あらあら。余所見をするからゲームオーバーになってしまいましたよ? ふふふ、ナユタ様はいったい何処を見ていたんでしょうね~?」
よしよしと俺の頭を撫でながら、ニヤニヤと意地の悪い顔でこちらを見てくるセクシーメイド。
女性と間違えられる童顔のせいで勘違いをされがちだが、これでも中身は女性が大好きな健康男子だ。なんだかアイからはいい匂いもするし、イケナイ扉を開いてしまいそうになる。
「おい、撫でるのはもういいって。それより、この先どうすればいいのかを教えてくれよ。このゼウスポイント? っていうのを何かに使うんだろ?」
若干頬を染め、恥ずかしそうに質問する俺。
それを見て更に笑みを深めるアイ。
「そうですね。もっと撫でていたいところですが、そろそろお昼になってしまいますし。ナユタ様を愛でるのはこの辺にしておきましょうか」
そう言って猫耳カチューシャを外すアイ。
ふとスマホに表示された時間を見ると、午前十一時半を示している。
「なぁ、アイ。ここは地球とは違う星だし、時間はどうなっているんだ?」
太陽みたいな恒星はあるし、時間的にも合っていそうなんだが。
そうなると人工衛星も電波塔も無いのに、どうやって受信しているんだろう、と思ったが……アイ曰く「神の特権です」だそうだ。
まぁ便利だし、詳しいことは聞かないことにする。
「そういえば仕事が夜遅くまでかかったせいで、夕飯も食べてなかったんだよな……ていうか、俺はメシなんて持ってなんかいないぞ? いったいどうすればいいんだ?」
帰宅時に持っていたカバンの中には、好きだった柿ピーとアーモンドチョコレートしかない。あとは職場の看護師から貰った、お土産のホルモンキャラメル。
何故かホルモンキャラメルが休憩室に大量に置いてあったのだ。多分イロモノ過ぎて誰も貰っていかなかったんだろう。
俺は何も考えずに貰ってきたが、腹が減った今でさえ……ちょっとこれは食べたくない。
ちょっとだけ不安げな顔をしたナユタを見て、アイは出番が来たとばかりにフフフンと胸を張ってこう言った。
「安心してください、ナユタ様。先ほどのポイントを交換すれば様々なアイテムと交換が出来るのですよ。さぁ、私自慢の豊富なメニューから、豪華なランチを選んでくださいまし!!」
◇現在のデータ◇
日付:一日目
世界レベル:ゼロ
環境:デフォルトモード(二六℃、晴れ、空気正常)【残り三〇日】
人:アイ
所持物:スマホ、スーツ、買い物袋、鞄
ゼウスポイント:三〇〇〇pt
To_be_continued....
応援ありがとうございます!
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