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5 神様のお昼ご飯(デリバリー編)

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「お昼ご飯のメニューは超ハイスペックメイドであるわたくしにお任せくださいませ!」


 Fカップはありそうな豊満なバストを"ふるるん"と震わせながら、胸を張ってそう告げる美人メイドのアイ。眼鏡の奥のブルーの瞳がキラリと光る。

 まぁ彼女はスマートフォンを元にした知能を持っているらしいし、当然それなりの性能は持っているのだろう。だがそれがいったい、お昼のメニューとどう繋がるんだ??


「先ほどのスマホゲームで貯めたポイントがありますわよね? それを使うのです。さぁ、アプリを開いてメニューをお選びくださいな!」


 ――うぅん? 相変わらず説明不足で良く分からないが、ここはもう彼女に言われた通りにしてみよう。


 アイの指示に従って、アプリにあった『オーダー』の項目から食糧の一覧があるページに移動していく。

 そこにはカテゴリー別に大量の料理名が並んでいた。日本料理、イタリアンにフレンチ、中華。エスニック料理なども豊富にあるようだ。

 その中でパッと目についた"肉厚ステーキ"の詳細を試しにタッチしてみることにした。すると、数センチはありそうなジューシーな牛ステーキのムービーが流れ始めた。


 ……写真じゃなくて映像の意味があるのか? あ、誰かの手が出てきた。ナイフを取り、上品に切り分けた肉をフォークで可愛らしい口元へ――


「ってこれアイじゃねーか!! なんでお前がこんなに豪勢なステーキ喰ってる映像を見せられなきゃいけねーんだよ。しかもメッチャ美味そうに食べやがって!」


 画面の中のアイは頬を手で押さえながら至福の声をあげている。
 美人がお肉を頬張る映像も中々モノがあるが、空腹で短気になっている俺には怒りしか湧いてこない。


「なんですか、もう。そんなプリプリしていたってお腹は満たされませんよ?? それより早くメニューを決めちゃいましょう。ホラホラ、これなんかどうです??」


 まるで誤魔化すように俺の手を取って、いろんなメニューを次々と表示させていくアイ。


「いや、美味しそうなのは認めるよ。じゃあこの茹で卵の入ったハンバーガー。これがいいけど、どうするの?」


 日本でも期間限定で販売しているような、卵とベーコンが挟まったバーガーを選んでみる。
 ええっと、うさぎバーガーって言ったっけかな?


「あっ、イイですね。わたくしもコレ、好きですよ~! 値段的にもちょうどいいです」
「値段??」
「言い忘れておりましたが、一ゼウスポイント=一円ほどのレートとなっておりまして、アプリを通してそのポイントに応じたアイテムを召喚できるシステムとなっておりますの」


 スゲーな、異次元デリバリーかよ。某猫型ロボットも真っ青だな。……元から青だけど。


「現在丁度三〇〇〇ptございますので、このバーガーをオーダーするには充分足りるかと思いますわ」


 "うさぎバーガー"をタッチすると、映像とは別にサイドメニューまで出てくる。もはやなんでもアリだな、このアプリは。


「ってちょっと待て。さすがの俺でも三つは食えねーぞ?? しかもポテトにパイにコーラまで。おいおい、オモチャは要らないだろ!? ちょっ、勝手に増やすな!!」


 彼女は目にも留まらぬ速さの画面捌きで、次々と追加で注文を入れていく。


 あれもこれもと注文していくうちに、気付けば所持ポイントがピッタリ無くなってしまった。

 呆気に取られている俺の隣で、仕事をやり切ったという顔をしながらおでこについた汗を腕で「ふぃー」と拭う仕草をするアイ。
 既に画面には『オーダーを承認しました』の文字が。


「おい! 頑張って貯めたポイントが無くなったじゃないか!! しかもほとんどがアイが注文した食べ物じゃん!」


 苦労した時間を無駄にされた怒りをアイの両肩をグワングワンと揺らすことで抗議をするが、支払ってしまったポイントはもう返ってこない。


「ぐえっ、ぐえぇぇえ~! や、やめてくだしゃっ。そんなに激しくしないでぇ~。わ、わたくし壊れてしまままま……あら、もう来たみたいですわよ?」


 目をグルグルさせながらまた知らなくていい業界のワードを発していた彼女が、唐突に空を指差した。
 その先を見てみても、空にはただの青い景色が広がっているだけだが……?


「……んんっ? 鳥……じゃないな。なんだ、アレは? って、落ちてくる!!」


 ――――シュルルルルル……ズトンッ。


 白い布製のパラーシュートがついた段ボールが、雲すら無い上空から二人が立っている荒野へとピンポイントに降ってきた。

 ……タイミング的にいえばこの箱の中身は恐らく、今オーダーしたばかりの食糧だろう。だが誰が一体どうやって??


 首をかしげながらもパラーシュートを段ボールから外し、開封してみる。


「ん、まだ温かいな。あんな高度だったら冷めるし中身もグチャグチャになるだろうに。いったいどんな技術使ってるんだよ」
「もぉ、細かい事はいいじゃないですか! あんまりグチグチ悩んでいると近い将来ハゲちゃいますよ??」
「う、うるさい!! 俺の家系はみんなフサフサだよ! 第一俺は神な「あ、ホラ。美味しそうですよ~」聞けよ!!」


 既に紙の包装を開いて食べ始めるアイ。
 ハムスターのように小さな口で可愛くムシャムシャと……ではなく、そんなに開くの!?というほどの大口でバクバクと食べている。すごく漢らしい。

 右手にバーガー、左手にポテトやチキンといったものを掴み、ひたすらに口へと運び咀嚼していく。いったいそれらはその細い身体のどこに入っていくのだろう。


「むぐむぐ……ムシャァ! もぐ? ナユタ様は何をしているのです? 早くしないと全てわたくしだけで食べ切ってしまいますよ? まぁ、わたくしはそれでも一向に構いませんが」 


 そう言いながら、この食いしん坊は目の前のジャンクフードを食べる手を止める気配がない。


「そもそも俺はポテトがサクサクのうちに食べ終えてからバーガーを食べる主義なんだよ。美味しいものは美味しく食べられる順序で食べるに限るだろ?アイみたいにアレコレ手をつけ「ずぞぞぞぞぞっ!!」コーラを音を立てて飲むなぁぁあ!!」




 ←↑→↓○×△□↑↑↓↓


「ふぃ~っ、苦しい!! あぁ~、なんでこうもジャンクな食べ物って犯罪的に美味しいんですかね!? 太るって分かってても定期的に食べたくなるから困るんですよねぇ~」


 メイド服のエプロンがタヌキのようにポンポコと膨らんでいるアイ。彼女は地面に敷いたパラシュートの上で苦しそうに転がっている。

 それをやや冷めた目で眺めながら、俺は紙ボトルに入ったアイスコーヒーをチビチビ飲んでいた。


「まったく。結局俺はバーガーを一つしか食べられなかったじゃないか。というより、一人であれだけ食べればそりゃあお腹が苦しくもなるよ」  


 「だって~」と言いながら、ゴロゴロと地面を転がるぐぅたらメイド。
 着ているのは長めのスカートなはずなのに、あまりにも無防備に動きすぎて見ちゃいけない中身が見えてしまいそうだ。

 ……黒レースか。分かってるじゃないか。


「あぁ~、ナユタ様! またエッチな目でわたくしを見てましたねぇ? もぉ、いくらこの世界にはわたくしと貴方様で二人きりだからってまだお昼を過ぎたばかりですよ??」

 アイはジト目をしながら俺を弄りにかかる。


「そ、そんなことないって。何も見てないし、何も思ってないから!!」
「ふぅん? まぁ、わたくしの下着ぐらいならいくらでも見せてあげますけど」
「えっ、マジで!?」


 目を見開いて思わず叫んでしまった。


「……嘘です。さすがにわたくしにも恥じらいはありますので」
「……チッ、期待させやがって。ていうか、恥じらいのある乙女がジャンクフード爆食いしたり、野晒しの床でゴロゴロしたりするか?」
「さっ、食事は済みましたね。腹もくちくなった事ですし、そろそろ次に参りましょうか」


 こいつ……自分に不利な事を誤魔化したな!?


「パンツを見せることは出来ませんが、ちょっと服を脱いでわたくしと一緒に運動……しませんか?」 





 ◇現在のデータ◇
 日付:一日目
 世界レベル:Ⅰ
 環境:デフォルトモード(二六℃、晴れ、空気正常)【残り三〇日】
 人:アイ
 所持物:スマホ、スーツ、買い物袋、鞄
 ゼウスポイント:〇pt


 To_be_continued....

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