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処女の血

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「ったく、ヴラドは本当に弱っちいな」

 しばらく教育が続いた後。

 汗だくになったひたいを腕でぬぐいながら、横で控えていたヴラド皇子にそう言った。

 さすがの私も痛みが積み重なり、ボーっとした頭で二人を眺めていた。


「だって……」

 私が拷問されている光景を間近で見せつけられていた彼は、フラフラとして今にも倒れてしまいそうだ。


「それにヴラドは“血の味見”すら済ませていないんだろ? だから弱いまんまなんだよ。童貞のままじゃ、一人前のヴァンパイアにはなれないぜ!?」

 彼らヴァンパイアは、私のような人間や他種族の血を吸うことで力を増してきた一族だ。

 他国を侵略し、その地に住む民たちを生け捕りにし、家畜として育てている。

 私も物心がつく前にここへ連れて来られ、成人となる食べ頃になるまで飼われていた。


 最初は拷問の度に泣き喚いていた私も、抵抗することに疲れ切っていた。

 さっさとこの命が終わることさえ望んでいる。


「十六歳になった処女の生き血をすすれば、我らは強大な力を得られる……ククク、お前もコイツを貪るのが楽しみだろう?」

 ドラク皇子は私の髪を鷲掴わしづかみにして持ち上げた。

 引き上げられた私の顔をヴラド皇子に見せ付けながら、ニヤニヤと私達の反応を楽しんでいる。


(私が成人になるのはおそらく五年後。その時に私は用済みとなる。死ねば解放される……かな)

 今は大人しいヴラド皇子も、その頃にはドラク皇子と同じように私を痛めつけるようになるだろう。

 ヴァンパイアは血を飲めば飲むほど、狂暴な性格になる。彼らはそういう生き物なのだ。


「僕は血なんて飲みたくないよ……」
「ん? せっかく父上がお前のために用意した家畜なのに。要らないのなら、俺がコイツを貰っちまうぞ? アハハハ!!」
「兄上が、この子を……?」

 私は別にそれでもいい。

 さっさとこの命を終わらせてくれるのなら、今やればいい。


 ――絶望に染まった私の瞳が怖かったのだろう。

 ヴラド皇子は私の顔を見てヒッと小さな悲鳴を上げた。


「クッ、クハハハハッ!!!!」

 血の匂いでむせ返る牢屋は、ドラク皇子の笑い声だけが響いていた。


 
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