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本編
2.教会で暮らす
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祈りの建物とは別の住居棟の一人部屋に通された。
ジルさんは「魔法で何とかなる」と言っていたが私が考えていた魔法と違った。
ちなみに私が考えていたのは魔法で植物の成長を促進して…とかその程度である。
「この板のこの四角の領域に欲しい商品のキーワードを入力して
購入ボタンを押せば…… ラナンさん?」
前世のタブレットとショッピングサイトじゃ。
言い忘れていたが私は桜の綺麗な国の社畜の転生体である。
こちらに生まれてから市民の暮らしはあまり知らないが、王宮でもこんなものなかったぞ。
「いえ、使い方はわかるんですが、何でこんな高度なものがあるんですか」
「あぁ。これぐらい誰でも思いつくとおもうのですが、王様はこういうのを見て私をここに閉じ込めたんですよね」
「なるほど。ジルさんがオーバーテクノロジー生産機なんですね」
「それで品物はこの辺に出てきますから」
ジルさんがポチっとすると急須が出てきた。
「使用魔力は王様から引いているのでどんどん使って良いですよ」
ふふふふふ、と笑ったジルさんに闇が見えた。
「では、私は隣の部屋に居ますから。少し休んで下さいね」
教会施設の案内が終わり私は部屋に戻った。
前世のホテルの一室並の設備がある。
台所だけは共用だが。
転生先は魔物に殴られて終わるだけだと思っていたけど
こんなにゆっくり休んでいいのかな。
……
前世からの癖で暇になるとどうしたらいいかわからない。
昔から一人になるとざわざわとした声が聞こえて
何故か責められるような気持ちになるから
忙しくして忘れることにしていたのに。
それがおかしいのかもしれない、と気づいた時には仕事から抜けられなくなっていて、休息が必要と気づいた時には身体の病気が進んでいて死んでしまった。
ひとまず出来ることをしよう。
タブレットから必要なものを取り出ししまい、お風呂に入って上がったらまたやるべきことがなくなってしまった。
ど、どうしよう。
ソファに腰掛けているとドアをノックする音が聞こえた。
返事をするとジルさんが入ってきた。
「ラナンさん、何か困り事はありませんか」
「仕事を下さいっ」
私が促すと、ジルさんは私の隣に腰掛ける。
「……なるほど。じゃあ晩御飯を作ってもらおうかな」
「すみません、料理は前世から壊滅的に苦手なんですが」
皮剥きぐらいなら出来るかな。自分の皮も剥くが。
「ああ、そうなんですね。ラナンさんは前世の記憶があるんですね」
あ、ここの人達は前世の記憶があることがあるのか。
「私はないですし、王様は人間の前世の記憶は消しているみたいですけど。
そうか、すぐに魔王討伐に出すつもりだったから、残したままにしたのかな」
「精神的に疲れが溜まったままだったので、消して欲しかったですねそこは」
「お疲れなんですね」
「いやジルさんに愚痴ることじゃなかったですね、すみません」
「いいえ、是非お話して下さい」
そう言ってにっこり微笑む。
ジルさんは美形だ。
銀髪なんてファンデの色選ぶのが凄く難しいような髪色なのに、化粧いらずの透明感のある白い肌、整った眉、銀のまつ毛、
人形かと思う鼻筋、リップを薄く引いたような唇、女性でもこんなに綺麗な人はそう居ない。
……王様も美人なんだけどそもそも性格があれだし。私と同じ顔だし。
「前世からなんですけど、立ち止まると自分を責める声がするんです。だから働き続けないといけないんですけど……」
「ああ、なんか憑いてますものね」
「えっ」
「リーファルーシェンの浄化を通り抜けたってことは、魂に深く根付いていてラナンさんの記憶から再生されたんですね。
確かにこれは一旦記憶を消しておけば治ったのになぁ」
「え、これ自分の性格だと思ってたけどなんか憑いてたんですか!?」
「ええ、今も見えますよ、黒いモヤが、これ祓えば取れるのかなぁ」
「!?」
ジルさんは私に腕を回し、首の後ろを手で払う。
「!!?」
「あ、全然取れないですね、すみません、お力になれず」
「あの、至近距離の美形は心臓に悪いので勘弁して下さい」
「え、
あぁすみません、私は女性になんてことを」
ジルさんは顔を真っ赤にして部屋を出てしまった。
あ、待って、私の仕事はー???
ジルさんは「魔法で何とかなる」と言っていたが私が考えていた魔法と違った。
ちなみに私が考えていたのは魔法で植物の成長を促進して…とかその程度である。
「この板のこの四角の領域に欲しい商品のキーワードを入力して
購入ボタンを押せば…… ラナンさん?」
前世のタブレットとショッピングサイトじゃ。
言い忘れていたが私は桜の綺麗な国の社畜の転生体である。
こちらに生まれてから市民の暮らしはあまり知らないが、王宮でもこんなものなかったぞ。
「いえ、使い方はわかるんですが、何でこんな高度なものがあるんですか」
「あぁ。これぐらい誰でも思いつくとおもうのですが、王様はこういうのを見て私をここに閉じ込めたんですよね」
「なるほど。ジルさんがオーバーテクノロジー生産機なんですね」
「それで品物はこの辺に出てきますから」
ジルさんがポチっとすると急須が出てきた。
「使用魔力は王様から引いているのでどんどん使って良いですよ」
ふふふふふ、と笑ったジルさんに闇が見えた。
「では、私は隣の部屋に居ますから。少し休んで下さいね」
教会施設の案内が終わり私は部屋に戻った。
前世のホテルの一室並の設備がある。
台所だけは共用だが。
転生先は魔物に殴られて終わるだけだと思っていたけど
こんなにゆっくり休んでいいのかな。
……
前世からの癖で暇になるとどうしたらいいかわからない。
昔から一人になるとざわざわとした声が聞こえて
何故か責められるような気持ちになるから
忙しくして忘れることにしていたのに。
それがおかしいのかもしれない、と気づいた時には仕事から抜けられなくなっていて、休息が必要と気づいた時には身体の病気が進んでいて死んでしまった。
ひとまず出来ることをしよう。
タブレットから必要なものを取り出ししまい、お風呂に入って上がったらまたやるべきことがなくなってしまった。
ど、どうしよう。
ソファに腰掛けているとドアをノックする音が聞こえた。
返事をするとジルさんが入ってきた。
「ラナンさん、何か困り事はありませんか」
「仕事を下さいっ」
私が促すと、ジルさんは私の隣に腰掛ける。
「……なるほど。じゃあ晩御飯を作ってもらおうかな」
「すみません、料理は前世から壊滅的に苦手なんですが」
皮剥きぐらいなら出来るかな。自分の皮も剥くが。
「ああ、そうなんですね。ラナンさんは前世の記憶があるんですね」
あ、ここの人達は前世の記憶があることがあるのか。
「私はないですし、王様は人間の前世の記憶は消しているみたいですけど。
そうか、すぐに魔王討伐に出すつもりだったから、残したままにしたのかな」
「精神的に疲れが溜まったままだったので、消して欲しかったですねそこは」
「お疲れなんですね」
「いやジルさんに愚痴ることじゃなかったですね、すみません」
「いいえ、是非お話して下さい」
そう言ってにっこり微笑む。
ジルさんは美形だ。
銀髪なんてファンデの色選ぶのが凄く難しいような髪色なのに、化粧いらずの透明感のある白い肌、整った眉、銀のまつ毛、
人形かと思う鼻筋、リップを薄く引いたような唇、女性でもこんなに綺麗な人はそう居ない。
……王様も美人なんだけどそもそも性格があれだし。私と同じ顔だし。
「前世からなんですけど、立ち止まると自分を責める声がするんです。だから働き続けないといけないんですけど……」
「ああ、なんか憑いてますものね」
「えっ」
「リーファルーシェンの浄化を通り抜けたってことは、魂に深く根付いていてラナンさんの記憶から再生されたんですね。
確かにこれは一旦記憶を消しておけば治ったのになぁ」
「え、これ自分の性格だと思ってたけどなんか憑いてたんですか!?」
「ええ、今も見えますよ、黒いモヤが、これ祓えば取れるのかなぁ」
「!?」
ジルさんは私に腕を回し、首の後ろを手で払う。
「!!?」
「あ、全然取れないですね、すみません、お力になれず」
「あの、至近距離の美形は心臓に悪いので勘弁して下さい」
「え、
あぁすみません、私は女性になんてことを」
ジルさんは顔を真っ赤にして部屋を出てしまった。
あ、待って、私の仕事はー???
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