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『クズアルファはぐずぐずに尽くし巣を作る』本編(完結)
◇処分◇◆回想◆◇処分◇◆回……
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◇
一つため息を吐いて、押入れのプラスチック製の抽斗を開ける。
案の定、歪んだチェック柄のトランクスが! あまつさえ、ゴムを入れ替えて使用している形跡まである!
そうだ。買収しよう。
今回視察した縫製工場の中に、手刺しの刺繍職人を抱えたところがある。業績は好調のはずだが、メイン銀行から圧をかけて傾かせよう。親父の会社から手を回して取引先を潰せば、落とせるな。職人ごと私の所有物だ。元大臣の大叔父が出るほどの件ではないだろう。
ふくよかな尻のラインをぴったりと包もう。可愛らしい桃色の陰茎を、優美で繊細な手仕事で飾ろう。きっと番の精香が引き立つに違いない。
半透明の抽斗をひっくり返す。くすんだ色ばかりの処分下着を、こんもりと布団上の山に積む。
◇
◆
『きもち、い……ああっ、イ……ちゃう』
もはや抗うことなく、私の手に溺れる番が愛おしくてたまらなかった。
私の肩書きや家系に欲を出し媚びてくる人間には、今までは私も欲望で返してきた。ヒートを慰めてと言われれば、一晩ぐらいはオメガの相手もしてきた。
六本木界隈の裏ルートで流れてきた方法で、ネックガードを無理やり解除。そんなことも平然とやっていた。
支給品のセキュリティを破る。国から開発会社に予算が下りる。新しいネックガードが全国単位で発注される。対して、高性能の弊社の製品の価値が上がる。再び新しい公用品の欠陥が裏で流され、大金が回る。その繰り返し。簡単なお仕事だ。
無防備なうなじを噛むふりをしてやれば、オメガの孔はうねり締まった。ただその場の快楽。それだけ。
誰をも噛んで番う気には全くなれなかった。ラットが起きかけたことすらない。
膝の上で私の胸に顔を埋めた番のフェロモンが、どんどん濃くなってきた。
瞳が見たい。全てが見たい。
頭の巻きタオルをクッと後ろに引いた。見上げた顔に惹き寄せられた。肌と同じように、ぷるんと潤んだ唇。
喰いたい。
噛みたい。
『っ、はぁ……っ、あぁ、うっ……』
◆
◇
カラーボックスには、手書きのメモノートとレシピ本と小説が少し。あとはアルバム。これらは貴重品だ。
写真は後ほどゆっくり堪能するとして、枕元に書籍類を積む。
図書館の本があるので、玄関に。
「臭い」
自治体のゴミ袋を二重にして入れ、きっちりビニール口を縛って上がり框に置く。田舎街の雑多な臭い。
このキッチンの安い食器類は……処分かな。布団の足元に並べる。
調理器具は良い品質のようだ。食堂厨房の物の方が、使い慣れているか。一応アパートにある器具も、書籍類と反対側の枕元にまとめる。
◇
◆
『はぁぁ……ぷるぷる、可愛い』
艷やかな唇に舌を捩じ込もうとして……すんでのところで我慢した。
油でべたつくこんな大衆食堂の床で、番の初めてを奪うことは出来ない。キスをしたら、もう私自身を止める自信はなかった。
『立てる?』
『ほぇ……???』
腕を絡めて体重を半分預かりながら、番を食堂厨房に導いた。
『火の元を確認してね。責任者でしょう?』
少し我に返ったようで、彼はのそのそと機械的に働き始めた。これだけは真新しい業務用冷凍庫に、私は食材を詰め込んでいった。
三日間か、一週間か。料理しやすいよう調理台に整然と並べた食材。抱き潰す間に腐らせてしまえば、後を任せる者が困るだろう。
他の戸締まりをさせる間に、入り口の店の暖簾を外した。大正創業と丁寧に染め抜かれた一枚。
申し訳ないが、この街にもこの店にも、もう番を戻すつもりはなかった。
片腕で番を担ぎ上げた。理性を失いかけてぐったりした体は、心地よく重かった。風船のようにふんわりして見えるのに、ずっしりと私に馴染んだ。
足取りだけはふわふわと、私はホテルの別部屋へと急いだ。ハネムーンプランとやらに変更済みだ!
◆
◇
薄暗い洗面所の周囲から、くたくたのタオル類を引き取る。布団に丸く積み上げる。これも処分だ。
番を得たアルファはまめまめしくなるそうだ。ここまで分別すれば、運送業者も梱包しやすいだろう。
いやいや、業者は駄目だ。どんな人間が混じるかわからない。実家から使用人を呼び寄せよう。
狭い部屋のシングル布団に積まれた物たちを眺め、満足の息をつく。
少し、疲れたな。
番を見つけ、結局十日間。ぷるぷるをとろとろに蕩かして繋がるのに忙しく、隣で微睡むことも出来なかった。
◇
一つため息を吐いて、押入れのプラスチック製の抽斗を開ける。
案の定、歪んだチェック柄のトランクスが! あまつさえ、ゴムを入れ替えて使用している形跡まである!
そうだ。買収しよう。
今回視察した縫製工場の中に、手刺しの刺繍職人を抱えたところがある。業績は好調のはずだが、メイン銀行から圧をかけて傾かせよう。親父の会社から手を回して取引先を潰せば、落とせるな。職人ごと私の所有物だ。元大臣の大叔父が出るほどの件ではないだろう。
ふくよかな尻のラインをぴったりと包もう。可愛らしい桃色の陰茎を、優美で繊細な手仕事で飾ろう。きっと番の精香が引き立つに違いない。
半透明の抽斗をひっくり返す。くすんだ色ばかりの処分下着を、こんもりと布団上の山に積む。
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『きもち、い……ああっ、イ……ちゃう』
もはや抗うことなく、私の手に溺れる番が愛おしくてたまらなかった。
私の肩書きや家系に欲を出し媚びてくる人間には、今までは私も欲望で返してきた。ヒートを慰めてと言われれば、一晩ぐらいはオメガの相手もしてきた。
六本木界隈の裏ルートで流れてきた方法で、ネックガードを無理やり解除。そんなことも平然とやっていた。
支給品のセキュリティを破る。国から開発会社に予算が下りる。新しいネックガードが全国単位で発注される。対して、高性能の弊社の製品の価値が上がる。再び新しい公用品の欠陥が裏で流され、大金が回る。その繰り返し。簡単なお仕事だ。
無防備なうなじを噛むふりをしてやれば、オメガの孔はうねり締まった。ただその場の快楽。それだけ。
誰をも噛んで番う気には全くなれなかった。ラットが起きかけたことすらない。
膝の上で私の胸に顔を埋めた番のフェロモンが、どんどん濃くなってきた。
瞳が見たい。全てが見たい。
頭の巻きタオルをクッと後ろに引いた。見上げた顔に惹き寄せられた。肌と同じように、ぷるんと潤んだ唇。
喰いたい。
噛みたい。
『っ、はぁ……っ、あぁ、うっ……』
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カラーボックスには、手書きのメモノートとレシピ本と小説が少し。あとはアルバム。これらは貴重品だ。
写真は後ほどゆっくり堪能するとして、枕元に書籍類を積む。
図書館の本があるので、玄関に。
「臭い」
自治体のゴミ袋を二重にして入れ、きっちりビニール口を縛って上がり框に置く。田舎街の雑多な臭い。
このキッチンの安い食器類は……処分かな。布団の足元に並べる。
調理器具は良い品質のようだ。食堂厨房の物の方が、使い慣れているか。一応アパートにある器具も、書籍類と反対側の枕元にまとめる。
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『はぁぁ……ぷるぷる、可愛い』
艷やかな唇に舌を捩じ込もうとして……すんでのところで我慢した。
油でべたつくこんな大衆食堂の床で、番の初めてを奪うことは出来ない。キスをしたら、もう私自身を止める自信はなかった。
『立てる?』
『ほぇ……???』
腕を絡めて体重を半分預かりながら、番を食堂厨房に導いた。
『火の元を確認してね。責任者でしょう?』
少し我に返ったようで、彼はのそのそと機械的に働き始めた。これだけは真新しい業務用冷凍庫に、私は食材を詰め込んでいった。
三日間か、一週間か。料理しやすいよう調理台に整然と並べた食材。抱き潰す間に腐らせてしまえば、後を任せる者が困るだろう。
他の戸締まりをさせる間に、入り口の店の暖簾を外した。大正創業と丁寧に染め抜かれた一枚。
申し訳ないが、この街にもこの店にも、もう番を戻すつもりはなかった。
片腕で番を担ぎ上げた。理性を失いかけてぐったりした体は、心地よく重かった。風船のようにふんわりして見えるのに、ずっしりと私に馴染んだ。
足取りだけはふわふわと、私はホテルの別部屋へと急いだ。ハネムーンプランとやらに変更済みだ!
◆
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薄暗い洗面所の周囲から、くたくたのタオル類を引き取る。布団に丸く積み上げる。これも処分だ。
番を得たアルファはまめまめしくなるそうだ。ここまで分別すれば、運送業者も梱包しやすいだろう。
いやいや、業者は駄目だ。どんな人間が混じるかわからない。実家から使用人を呼び寄せよう。
狭い部屋のシングル布団に積まれた物たちを眺め、満足の息をつく。
少し、疲れたな。
番を見つけ、結局十日間。ぷるぷるをとろとろに蕩かして繋がるのに忙しく、隣で微睡むことも出来なかった。
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