恋の罠 愛の檻

桜 朱理

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第2章 新婚初夜は蜜色の企み

2)

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 そこから先は、滅茶苦茶に乱された。
 ――暑い……
 汗でブラウスが肌に纏わりつく感覚が不快なのに、高坂にがっちりと抱きかかえられているせいで、自分の思うように身動きが取れなかった。
「ああ……あー……ん……」
 一体自分たちは何をしているのだろうと思った。
 いくらクーラーがきいているとはいえ、夏の夕闇迫る蒸し暑さの中、狭いソファで隙間もないほどに、ぴったりと抱き合っている。
 ろくに服も脱がずに、汗まみれになって体を繋げ、本能のままに快楽を追っている姿は、まるで獣だ。
 二人の熱気に、部屋の湿度が上がっている気がした。
 与えられる快楽に二人の体の相性の良さを実感させられる。
 激しく腰を揺さぶられても、奥に当ててじっくりとこね回されても、何をされても気持ちよかった。
 下から突き上げられるたび、淫らな水音が立つ。高坂を受け入れている蜜襞は、彼の浮き出た血管や、裏筋、張り出した先端部、凹凸の一つ一つすべてを感じ取っている。そう思うほどに、ぴったりと彼の昂りに吸い付くような動きを見せていた。
「はぁ……はや……く……イ……って……」
 意味もなく頭を振って、胎の奥にどんどんと溜まる快楽に、泣きごとを訴える。感じすぎて、もう辛かった。
「冗談でしょ。こんなにいいのに、やめられるわけがない」
「やぁ……ん!」
 耳朶を舐めしゃぶる男は、美園の懇願をあっさりと切り捨てる。
 この男の中に、こんな激しさがあるなんて知らなかった。
 普段の穏やかさは鳴りを潜め、剥き出しになった獣性に、美園は乱される。
 力はどこにも入らないのに、腰だけが淫らに揺れて、蕩け切った粘膜を高坂に擦りつけて、快楽を享受する。
 荒く乱れた呼吸で、鼻にかかった甘ったるい喘ぎが、ひっきりなしに零れた。
 弛緩しきって、脱力した手足を高坂の体に巻き付けて、何とかしがみついているが、支えきれない首がぐらぐらと揺れていた。
 後頭部に回された男の手が美園の首を支え、乱れる吐息を奪いに来る。
 高坂の舌が美園の口の奥まで入って来て、逃げる美園の舌を噛んで引きずり出した。舌の先端を吸ったり、甘噛みされる。好き放題する男のせいで、舌が痺れたような感覚を覚えた。
 閉じられない口の端から、二人分の唾液が流れて落ちた。
「んー!……んん……んん!」
 息苦しさにもがいて逃げようとしたが、後頭部をしっかりと押さえられているせいで、逃げられない。
 ――息、苦しい……
 肺が酸素を求めて悲鳴を上げている。酸欠に視界が霞んでいる気がした。
 高坂は美園との口づけを解かないままに、美園の腰を掴み、上下左右に揺すり始めた。角度をずらされ、結合はさらに深くなる。
 どろどろに蕩かされた体の中で、唯一はっきりと感じられるのは、胎の中に収めている男のものだけ。
 入れて、突いて、捏ね回されて、予測のつかない動きの全てに感じさせられて、美園を快楽に溺れさせた。
 ようやく唇が解放され、美園はのけぞった。揺れる視界に天井の真っ白さが、目に飛び込んでくる。
 ――ああ、来る……
 長く与えられる刺激に、美園の中の快楽が徐々にその水位を上げていく。じわじわと高くなっていく波のような感覚に、美園は自分の絶頂を予感を覚えた。
 今までに感じたこともないような深くて大きな感覚が怖くて、美園は意味もなく手足をじたばたともがかせ、高坂のスーツの背を握って、首を振った。
「どうしました?」
「あ……い……ちゃ……う」
 美園の状態などわかっているだろうに、意地悪く問うてくる男に、怒る元気もなく美園は素直に答えていた。
 虚ろな声が返った後に、ふっと笑った高坂が、美園の足を抱え直した。
 一際、強く突き上げられて、美園は甘い悲鳴を上げた。
 ――こんな男は知らない。
 美園の記憶の中にある高坂は、何時だって穏やかで、優しいもう一人の兄のような存在だった。
 最後の最後に、初恋を拒まれはしたが、それも仕方ないと納得していた。
 こんな野蛮なセックスをするような男だとは、想像をしたこともなかった。
 仕掛けたのは美園だ。けれど、こんな反撃は予想もしてなかった。
「あ、あ……また……!」
 胎の奥を激しく突かれて、蜜襞が波打つように高坂の昂りを締め付けた。
 全身が痺れるような快楽に、美園はたまらずに男の腰に足をまわして、挟み込む。
 まるで絶対に離れないと体で訴えているような、その仕草が目の前の男を、どれだけ喜ばせているのか美園だけが気づかない。小さく身を丸めて、そのくせ楔をより深く受け入れるように男に下半身を預けて、揺らされるに任せる。
 深く穿ってきた高坂の昂りが膨れ上がるのを感じた。
 ――ああ、イクんだ。
 ぼんやりとそう思った瞬間に、強い腕が腰を抱え上げ、荒々しく突き上げられた。
 ぐんと体が宙に投げだされたような強さだった。美園は一気に昇り詰める。
 声にならない悲鳴を上げて、快楽に美園の意識が白く溶けていく。
 そんな中であっても、同じ高みに昇った男が、欲望を解放するのを感じた――

 ☆

 多分、意識を失っていた。瞼を開いた美園は一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。
 ――え?
 視界に入って来たのは、水滴が滴るクリーム色の天井だった。
 体が水の中に浸かっている感覚に、驚いてもがく。派手な水音が立って、バランスを崩し、水の中に沈みそうになった。
「何をしてるんですか?」
 少しだけ焦ったような男の声が聞こえた後に、背後から脇に手を差し入れられて、体を救い上げられた。
 頭上でホッとしたようなため息が聞こえた。
 美園は状況を把握しようと、視線を巡らせる。まず視界に入ったのは、湯に浸かる自分の裸体だった。そして、背後から自分を支える男の大きな手が見えた。ますます状況がわからない。恐る恐る後ろに視線を向ければ、真黒な男の瞳と目が合って、「ひっ!」と悲鳴が漏れた。
「その悲鳴は傷つきますね」
 苦笑した高坂の言葉に、美園はなんと返せばいいのかわからない。
 首をねじった状態で、呆然としたまま高坂の綺麗な顔を見上げることしかできない。 自分が湯船に浸かる高坂の上に座らされて、背後から抱きかかえられていることをやっと理解する。いわゆる背面座位の格好で湯船に浸かっていたのだ。
「美園さん?」
 完全に固まってしまって返事も出来ない美園に、高坂が心配そうに顔を覗きこんでくる。
「大丈夫ですか? 具合が悪いですか? 完全に意識を失っていたので、少し焦りました」
「何で……」
 どうして、それで今の状況になるのか、説明してほしいと美園は思った。
「ああ、服も脱がずにやっていたせいで、汗がすごくて気持ち悪かったので、風呂に入ることにしたんです」
 眼差しだけで、美園の疑問を察した高坂の説明に、美園の頭はますます混乱する。
 ――それで、何で一緒に風呂に入ることになるのよ!?
 その疑問に辿り着いて、美園の意識はやっとはっきりと覚醒する。
「きゃあ!」
 途端に恥ずかしさを覚えて、悲鳴を上げると胸を抱えて体を丸めた。
「……今更、隠す意味がありますか?」
 呆れたような高坂の言葉が聞こえたが、構っていられなかった。
「それはそれ! これはこれ!」
 恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。耳朶まで赤くして叫ぶ美園に、高坂がくすりと小さく笑った。
「さっきまであれだけのことしておいて、本当に今更でしょう」
 
 
 

 
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