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2章 広がる世界

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  あれから3日目の夜。早速一匹目の獲物がかかった。夜中にナオトが部屋に設置した魔導具2機が(ナオト命名:みはる&まもるくん)発動する。
バルコニーから入ってきた獲物は音もなく感電し気絶して倒れ込み、拘束されて宙に浮いていた。
ノーマンは気配がしたのでベットから抜け出し、ナイトガウンを羽織ると剣をもって気配のした部屋のドアを開ける。
そこにはすでに灯りを持ったハロルドがいて拘束されて宙に浮く侵入者を見ていた。
「はやいな、ハロ。もしかして見てたのか?」
そう話しかけるとハロルドは苦笑してうなずいた。
「ええ、気づいてましたが少々ナオトくんが作成した魔導具の性能が気になりまして。」
「あぁ……それは俺もだ。しかし……いざこの目で確認してみると心底恐ろしい性能だな……」
白目を剝いて気絶する侵入者を見ながらノーマンも苦笑した。
「これ、夜間の護衛いりますか?」
「……まぁ、楽に仕事が出来て手間が省けると思ってくれよ。流石に俺も朝起きてすぐに部屋に入ったら空中で白目剥いて気絶してる侵入者を見たくはないからな。」
「それもそうですね。これ、このひもを引っ張れば移動可能なんですよね?」
「あぁ、ナオトが言ってたな。」
ハロルドが侵入者を拘束してるその黒い頑丈な紐を試しにちょいとひっぱると風船のようにふわふわと浮いてその紐が引かれた方へと移動した。
「搬送の手間も省けますね……では、殿下。私はこれにて。」
ハロルドは一礼してその侵入者を引っ張って出ていった。
ノーマンは一息つくと寝室に戻ってソファにナイトガウンを脱ぎ捨てると剣をベット横のサイドテーブルに立てかけてベットに入り直した。
隣ではあの魔導具を造るために二徹したナオトがすやすやと眠っている。あの凶悪な魔導具の製作者だとは思えないほど安らかだった。
ノーマンは少しナオトの額に触れるようなキスを落として自分も布団の中に入って寝直した。

―――――――――――――――――――――――

 話は2日前に遡る。
考えがあるというナオトはノーマンのプライベートルームのバルコニーから帰ってきてすぐにそれにとりかかった。
「ノーマン、あったらでいいんだけどリュヌ石ってある?」
「あぁ、あるにはあるが……何に使うんだ?」
リュヌ石とは透明に近い少し青みがかった見た目の鉱石で、そのリュヌ石を水に沈めることでその水は魔力を帯びるという不思議な石だ。その魔力をいろんなエネルギー源として使用でき、魔力の出力を上げれば上げただけ、リュヌ石は水に溶けてやがてすべてが魔力になり消えてしまう。また、採掘量は少なく、基本的に手に入れるには隣国のラジエールからの輸入に頼るしか今のところ入手手段がない代物だった。他の国やプレギエーラでも採掘はしているがその量はごく少量だ。プレギエーラや周辺諸国はラジエールが行うリュヌ石を法外な値段で売買してくるそのやり方に頭を悩ませていて数年前レインが導入してくれたリュヌ石を必要としない新しい動力システムがなければこの莫大な広さの宮殿や王宮の動力は賄えなかった。そもそもその新システムがあったから宮殿の拡大や施設の多様化に目処がたったともいうが。そのためここ最近ではめっきりリュヌ石は使用していなかった。
ソフィアに頼んでまだ少しあったリュヌ石を持ってきてもらう。
気づけば部屋にはソフィア、ハロルド、フェルマンの3人もいた。
ナオトはリュヌ石を受け取り、眺める。
サイズはだいたい拳ほどの大きさだ。
「ねぇ、ノーマン。レインはプレギエーラに新しい動力システムを提供したんだよね?」
ナオトは桶に水を張ってそのリュヌ石を沈めた。
「あぁ、それでかなりいろんな問題が解決したよ。それがどうかしたか?」
その場の全員でナオトの動向を見守りながらそんな話をする。
「その動力システム自体の詳細は?」
「レイン殿と取り引きしたのは龍族が提供する動力システム自体とそれに見合った金銭だったからその詳細までは契約の中に入ってなかったな。必要になれば龍族から必要なだけを売買してもらうというものだった。」
「なるほど……」
ナオトは苦笑しながらうーん……と唸る。
「……まぁ、でもここにいるみんなが黙ってればいいんだよね。」
「んんん?待て待て待て。なにをする気だ?」
ノーマンが慌ててストップをかける。
「遮音魔術使ったほうがいいのでは……」
先程のこともありハロルドは苦笑していう。
「こんな開放的なバルコニーの前でやっちゃって大丈夫ですか?カーテン閉めません?」
フェルマンもなんとなく察して意見する。
「今からでもルシアス殿下から魔方陣敷いてもらいます?」
ソフィアもそういって微笑む。
ナオトは全員の顔を眺めながらちょっとため息をついた。
「狙われるってめんどくさいね……」
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