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Scene 05
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翌日、俺は大学のゼミに顔を出した。幸い、指導教授は俺をまだ覚えていた。
「徳永君、だったね」
篠崎というこの教授は、古代インド哲学史という全く実用的でない学問の研究者だ。たしかに、どことなくインド人を彷彿とさせる彫りの深い顔立ちをしている。
「残念だけど、卒業は無理だよ」
「わかってます」
俺は自らの金髪に手をやり、ざっとなで上げた。
「どうしたのかな」
篠崎教授はおだやかに続け、俺に椅子を勧めた。一礼して教授の前に座る。
「色々ありまして、大学はちゃんと卒業しようと」
「うんうん」
「今さらですが、心入れ替えて勉強しますので、面倒をみていただけますか」
「しかしねぇ、前期の試験は終わったしなぁ」
「えぇ、とりあえず、卒業は来年の秋でもかまいません」
金髪をなびかせてすり寄る俺に、篠崎教授がちょっと引いた。
「いったいどうしたんだ、今までの君はバンド一筋だったじゃないか。まぁ右田君に比べればまだ講義にも出ていたけどね、君は」
「ですからいろいろ」
「有名人だからね、君たちは」
一部の音楽好きに大人気の俺たちの存在は、たしかにこの大学では浮いていた。
「実は、結婚しようと」
「はぁ?」
教授の口が全開になり、あごががくんと落ちた。
「惚れた女と、結婚します。バンドは脱退します」
教授の口はまだ閉じない。
「まぁカタギの仕事を探しますんで、この頭もきれいに丸めますよ」
「本当かね」
ようやく教授が言葉を発した。
「マジですけど。何なら今ここで髪切りましょうか?」
「それは勘弁してくれ。はっきり言って迷惑だから。ただ、本気なんだね?」
「はい」
俺は少しうんざりしたが、我慢して続けた。
「とりあえず卒業させてもらいたいんです。できることは何でもしますんでよろしくお願いします」
教授に向かってもう一度深く頭を下げた。雪江のためだ。
「じゃぁねぇ、ひとつ判断材料ということで」
教授は傍らの書棚から分厚い本を取り出し、俺に渡した。タイトルは「阿育王の研究」とある。
「この本を読んで、古代インド王朝の成り立ちと原始仏教の伝搬について論じてください」
「はぁ?」
今度は俺のあごが下がる番だ。
「これは僕の先輩にあたる先生の著作でね、古代インド哲学史では必読の書なんだよ」
「はぁ」
「1週間後、提出。A4で1枚200文字、20枚~25枚。その出来を見てから考えましょう」
目の前が真っ暗になった。
「徳永君、だったね」
篠崎というこの教授は、古代インド哲学史という全く実用的でない学問の研究者だ。たしかに、どことなくインド人を彷彿とさせる彫りの深い顔立ちをしている。
「残念だけど、卒業は無理だよ」
「わかってます」
俺は自らの金髪に手をやり、ざっとなで上げた。
「どうしたのかな」
篠崎教授はおだやかに続け、俺に椅子を勧めた。一礼して教授の前に座る。
「色々ありまして、大学はちゃんと卒業しようと」
「うんうん」
「今さらですが、心入れ替えて勉強しますので、面倒をみていただけますか」
「しかしねぇ、前期の試験は終わったしなぁ」
「えぇ、とりあえず、卒業は来年の秋でもかまいません」
金髪をなびかせてすり寄る俺に、篠崎教授がちょっと引いた。
「いったいどうしたんだ、今までの君はバンド一筋だったじゃないか。まぁ右田君に比べればまだ講義にも出ていたけどね、君は」
「ですからいろいろ」
「有名人だからね、君たちは」
一部の音楽好きに大人気の俺たちの存在は、たしかにこの大学では浮いていた。
「実は、結婚しようと」
「はぁ?」
教授の口が全開になり、あごががくんと落ちた。
「惚れた女と、結婚します。バンドは脱退します」
教授の口はまだ閉じない。
「まぁカタギの仕事を探しますんで、この頭もきれいに丸めますよ」
「本当かね」
ようやく教授が言葉を発した。
「マジですけど。何なら今ここで髪切りましょうか?」
「それは勘弁してくれ。はっきり言って迷惑だから。ただ、本気なんだね?」
「はい」
俺は少しうんざりしたが、我慢して続けた。
「とりあえず卒業させてもらいたいんです。できることは何でもしますんでよろしくお願いします」
教授に向かってもう一度深く頭を下げた。雪江のためだ。
「じゃぁねぇ、ひとつ判断材料ということで」
教授は傍らの書棚から分厚い本を取り出し、俺に渡した。タイトルは「阿育王の研究」とある。
「この本を読んで、古代インド王朝の成り立ちと原始仏教の伝搬について論じてください」
「はぁ?」
今度は俺のあごが下がる番だ。
「これは僕の先輩にあたる先生の著作でね、古代インド哲学史では必読の書なんだよ」
「はぁ」
「1週間後、提出。A4で1枚200文字、20枚~25枚。その出来を見てから考えましょう」
目の前が真っ暗になった。
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