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かなめリカバリー -曖昧な距離-
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だいぶ逸れてしまった話を戻そう。
優理は名の通りの優しい人だった為、1人だったあの子を救ってあげたそうで本人には見つけてあげただけだと言われたらしいけれど、あの子にとってはそれが
何よりの救いだったのだそうだ。
あまり仲良くない私にこんな事情を軽々と話して良いのかと聞いたが、
「優理のお陰で吹っ切れたし、大丈夫だよ。」
との事だった。
それにしても軽々しいと思うが。家庭の事でも、学校の事でも悩んでいたあの子は…そろそろ名前で呼んでもいいか。一応あえて呼んでいなかったのだが。この際、そんな露見しない気遣いは切って捨てよう。
九はまあキラキラネームというのだろうか。だから、それで馬鹿にされていたらしい。そういった事もあり、流石に私には話してくれなかった家庭の事もあり、存在価値を見失って誰も見てくれなくなったのだ。そこで見つけてくれたのが優理らしい。
「あの頃の私の悲しみは救いはあっても救ってくれる人が居ないっていう寂しさだったのよ。ってなんか、話が重くなっちゃったな。あはは。」
「…」
部外者の私が気軽に励ますというのも、なんだか違う気がして言葉に詰まっていたら、それを察したのか九は続けてこう言った。
「だってさ。考えてみて、要さん。自然現象、または偶然にしか救ってもらえない人生ってどう思う?いや、私はもう優理に救ってもらったからそんな哀れむような顔で見なくてもいいんだよ?」
本当に吹っ切れていたのだな、と思わされる話し方だった。今の彼女の話を聞くと、私が愚かの極みとか言ってた時の
「愚かさとか哀れさとかを指摘してくれる人が居ないって状況なんじゃないかな。」
て言う彼女の言葉に重みがあるな。
まあ、もっとも彼女の発する言葉には元々重みがあるのだが。ありありなのだが。
本人があえて隠そうともがけばもがくほど、増していくみたいだった。
―やはり関わってくれる人が居ないのは、皆悲しいものか。実を言うと私はそこまで悲しくならなかった。冷たい人間になったなー。いや、元々じゃないか。友達を簡単に裏切ってしまう程に。私という人間は自分が呆れる程に自分に甘いし、自分を全く知ろうとしないし。
―自分との距離が遠過ぎて…否、近過ぎて遠くなった。又は当たり前過ぎて見失ったのだろう。ようは、自分の事は棚に上げて人の事ばかり気にするおせっかいな人間なのだろう。
言葉に説得力が無い人間なのだろう。
だからといってこれといった打開策も無いし、あったとしても私は打開しようと思わないだろう。結構プライドが高い人間な為、自分らしさとかが例え短所だとしても貫き通したいのだ。これは決して悪い事ではないだろう。
誰かには短所に見えても誰かには長所に見えるかもしれないじゃないか。むしろそのパターンの方が多いのでは?誰にでも味方の正義が無いように、誰にでも同じ様に見える物なんて無いのだから。けれど、それを主張するのは難しかったりする。
意見の違いを主張するのは別に間違いを指摘している訳では無いのに、自分の意見と違う意見を言われると、自分の意見を否定されている気がしたり、自分を否定されている気がしたりする。それだけで敵に回されてしまう事も多々ある。
それはきっと、自分の意見に絶対的自信を持ち、信用している証拠でもあるのだろうけれど。ある意味羨ましくもある。
そうなると主張がとても難しいように思えるけれど、そもそもそれで敵に回すような人間とは関わりを絶った方が良いだろう。
それで解決になるだろう。
優理は名の通りの優しい人だった為、1人だったあの子を救ってあげたそうで本人には見つけてあげただけだと言われたらしいけれど、あの子にとってはそれが
何よりの救いだったのだそうだ。
あまり仲良くない私にこんな事情を軽々と話して良いのかと聞いたが、
「優理のお陰で吹っ切れたし、大丈夫だよ。」
との事だった。
それにしても軽々しいと思うが。家庭の事でも、学校の事でも悩んでいたあの子は…そろそろ名前で呼んでもいいか。一応あえて呼んでいなかったのだが。この際、そんな露見しない気遣いは切って捨てよう。
九はまあキラキラネームというのだろうか。だから、それで馬鹿にされていたらしい。そういった事もあり、流石に私には話してくれなかった家庭の事もあり、存在価値を見失って誰も見てくれなくなったのだ。そこで見つけてくれたのが優理らしい。
「あの頃の私の悲しみは救いはあっても救ってくれる人が居ないっていう寂しさだったのよ。ってなんか、話が重くなっちゃったな。あはは。」
「…」
部外者の私が気軽に励ますというのも、なんだか違う気がして言葉に詰まっていたら、それを察したのか九は続けてこう言った。
「だってさ。考えてみて、要さん。自然現象、または偶然にしか救ってもらえない人生ってどう思う?いや、私はもう優理に救ってもらったからそんな哀れむような顔で見なくてもいいんだよ?」
本当に吹っ切れていたのだな、と思わされる話し方だった。今の彼女の話を聞くと、私が愚かの極みとか言ってた時の
「愚かさとか哀れさとかを指摘してくれる人が居ないって状況なんじゃないかな。」
て言う彼女の言葉に重みがあるな。
まあ、もっとも彼女の発する言葉には元々重みがあるのだが。ありありなのだが。
本人があえて隠そうともがけばもがくほど、増していくみたいだった。
―やはり関わってくれる人が居ないのは、皆悲しいものか。実を言うと私はそこまで悲しくならなかった。冷たい人間になったなー。いや、元々じゃないか。友達を簡単に裏切ってしまう程に。私という人間は自分が呆れる程に自分に甘いし、自分を全く知ろうとしないし。
―自分との距離が遠過ぎて…否、近過ぎて遠くなった。又は当たり前過ぎて見失ったのだろう。ようは、自分の事は棚に上げて人の事ばかり気にするおせっかいな人間なのだろう。
言葉に説得力が無い人間なのだろう。
だからといってこれといった打開策も無いし、あったとしても私は打開しようと思わないだろう。結構プライドが高い人間な為、自分らしさとかが例え短所だとしても貫き通したいのだ。これは決して悪い事ではないだろう。
誰かには短所に見えても誰かには長所に見えるかもしれないじゃないか。むしろそのパターンの方が多いのでは?誰にでも味方の正義が無いように、誰にでも同じ様に見える物なんて無いのだから。けれど、それを主張するのは難しかったりする。
意見の違いを主張するのは別に間違いを指摘している訳では無いのに、自分の意見と違う意見を言われると、自分の意見を否定されている気がしたり、自分を否定されている気がしたりする。それだけで敵に回されてしまう事も多々ある。
それはきっと、自分の意見に絶対的自信を持ち、信用している証拠でもあるのだろうけれど。ある意味羨ましくもある。
そうなると主張がとても難しいように思えるけれど、そもそもそれで敵に回すような人間とは関わりを絶った方が良いだろう。
それで解決になるだろう。
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