6 / 57
第1章 転生
2話 初野営
しおりを挟む
結界石により外敵からの攻撃を受けるという不安が解消されたジンは焚き火の近くに座るとマジックバッグからパンを1本とうさぎの肉を1つ取り出した。
うさぎの肉は調理しやすいように解体された状態で入っていたので、それを手頃なサイズに切り分け、枝を挿した後に塩を振って焚き火で炙り始める。
コショウがあればもっと美味しくなるのだろうがない物ねだりをしてもしょうがないと諦めた。
大事な肉なので無駄にならないように慎重に焼き、うまく焼き上がったのを確認するとどこからか「こんがり肉ができました」と声が聞こえた気がした。
やっと焼けた肉は噛み付くと鶏肉のような食感だが淡白で噛み応えがあって上品な味がした。
(ジビエ料理ってやつか)
挿した木の枝がハーブのような香りがしたのも味のアクセントになって良かったのだろう。
腹が膨れると一日の疲れがどっと出始め、睡魔が襲ってくる。
マジックバッグを枕にして寝転がったが、遠くから聞こえていた獣の声がだんだん近づいてくるのに気がつくと睡魔はどこかへ消えていった。
(あの鳴き声からすると狼なのか?昼間に見た牛は地球に比べてかなり大きかったから狼もでかいんじゃないか?)
結界石が起動しているとはいえその効果を確認したことがないので心のどこかに信じきれないものがあるのでジンは安心しきれないでいたのだ。
ジンは起き上がると刀を抜いて周囲を警戒しはじめる。
すでに結界石のことなど頭の片隅にも残っておらず、少しの気配さえ逃さない様に神経を研ぎ澄ます。
だんだん近づいてきていた遠吠えが聞こえなくなったところを見るとこちらに襲いかかる準備に入ったのだろう。
近づいてくる獣の気配を察知したのか周囲で鳴いていた小動物や虫が一斉に息を潜め、聞こえてくるのは風による草木の擦れる音だけになる。
周囲の気配を探りながら観察していると少し離れた林の中に焚き火の光を反射している複数の獣の目を見つけた。
(ついに来たか、ただで食われてやるわけにはいかないぞ)
気合を入れ、獣達に向かって刀を身構える。
ガサガサと林の中から現れたのは思っていた通り狼の群れであった。
正面に現れた先頭の狼がリーダーなのであろう。その姿は他の狼より一回り以上大きく頭の位置は立ち上がったジンよりも上にある。
他の狼も地球のものよりはかなり大きく、普通の人がこの集団に襲われたら生き残るのはかなり難しいのは間違いないであろう。
ジンもタダでやられてたまるかとばかりに剣を抜き、間合いに入ったら切り倒そうと姿勢を低くし八双に構えた。
暫くにらみ合いが続くが、風が止まったと同時に先頭の狼が「ガゥ!」と唸ると他の狼がジンの周囲に広がり取り囲む様に一斉に襲いかかってきたのだ。
しかし、狼は一定の距離から近づくことはなかった。
ガツン、ドカッ、バキ!
ギャン!
全力疾走で襲いかかってきた先頭の狼は見えない壁に頭からぶつかると首の骨が折れたのかその場で動かなくなり、後続の狼の数匹も見えない壁に衝突しダメージを受けて動きを止めたのだ。
(あ、そういえば結界があったんだな)
グルルルル
周囲を取り囲んでいる狼は20頭ほどの群れであった。目の前の獲物を諦めることができないのか、唸りながらガリガリと結界を引っ掻く奴や地面の下から潜り込めないかと掘り返す奴がいる。
結界は結界石を中心に球形に展開しているため地面を掘っても無駄であるのだが獣にそんな事が分かるはずもない。
「本当に結界が張られてるんだな」
向こうからの攻撃は防げているがこちらからどうやって攻撃して良いやら思い付かない。
ただ時間だけが過ぎていくなか、遠くの空が明滅し始めゴロゴロと雷鳴が聞こえ始めた。
(雷雲がこっちにくるのかな?)
ポツポツと音が聞こえ始めると周囲の草や土が濡れ始め、それに伴い雷鳴はどんどん近くなってくる。
時間と共に雨の激しさは増していき、結界の天井を見ると大きなビニール傘をさしているような感じで雨が流れている。外では狼達がずぶ濡れになりながらも獲物を仕留めようと結界の中を睨んでいる。
その様子を濡れる事のない結界の中から焚き火で暖をとりながら見ていたが突然状況に変化が現れた。
バリバリバリッ!ドッガァアアァアァーーーン!
突然大きな雷がすぐそばの木に落ち、立木を燃え上がらせたのだ。
結界の中にいたジンは感電する事はなかったが、落雷の物凄い音で耳鳴りがして何も聞こえなくなっていた。
キーーーーーーーン
「うぉっ!」
(ビックリした!あれ?こんなに近くに落ちたのに少しも感電しなかったな)
電気も通さない事に驚嘆しながら周囲を確認すると、結界の周りにいた狼が全て倒れていることが見て取れた。
(今の雷撃で全部感電死したのか?息を吹き返すかもしれないからこのまま様子見だな)
狼はもう残っていない様に見えたが、安全を優先させて回収は明日の朝する事にした。
雨はどんどん大粒になり激しさを増していく。
ジンは結界の中で寝転がったまま結界を流れ落ちる雨を眺めていたが、疲れと結界による安堵感でいつのまにか眠りに落ちてしまっていた。
うさぎの肉は調理しやすいように解体された状態で入っていたので、それを手頃なサイズに切り分け、枝を挿した後に塩を振って焚き火で炙り始める。
コショウがあればもっと美味しくなるのだろうがない物ねだりをしてもしょうがないと諦めた。
大事な肉なので無駄にならないように慎重に焼き、うまく焼き上がったのを確認するとどこからか「こんがり肉ができました」と声が聞こえた気がした。
やっと焼けた肉は噛み付くと鶏肉のような食感だが淡白で噛み応えがあって上品な味がした。
(ジビエ料理ってやつか)
挿した木の枝がハーブのような香りがしたのも味のアクセントになって良かったのだろう。
腹が膨れると一日の疲れがどっと出始め、睡魔が襲ってくる。
マジックバッグを枕にして寝転がったが、遠くから聞こえていた獣の声がだんだん近づいてくるのに気がつくと睡魔はどこかへ消えていった。
(あの鳴き声からすると狼なのか?昼間に見た牛は地球に比べてかなり大きかったから狼もでかいんじゃないか?)
結界石が起動しているとはいえその効果を確認したことがないので心のどこかに信じきれないものがあるのでジンは安心しきれないでいたのだ。
ジンは起き上がると刀を抜いて周囲を警戒しはじめる。
すでに結界石のことなど頭の片隅にも残っておらず、少しの気配さえ逃さない様に神経を研ぎ澄ます。
だんだん近づいてきていた遠吠えが聞こえなくなったところを見るとこちらに襲いかかる準備に入ったのだろう。
近づいてくる獣の気配を察知したのか周囲で鳴いていた小動物や虫が一斉に息を潜め、聞こえてくるのは風による草木の擦れる音だけになる。
周囲の気配を探りながら観察していると少し離れた林の中に焚き火の光を反射している複数の獣の目を見つけた。
(ついに来たか、ただで食われてやるわけにはいかないぞ)
気合を入れ、獣達に向かって刀を身構える。
ガサガサと林の中から現れたのは思っていた通り狼の群れであった。
正面に現れた先頭の狼がリーダーなのであろう。その姿は他の狼より一回り以上大きく頭の位置は立ち上がったジンよりも上にある。
他の狼も地球のものよりはかなり大きく、普通の人がこの集団に襲われたら生き残るのはかなり難しいのは間違いないであろう。
ジンもタダでやられてたまるかとばかりに剣を抜き、間合いに入ったら切り倒そうと姿勢を低くし八双に構えた。
暫くにらみ合いが続くが、風が止まったと同時に先頭の狼が「ガゥ!」と唸ると他の狼がジンの周囲に広がり取り囲む様に一斉に襲いかかってきたのだ。
しかし、狼は一定の距離から近づくことはなかった。
ガツン、ドカッ、バキ!
ギャン!
全力疾走で襲いかかってきた先頭の狼は見えない壁に頭からぶつかると首の骨が折れたのかその場で動かなくなり、後続の狼の数匹も見えない壁に衝突しダメージを受けて動きを止めたのだ。
(あ、そういえば結界があったんだな)
グルルルル
周囲を取り囲んでいる狼は20頭ほどの群れであった。目の前の獲物を諦めることができないのか、唸りながらガリガリと結界を引っ掻く奴や地面の下から潜り込めないかと掘り返す奴がいる。
結界は結界石を中心に球形に展開しているため地面を掘っても無駄であるのだが獣にそんな事が分かるはずもない。
「本当に結界が張られてるんだな」
向こうからの攻撃は防げているがこちらからどうやって攻撃して良いやら思い付かない。
ただ時間だけが過ぎていくなか、遠くの空が明滅し始めゴロゴロと雷鳴が聞こえ始めた。
(雷雲がこっちにくるのかな?)
ポツポツと音が聞こえ始めると周囲の草や土が濡れ始め、それに伴い雷鳴はどんどん近くなってくる。
時間と共に雨の激しさは増していき、結界の天井を見ると大きなビニール傘をさしているような感じで雨が流れている。外では狼達がずぶ濡れになりながらも獲物を仕留めようと結界の中を睨んでいる。
その様子を濡れる事のない結界の中から焚き火で暖をとりながら見ていたが突然状況に変化が現れた。
バリバリバリッ!ドッガァアアァアァーーーン!
突然大きな雷がすぐそばの木に落ち、立木を燃え上がらせたのだ。
結界の中にいたジンは感電する事はなかったが、落雷の物凄い音で耳鳴りがして何も聞こえなくなっていた。
キーーーーーーーン
「うぉっ!」
(ビックリした!あれ?こんなに近くに落ちたのに少しも感電しなかったな)
電気も通さない事に驚嘆しながら周囲を確認すると、結界の周りにいた狼が全て倒れていることが見て取れた。
(今の雷撃で全部感電死したのか?息を吹き返すかもしれないからこのまま様子見だな)
狼はもう残っていない様に見えたが、安全を優先させて回収は明日の朝する事にした。
雨はどんどん大粒になり激しさを増していく。
ジンは結界の中で寝転がったまま結界を流れ落ちる雨を眺めていたが、疲れと結界による安堵感でいつのまにか眠りに落ちてしまっていた。
121
あなたにおすすめの小説
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる