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第1章 転生
19話 宿の風呂
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ジンの腰には買ったばかりの刀があり、先程まで提げていた刀はアイテムボックスへと収納されていた。
先程状態異常が付いているのにも拘わらず刀を振ることができたのはスキルのおかげだろう。
それにしても攻撃速度低下50%・移動速度低下50%・命中率低下50%・防御率低下50%なんていう呪いのような効果がついているのが不思議でならないのだが、物理破壊耐性・魔法無効・攻撃力増加200%なんていう破格の効果がついた反動と考えればなんらおかしくない。
ガフォールの工房から出て歩き始めると日没を知らせる鐘が音が聞こえてきたので時間が下がってしまった事に気がつき歩くスピードを速め急いで冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに着いて扉を開けると依頼受付カウンターには日没前に戻ってきた冒険者が依頼完了の処理をしていたので薬草のアカホ80本とギルドタグを出してその後ろに並んだ。
前に並んだ冒険者は駆除の依頼だったのだろう、カウンターに出したギルドタグだけでクエスト」完了。すぐに終わったので前へと進みカウンターに採取してきた物を置いた。
「こんばんは、依頼が済んだので完了の確認をお願いします」
薬草とギルドタグを渡すとすぐに処理が終わり金貨8枚とギルドタグを手渡された。
「お疲れ様、金貨8枚とギルドタグをどうぞ。
服が傷んでいるようだけど、冒険者初日はどうだった?」
「北の森で魔狼に襲われて危なかったけど、なんとか倒せて戻ってこれました」
「ダンジョンの森の魔狼を倒したの?そういえばDランクの依頼でそんなのが会ったわ。
ちょっと待ってね」
そう言うとソフィーさんは依頼ボードに歩いて行って1枚のカードを持って帰ってきた。
「倒した後でも依頼が出ていれば事後承認って形で依頼完了になるのよ、その場合は高レベルの依頼でも問題ないのよ。もう一度ギルドタグを出して」と言われたので渡すと処理を始めた。
「本当だ、魔狼討伐が完了しているわね。倒せたから良かったけど、無茶しちゃダメよ。
もう少しギルドポイントがたまるとランクアップするから頑張ってね。
はい、これをどうぞ」
すごく心配そうな顔をしながらギルドタグと大金貨1枚を渡された。
俺の顔を見ながら心配そうな顔で言われると俺のことを少しは考えてくれる人がいるんだと思えて嬉しかった。
「ありがとうございます、次からは気をつけます」
「倒した魔狼は持って帰ってる? 持って帰ってたらあっちのカウンターに出すと買い取ってくれるわよ」
指さされた場所を見るとシズラー婆さんが刻みタバコをパチンコ玉ほどに丸めた物をキセルの火皿に入れて火をつけていた。
静かに息を吸い込みながら火を葉に行き渡らせ、そこからゆっくり三度ほど紫煙を燻らせると灰皿の上で羅宇(木製の部分)を指でトントンとして灰皿に灰を落とす。
その姿は様になっており貫禄を感じる。
「何か持って帰ったのかい、ここに早くお出し」
見ていた俺に気がついたのか、買取素材を確認するテーブルをトントンとした。
シズラー婆さんのいるテーブルまで歩いていきマジックバッグから頭が胴体からお別れした魔狼を取り出す。
「随分やっちまってるねぇ、こんなんじゃ皮は安くなっちまうよ。全部でいいところ大金貨1枚と金貨4枚だね。
それでよけりゃ買い取るけど、どうするかい?」
(こんな物でもそんなに高く買い取ってくれるんだ)
「買取でお願いします」
滅多刺しにして皮の価値を下げてしまった気まずさを表情に出したまま返事をした。
「すこし色をつけてあげたけど次はもっと綺麗に倒しておいで、そうすりゃ大金貨2枚で買い取ってあげるよ」
「婆さん、そりゃねーよ。この前俺が綺麗なやつ持って帰った時は大金貨1枚と金貨8枚だったじゃねーか」
「ふん!あたしゃ若い子に優しいのさ。お前さん達みたいなおっさん臭いのがそんなこと言ってると次はもっと買い叩くよ。大体お前が綺麗な獲物を持ってきたのを見たことがないがね」
(おっちゃん、それは藪蛇だよ)
「うっ! 勘弁してくれよ。」
そう言うとおっちゃんは首をすくめてホールのテーブルに向かって行った。
「ふん!」
シズラー婆さんと男のやりとりを見て笑いを堪える。
「なに見てんだい、終わったら早くいきな」
「ありがとうございました」
あわてて置かれた大金貨1枚と金貨3枚を受け取って依頼ボードに歩いて行く。
無造作に貼られた依頼の中から受けたい依頼を探し始める。
依頼レベルE 常時依頼項目 ゴブリンの討伐3体 自動記録討伐対象
報酬: 金貨1枚 大銀貨5枚
一つを選び、それをカウンターへ持って行きソフィーさんに見せた。
「ゴブリンは複数で行動するから気をつけてね、個体はそれほど強くないけど集団で来られたら大変よ」
「わかりました、よく見て沢山いたら逃げます」
魔狼で自分の未熟さがわかっているので、忠告を素直に受け入れて挨拶を済ますとギルドを後にした。
宿に戻るといつものように客で賑わっていたがお腹が空いていたので夕飯を食べた後お風呂に入ることにした。
食事の後銀貨5枚を渡して部屋に戻ろうとしているとメルさんに声をかけられた。
「ジン君、いつもお世話になるから少し大きい通りが見える部屋に変えておいたけどよかったかしら。
延長分から料金は1泊金貨1枚でいいわよ。お風呂の代金もサービスね。お弁当も言ってもらえれば無料で作るから遠慮せずに言ってね。部屋は階段を上がって右の突き当たりの202号室だから」
そう言ってお金を受け取らずに新しい部屋の鍵を渡してくれた。
「ありがとうございます。いいんですか、そんなにサービスしてもらうと居座っちゃいますよ」
「お母さんのお礼もしたいし、アンナもお兄ちゃんができたみたいで嬉しそうだから、長くいてもらったほうが私たち夫婦も嬉しいのよ」
「すみません。ありがたく使わせてもらいます」
新しい部屋は西側で部屋に入ると窓からは道が見えた。
早い時間であれば行き交う人々の姿が見えるのだろうがこの時間になると歩いている人はそれほどいない。
部屋の広さは今までの倍近く感じられ、ベッドもダブルベッドになっていたので寝相が悪くても落ちることはなさそうだ。
窓際のテーブルに付属した椅子で少し休憩し、一息つけたので風呂に行くことにした。
風呂場は庭の隅にある小屋の中に2つあり入るときは外に使用中の札をかけて中から鍵をかけるようになっている。
スライドドアを開けると棚があり籠が置いてあり、そこに服を脱いで浴室に入ると畳2枚分の湯船があってお湯が入っていた。
どうやってお湯を沸かしているのが不思議になったが寒かったのでとりあえず体を洗うと急いで湯船に浸かる。
湯船から周りを探すが風呂場には備え付けの石鹸やシャンプーの代わりになるものは置いていなかった。
きっと生活魔法のクリーンで汚れを落とせるのでその類のものは必要としていないのであろう。
湯船の端の方に沈められている箱の近くに行くと少し暖かかったので中を覗いてみると大きな石が入っていた。
よく見ても何ら変哲のない石だったのでこの風呂は焼き石を入れてお湯を沸かしているようだ。
後でわかったのだが、一定の時間ごとにアーロンさんが焼けた石を投入して追い焚きしているそうだ。
十分にあったまったので木綿のタオルで体を拭き、新しいパンツとTシャツに着替えて風呂を出た。
入り口の扉の使用中の札を外して扉を閉めているとメルさんとアンナちゃんが小屋の横の椅子に座って順番を待っていた。
「お風呂ぬるくなかった?」
「大丈夫です、あったかくて気持ちよかったですよ」
「じゃあ、そっちに入ろうかな。手前のお風呂に入ったの?」
「そうですよ。ここのお風呂は男湯と女湯に分けてないんですか?」
「お客さんの多くは男の人だから、分けていると効率が悪いのよ。だからどっちでも使えるように中からかけられる鍵をつけてるのよ」
「そうなんですか。お風呂が冷えると勿体無いのでどうぞ。あ、それから部屋、ありがとうございました。
広くてとても使いやすそうです」
「どういたしまして、喜んでもらえると嬉しいわ」
「お母さん早く入ろうよ~」
アンナちゃんがお風呂の催促をしている。
「はいはい。アンナちゃん、ちょっと待ってね。
それじゃあお風呂に入りますね、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
鍵を片手に部屋へ歩き始めた。お客さんが引き上げてしまったのか下の食堂は静かになっていた。
部屋に帰り着くとベッドにひっくり返り明日の予定を考えているうちに夜が更けていった。
先程状態異常が付いているのにも拘わらず刀を振ることができたのはスキルのおかげだろう。
それにしても攻撃速度低下50%・移動速度低下50%・命中率低下50%・防御率低下50%なんていう呪いのような効果がついているのが不思議でならないのだが、物理破壊耐性・魔法無効・攻撃力増加200%なんていう破格の効果がついた反動と考えればなんらおかしくない。
ガフォールの工房から出て歩き始めると日没を知らせる鐘が音が聞こえてきたので時間が下がってしまった事に気がつき歩くスピードを速め急いで冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに着いて扉を開けると依頼受付カウンターには日没前に戻ってきた冒険者が依頼完了の処理をしていたので薬草のアカホ80本とギルドタグを出してその後ろに並んだ。
前に並んだ冒険者は駆除の依頼だったのだろう、カウンターに出したギルドタグだけでクエスト」完了。すぐに終わったので前へと進みカウンターに採取してきた物を置いた。
「こんばんは、依頼が済んだので完了の確認をお願いします」
薬草とギルドタグを渡すとすぐに処理が終わり金貨8枚とギルドタグを手渡された。
「お疲れ様、金貨8枚とギルドタグをどうぞ。
服が傷んでいるようだけど、冒険者初日はどうだった?」
「北の森で魔狼に襲われて危なかったけど、なんとか倒せて戻ってこれました」
「ダンジョンの森の魔狼を倒したの?そういえばDランクの依頼でそんなのが会ったわ。
ちょっと待ってね」
そう言うとソフィーさんは依頼ボードに歩いて行って1枚のカードを持って帰ってきた。
「倒した後でも依頼が出ていれば事後承認って形で依頼完了になるのよ、その場合は高レベルの依頼でも問題ないのよ。もう一度ギルドタグを出して」と言われたので渡すと処理を始めた。
「本当だ、魔狼討伐が完了しているわね。倒せたから良かったけど、無茶しちゃダメよ。
もう少しギルドポイントがたまるとランクアップするから頑張ってね。
はい、これをどうぞ」
すごく心配そうな顔をしながらギルドタグと大金貨1枚を渡された。
俺の顔を見ながら心配そうな顔で言われると俺のことを少しは考えてくれる人がいるんだと思えて嬉しかった。
「ありがとうございます、次からは気をつけます」
「倒した魔狼は持って帰ってる? 持って帰ってたらあっちのカウンターに出すと買い取ってくれるわよ」
指さされた場所を見るとシズラー婆さんが刻みタバコをパチンコ玉ほどに丸めた物をキセルの火皿に入れて火をつけていた。
静かに息を吸い込みながら火を葉に行き渡らせ、そこからゆっくり三度ほど紫煙を燻らせると灰皿の上で羅宇(木製の部分)を指でトントンとして灰皿に灰を落とす。
その姿は様になっており貫禄を感じる。
「何か持って帰ったのかい、ここに早くお出し」
見ていた俺に気がついたのか、買取素材を確認するテーブルをトントンとした。
シズラー婆さんのいるテーブルまで歩いていきマジックバッグから頭が胴体からお別れした魔狼を取り出す。
「随分やっちまってるねぇ、こんなんじゃ皮は安くなっちまうよ。全部でいいところ大金貨1枚と金貨4枚だね。
それでよけりゃ買い取るけど、どうするかい?」
(こんな物でもそんなに高く買い取ってくれるんだ)
「買取でお願いします」
滅多刺しにして皮の価値を下げてしまった気まずさを表情に出したまま返事をした。
「すこし色をつけてあげたけど次はもっと綺麗に倒しておいで、そうすりゃ大金貨2枚で買い取ってあげるよ」
「婆さん、そりゃねーよ。この前俺が綺麗なやつ持って帰った時は大金貨1枚と金貨8枚だったじゃねーか」
「ふん!あたしゃ若い子に優しいのさ。お前さん達みたいなおっさん臭いのがそんなこと言ってると次はもっと買い叩くよ。大体お前が綺麗な獲物を持ってきたのを見たことがないがね」
(おっちゃん、それは藪蛇だよ)
「うっ! 勘弁してくれよ。」
そう言うとおっちゃんは首をすくめてホールのテーブルに向かって行った。
「ふん!」
シズラー婆さんと男のやりとりを見て笑いを堪える。
「なに見てんだい、終わったら早くいきな」
「ありがとうございました」
あわてて置かれた大金貨1枚と金貨3枚を受け取って依頼ボードに歩いて行く。
無造作に貼られた依頼の中から受けたい依頼を探し始める。
依頼レベルE 常時依頼項目 ゴブリンの討伐3体 自動記録討伐対象
報酬: 金貨1枚 大銀貨5枚
一つを選び、それをカウンターへ持って行きソフィーさんに見せた。
「ゴブリンは複数で行動するから気をつけてね、個体はそれほど強くないけど集団で来られたら大変よ」
「わかりました、よく見て沢山いたら逃げます」
魔狼で自分の未熟さがわかっているので、忠告を素直に受け入れて挨拶を済ますとギルドを後にした。
宿に戻るといつものように客で賑わっていたがお腹が空いていたので夕飯を食べた後お風呂に入ることにした。
食事の後銀貨5枚を渡して部屋に戻ろうとしているとメルさんに声をかけられた。
「ジン君、いつもお世話になるから少し大きい通りが見える部屋に変えておいたけどよかったかしら。
延長分から料金は1泊金貨1枚でいいわよ。お風呂の代金もサービスね。お弁当も言ってもらえれば無料で作るから遠慮せずに言ってね。部屋は階段を上がって右の突き当たりの202号室だから」
そう言ってお金を受け取らずに新しい部屋の鍵を渡してくれた。
「ありがとうございます。いいんですか、そんなにサービスしてもらうと居座っちゃいますよ」
「お母さんのお礼もしたいし、アンナもお兄ちゃんができたみたいで嬉しそうだから、長くいてもらったほうが私たち夫婦も嬉しいのよ」
「すみません。ありがたく使わせてもらいます」
新しい部屋は西側で部屋に入ると窓からは道が見えた。
早い時間であれば行き交う人々の姿が見えるのだろうがこの時間になると歩いている人はそれほどいない。
部屋の広さは今までの倍近く感じられ、ベッドもダブルベッドになっていたので寝相が悪くても落ちることはなさそうだ。
窓際のテーブルに付属した椅子で少し休憩し、一息つけたので風呂に行くことにした。
風呂場は庭の隅にある小屋の中に2つあり入るときは外に使用中の札をかけて中から鍵をかけるようになっている。
スライドドアを開けると棚があり籠が置いてあり、そこに服を脱いで浴室に入ると畳2枚分の湯船があってお湯が入っていた。
どうやってお湯を沸かしているのが不思議になったが寒かったのでとりあえず体を洗うと急いで湯船に浸かる。
湯船から周りを探すが風呂場には備え付けの石鹸やシャンプーの代わりになるものは置いていなかった。
きっと生活魔法のクリーンで汚れを落とせるのでその類のものは必要としていないのであろう。
湯船の端の方に沈められている箱の近くに行くと少し暖かかったので中を覗いてみると大きな石が入っていた。
よく見ても何ら変哲のない石だったのでこの風呂は焼き石を入れてお湯を沸かしているようだ。
後でわかったのだが、一定の時間ごとにアーロンさんが焼けた石を投入して追い焚きしているそうだ。
十分にあったまったので木綿のタオルで体を拭き、新しいパンツとTシャツに着替えて風呂を出た。
入り口の扉の使用中の札を外して扉を閉めているとメルさんとアンナちゃんが小屋の横の椅子に座って順番を待っていた。
「お風呂ぬるくなかった?」
「大丈夫です、あったかくて気持ちよかったですよ」
「じゃあ、そっちに入ろうかな。手前のお風呂に入ったの?」
「そうですよ。ここのお風呂は男湯と女湯に分けてないんですか?」
「お客さんの多くは男の人だから、分けていると効率が悪いのよ。だからどっちでも使えるように中からかけられる鍵をつけてるのよ」
「そうなんですか。お風呂が冷えると勿体無いのでどうぞ。あ、それから部屋、ありがとうございました。
広くてとても使いやすそうです」
「どういたしまして、喜んでもらえると嬉しいわ」
「お母さん早く入ろうよ~」
アンナちゃんがお風呂の催促をしている。
「はいはい。アンナちゃん、ちょっと待ってね。
それじゃあお風呂に入りますね、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
鍵を片手に部屋へ歩き始めた。お客さんが引き上げてしまったのか下の食堂は静かになっていた。
部屋に帰り着くとベッドにひっくり返り明日の予定を考えているうちに夜が更けていった。
応援ありがとうございます!
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