転生者ジンの異世界冒険譚(旧作品名:七天冒険譚 異世界冒険者 ジン!)

夏夢唯

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第1章 転生

21話 魔道具購入

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 雑貨屋を出るとその足で魔道具屋へと歩いていく。
5分ほど歩くと先日来た魔道具屋に着いたのでドアを開けて中に入っていった。
前回来た時には店内は暗かったのだが、今日はマジックランプが点けられ店内は隅々まで明るく照らされている。

「こんにちはー」

「はーい、いらっしゃいませぇ」

店の奥から前回と同じ、いかにも優しい雑貨屋のおばちゃんといった風貌の女性が出て来た。

「おやぁ、この前朝早くに来てくれた子じゃないか。今日は何か欲しいものがあるのかい?」

「はい、寝袋とかテントのマジックアイテム魔道具がないか探しているんですが、ありますか」

「テントや寝袋といったマジックアイテム魔道具はこのフロアにはないから下に行こうかねぇ。
その前に自己紹介をしとこうかねぇ、私はこの店のオーナーのヒヨリ。年齢は秘密だよぉ」

「ワシ・・いや、僕はジン。なりたての冒険者で15歳です」

「15歳かい、若いねぇ。それじゃあこっちだよぉ」

そう言うと俺を手招きして店の奥に進んで行き、地下へ降りる階段の手前で奥の倉庫に向かって声をかけた。

「なっちゃん、ちょっと下に降りるから店番を頼んだよぉ」

「はーい、すぐに行きます」奥から女の子の声が聞こえてきた。

階段の途中にあるマジックランプを点けながら「階段が古いから足元に気をつけてねぇ」と気を使ってくれた。
地下に着くと、よほど重要なアイテムがしまわれているのであろうか、魔法錠のかかったドアを2つほど開けた先の部屋へと招き入れられた。
部屋の広さは40畳ほどもあり、6メートル以上ありそうな壁は備え付けの棚や引き出しで覆われて梯子が立てかけられているが、それ以外は入り口付近に置いてある畳1枚ほどの机が一つしかない妙な空間であった。

「欲しいのはテントだったかねぇ、その歳だと冒険者になったばかりで買えないと思うけど、変なまがい物をつかまされないように本物のマジックアイテム見ておくのもいいと思うから見せてあげましょうかねぇ」

壁に備え付けになっている扉を1つ開けると、その中にあるバッグを取り出して部屋の中央へ歩いて行った。

「いくつかマジックテントを見せてあげるからこっちにおいで」

と手招きをするので歩いて行くと、バッグの中からテントを1つ取り出した。
それは、地球でよく見かけるロッジ型と呼ばれる畳ほどの大きさのテントであった。

「びっくりするから中に入ってごらん」

促されるままにテントの中に入ると、その広さと装備の豪華さに驚いた。

「うわっ!なんですかこれは」

テントの中は外から見た広さではなく、20畳ほどもあり、ソファーや家具、そしてキッチンやシャワールームまでもが装備されていたのだ。
驚いていると後ろからヒヨリさんが入ってきた。

「凄いでしょ、これは今は無くなってしまった国の王族が使っていたマジックテントなんだよぉ。
結界石が付いていてSランクのケルベロスやヒュドラの攻撃にも耐えたって話だよぉ。
売主から預かっているんだけど、あまりに高すぎるから売れなくてねぇ」

「でしょうねぇ、これは豪華すぎます。
冒険者で買える価格で少人数が野営に使えるサイズのマジックテントはありませんか?」

「いくつかあるから、見せてあげようかね」

豪華なマジックテントから出ると、ヒヨリさんは今まで出していたテントをマジックバッグに収納して、2つのマジックテントを並べて出した。
大きさは三角テントと言われる小さな物で、中に入るには姿勢を低くしないと入れないタイプであった。

「中に入ってもいいですか?」

「両方とも入ってごらん、マジックテントは中を見ないと選べないからね」

その言葉を聞いて左のテントの中に潜り込んでいくと、やはり中は空間拡張されて12畳ほどあり奥にはクローゼットとベッドが2つが備え付けられていた。
もう一つはどうなっているのだろうと中に入ると空間拡張で6畳ほどの広さの板張りにはなっているのだが他には何もなくガランとした物だった。

  (下手に物を置いていないから、使いやすいかもしれないな。
   これが安かったら買っちゃおうかな)

そんな事を考えながらテントの外に出ると、ヒヨリさんが話しかけてきた。

「どうだい、マジックテントは色々な仕様があるからねぇ。上を見ればきりがないから身の丈にあった物を勧めるよぉ」

「そうですね、ピンからキリって感じですかね。
それで、これっていくらですか?」

「最初のマジックテントがミスリル大銀貨2枚、こっちの中の広い方が大白金貨1枚と白金貨8枚、最後に入ったのが白金貨1枚だよぉ」

「え、最後のは中は少し狭いしがらんとしていると思いますけど、なんでこんなに安いんですか?」

「最後のマジックテントは他のと同じように温度調整機能や防臭防汚機能は正常に機能するんだけど、魔獣忌避効果が付いていないのと結界石が壊れて無くなっているから安全な場所でしか使えないのよぉ」

  (それなら自前の結界石があるから問題ないな。
   でも、もし結界石がついていたらいくらするんだろう)

「そんな理由でその値段なんですね。もし結界石が付いていたらいくらくらいするんですか?」

「そうだねぇ~、元々このテントには1センチくらいの結界石がついていたんだけど、それだと大白金貨1枚と白金貨1枚かなぁ」

  (うわっ、結界石ってすごく高いんだな。
   でも1センチで大白金貨1枚だとすると、俺の持っている直径5センチの結界石って
   物凄く高価なんじゃないのかな?)

「あの、全然関係ないんですけど、もし直径5センチの結界石があったらいくらくらいになりますか?」

「面白いことを聞く子だねぇ~、でももしその大きさの結界石があればミスリル大銀貨6枚以上の価値はするねぇ。
その大きさならちょっとした町の防御結界に使えるからねぇ。
でも、なんでそんなことを聞くのかい?」

「手で握れるくらいのだったらいくらくらいするのかな~って、ただの興味本位です。ハハハ」

「アハハ、本当に面白い子だねぇ。せっかくここに連れてきたんだ、他に見たいマジックアイテムはないかい?」

どうやらジンはヒヨリに気に入られたようである。
なぜなら初対面にもかかわらずヒヨリがマジックアイテムの実物を見せることなど殆ど無かったのだから。

「えーと、そうですね。遠くのものが近くに見えるマジックアイテムはありませんか?」

「ちょうどいいのがあるよぉ」

そう言うとヒヨリはさっきとは違う壁の引き出しの中からポーチを取り出し、その中から箱型の物を取り出すとジンに手渡した。
手渡された物はティッシュボックスほどの大きさの箱の形をしており、片側に両目で覗けるほどの大きさの水晶を加工した板がはめ込まれているだけで他の面は魔法陣のような模様や古代文字が彫られていた。

「それに魔力を少し込めて覗いてごらん、覗いた先の物が大きく見えるはずだよぉ。
流す魔力の量を増やすともっと大きく見えるようになるから、魔力の多い者が使うと随分遠くまで見えるって話だねぇ」

言われた通りに少し魔力を込めて反対側の引き出しの方を見ると拡大された取っ手が見えたのでもう少し魔力を込めていくとどんどん拡大されていくのが分かった。

「いいですねえ、これはいくらですか?」

「それは伝説の錬金術師リーン・ドウの名作だから、売るとしたらちょっと高いけど大白金貨1枚と白金貨1枚だねぇ」

「それじゃあ、さっきのテントと合わせると大白金貨1枚と白金貨2枚ですね」

「ん? もしかして本当に買うつもりかい」

ちょっとびっくりしたのか目を大きくして尋ねてきた。

「はい、お爺さんに貰ったアイテムが思った以上に高く売れたのでその価格ならなんとか買えそうです。
僕に売ってもらえますか?」

「そうかい、それなら安くしてあげる事は出来ないけどオマケを付けてあげようかねぇ」

腰に付けたポーチに手を突っ込むと徐に何かを取り出した。

「これに魔力を貯めておいて起動させるとはめ込まれた宝石から眩しい光を放って目眩ができるというマジックリングだよぉ、冒険者になりたてならいざという時に役に立つかもしれないから、これをオマケに付けてあげるよぉ」

「ありがとうございます。それじゃあこれを」

マジックバッグから出すふりをしてアイテムボックスの中から大白金貨1枚と白金貨2枚を取り出してヒヨリさんに手渡した。

「まいどありぃ、テントのたたみ方は簡単で人が中に入っていない状態で入り口の横にあるこの赤い紐を引けば、ほらこの通り」

ヒヨリが紐を引くと直径10センチ、長さ50センチほどのバッグに変化した。

「広げるときもその袋についている赤い紐を引っ張ればいいからねぇ。
テントはバッグに入らないだろうから気を付けて持ってお行き、他のマジックアイテムも取られないようにするんだよぉ」

テーブルの上に置かれたマジックリングを指にはめると自動的に指の大きさにフィットした。

驚いた俺の顔を見てヒヨリさんは補足してくれた。

「自動サイズ補正機能つきだよぉ」

双眼鏡とテントをマジックバッグに入れるとちょっと驚いたように目を見開いた。

「マジックバッグ持ちかい、若いのに良い物を持っているようだねぇ。でも、他の人に知られないようにするんだよ、殺しても奪いたいってやつはごまんといるからねぇ」

「はい、ありがとうございます」

地下の部屋を出て1階に戻るとヒヨリさんにお礼の挨拶をした。

「今日はとてもいいものを売っていただいてありがとうございました、感謝します」

「いえいえ、こちらこそこれからも宜しくお願いしますよぉ、これからも長い付き合いになりそうだし」

「何かあればまたお願いしますね」

魔道具屋を出たジンは依頼をこなす為に町の外へと歩き始めるのであった。
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