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第1章 転生
10話 市街探訪
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昨夜は寝心地のいいベッドだったこともあり、久しぶりにぐっすり寝ることができた。
そのおかげで目覚めはスッキリしていて、とても気持ちの良い朝を迎えている。
濡らしたタオルで体を拭いて新しい服に着替えるとサンダルを履き、マジックバッグに荷物を全部しまうと肩にかけて部屋を出る。
階段を降りると泊まっていた冒険者達の殆どが既に宿を出てしまっていたようで、食堂に残っていたのは商人らしい2人組と、背は低いがやたらと腕周りが太くてごつい髭親父が1人しかいなかった。
後でわかるのだが、このオヤジは毎日朝食を食べにくる常連の鍛冶師であった。
「おはよう! 随分とゆっくりなのね、他の冒険者は7時前にはギルドへ向かったわよ。 ここのギルドの依頼は早い者勝ちで取り合いになるから、良い依頼を受けたい冒険者はドアの開く7時前には並んで待つみたいね」」
「そうなんですか、僕はまだ冒険者登録もしていないので焦って早く出る必要がないんですよ」
「それならゆっくり朝食を食べられるわね、朝は焼いた卵と煮込んだ豆のプレートセットか昨夜の残り物があるけどどっちにする?」
「プレートセットで」
女将さんが朝食のオーダーを伝えて戻ってくるとその後ろから娘さんが食事を持ってやってきた。
「昨日はバタバタしていてごめんなさいね、急に団体が入ったのよ。
そういえばまだ名前を言ってなかったわね。私はメル、この子はうちの看板娘のアンナよ」
「今年で7歳になるの」
アンナちゃんが朝食のプレートを置きながら、にっこりと微笑んだ。
「そういえば、昨日言い忘れましたけど、冒険者ギルドのベルンハルトさんに教えられてここに来ました」
「あら、お父さんの知り合いなの?言ってくれればもう少し安くしたのに」
「おにいちゃん、おじいちゃんの友達?」
「えぇぇぇーー!
親子なんですか、全然似てないですよね」
(それにしても、ベルンハルトさんってこんな大きな娘さんや可愛いお孫さんがいるんだ。
しかし、自分の娘の店を紹介するとは、なんて商売上手なんだ!)
「お父さんにあまり似ていないでしょ、私はお母さん似なのよ」
メルは話を続けた。
「いつも怖い顔をしているけどお母さんの体が不自由になるまではよく笑う人だったのよ。あまり怖がらないであげてね」
「そんなにお母さんの怪我はひどかったんですか」
「父から聞いていたの?
そうね…。あまり他人に話すような内容じゃないんだけど、聞いてくれる?
良い治療の方法を知っている人を紹介してくれると嬉しいんだけど、症状を知らないと治療方法もわからないと思うから教えるわね。
お母さんの症状は片足は膝から下が無くてもう一方は腿の半分くらいから無いわ。それに、片腕は完全になくなってるし顔の片側にも大きな傷が残っているのよ。
アンナが怖がるからって言って、会いに行っても家に入れてくれないの。
アンナも大丈夫だって言ってくれるんだけどお母さんは自分を見てびっくりされるのが嫌だって言って頑なに玄関を開けてくれないのよ」
「そうなんですか」
(ポーションで治るって言ってたけど、そんな大怪我が治るんだろうか)
シズラー婆さんからひどい怪我をしたと聞いていたが、そこまでひどいとは思ってなかった。
メルの話を聞いていると店の入り口が開き、男が入ってきた。
「よう、やっぱりここに泊まったんだな」
「あ、お父さん。こんな朝早くからどうしたの?」
現れたのはベルンハルトだった、その大きな体の後ろには隠れるようにもう一人誰かがいるようだ。
「こいつがお礼をしたいって言うから、もしかしてここに泊まってるんじゃねーかと思って連れて来たんだ」
ベルンハルトの後から現れた女性の姿を見たアンナは驚きのあまり固まってしまう。
「お母さん? 本当にお母さんなの?!」
手足が欠損して顔にもひどい怪我をしていたはずの母親が何事もなかったようにそこに立っていたのだから驚かないはずがない。
「メルちゃんお久しぶり、アンナちゃんも大きくなったわね。
お母さんの小さい時にそっくり。
おばあちゃんよ、分かるかしら」
アンナは感極まって泣き出しそうな母と、お祖母ちゃんだと言った母によく似た女性の顔をキョロキョロと交互に見ていた。
「本当にお母さんなの?」
一体何がどうなっているのか理解ができないでいるメルにベルンハルトが話しかける。
「前に母さんの怪我を治すために探しているめちゃくちゃ高価なポーションがあるって話をした事があったよな。
それが昨日手に入ったんだ。珍しい物で使った奴を見た事が無かったからその効果の噂は半信半疑だったんだが、藁にもすがる思いで使ってみればこのとおりだ」
メルは説明されても信じられないような話が、目の前の母を見て本当の事だと分かった。
「君がジン君? ポーション本当にありがとう」
カレンがジンにお礼を言った。
「ベルンハルトさんの奥さんすごい美人なんですね。凄腕の冒険者って聞いていたからもっとゴツイ人だと思ってました」
「あら、やだ照れるじゃない」
美女と野獣っていうのはこんな夫婦のことだという見本のようだった。
「でも、再生できてよかったですね、結構ひどい状況だと聞いていましたから」
「そうね、 意識が戻って自分の状況が分かった時は人生を諦めたわ。
旦那が励ましてくれなかったら何年も耐えられなかったと思うわね。
でも頑張ってよかった、家の外に出られただけでも楽しいのよ。
これで元の生活に戻れるわ」
「それから、これを受け取ってくれ。
大白金貨2枚と白金貨を5枚入れてある」
ベルンハルトがポーチの中から革の袋を取り出してジンに差し出した。
「何ですか、これ?」
「ポーションの代金だ。
昨日はポーションが手に入ると分かって舞い上がってしまったが、ただなんて事は冒険者としての矜持が許せない。それに、ギルドマスターが冒険者から無理やり取り上げたとか、賄賂を受け取ったといった噂が立つのもまずいからな。
すまんが、受け取ってくれ」
「そうですか。
悪い噂が立つのも困りますから、ありがたく受け取らせてもらいます」
「ジン君、そんな格好をしているところをみると、冒険者なの?」
「いえ、まだ冒険者じゃないです」
「そうなの。私はリハビリが済んだらギルドで新人のお世話でもしようと思っているから、困ったことがあったらいらっしゃい。その時は相談に乗るわ」
「ありがとうございます、すぐにでも冒険者の登録をしようと思っているので困ったことがあったらお願いします。
家族で積もる話もあるでしょうから、俺は出かけますね」
そう言うとジンは席を立ち、外へ出かけた。
今日はまず教会に行って神様にお祈りをして、そのあとは情報収集の予定だ。
教会は金の麦亭の前を通る旧街道沿いを北西方向に1km ほど行った場所にあると聞いたので町の風景を楽しみながら歩いていた。
すると道沿いにある1軒の魔道具屋の看板がジンの目に入った。
(時間はたくさんあるから、ちょっとのぞいてみよう)
どんなものが置いてあるんだろうとワクワクしながら店の扉を開いて中に入った。
「こんにちは-」
中は思った以上に薄暗く、人の気配がしない。
(普通入り口の見えるところに店番がいるだろ!
入り口開けっ放しで誰もいないなんて空き巣に入られたら取られ放題だぞ。
不用心にも程がある!)
「誰かいませんかー」
ギイィ、パタン!
店の奥からドアの開く音が聞こえた。やっと誰か出てきたようだ。
「いらっしゃいませ~。
あら、店が暗いね、よいしょっと」
いかにも雑貨屋のおばちゃんという感じの人が出てきて店のマジックランプをつけた。
「朝早くから来るお客さんなんて珍しいからねぇ、まだ開けたばかりだったんだよぉ。
お兄さん冒険者かい、この辺で見ない子だねぇ」
「商品を見たいのですが、良いですか」
「暇だから気が済むまで見ておゆき、どこかの宿に泊まっているんだろぉ?
町の中ならサービスで配達もしているからねぇ。
赤い札がついているのは割引して安くなってるからお買い得だよぉ」
在庫処分で安くなっているのかもしれない、面白いものがあったら買って宿には配達してもらおう。
店の商品は地球で言う家電や調理器具のような物が並んでいて、見ていて面白かったがこの階には欲しい物はなかったので店を出ることにした。
「ありがとうございました、面白そうなものがたくさんありますね。
上の階にも色々あるんでしょ、また今度ゆっくり見に来ます」
昼からの予定もあるので早めに見物を切り上げて魔道具屋を後にした。
そのおかげで目覚めはスッキリしていて、とても気持ちの良い朝を迎えている。
濡らしたタオルで体を拭いて新しい服に着替えるとサンダルを履き、マジックバッグに荷物を全部しまうと肩にかけて部屋を出る。
階段を降りると泊まっていた冒険者達の殆どが既に宿を出てしまっていたようで、食堂に残っていたのは商人らしい2人組と、背は低いがやたらと腕周りが太くてごつい髭親父が1人しかいなかった。
後でわかるのだが、このオヤジは毎日朝食を食べにくる常連の鍛冶師であった。
「おはよう! 随分とゆっくりなのね、他の冒険者は7時前にはギルドへ向かったわよ。 ここのギルドの依頼は早い者勝ちで取り合いになるから、良い依頼を受けたい冒険者はドアの開く7時前には並んで待つみたいね」」
「そうなんですか、僕はまだ冒険者登録もしていないので焦って早く出る必要がないんですよ」
「それならゆっくり朝食を食べられるわね、朝は焼いた卵と煮込んだ豆のプレートセットか昨夜の残り物があるけどどっちにする?」
「プレートセットで」
女将さんが朝食のオーダーを伝えて戻ってくるとその後ろから娘さんが食事を持ってやってきた。
「昨日はバタバタしていてごめんなさいね、急に団体が入ったのよ。
そういえばまだ名前を言ってなかったわね。私はメル、この子はうちの看板娘のアンナよ」
「今年で7歳になるの」
アンナちゃんが朝食のプレートを置きながら、にっこりと微笑んだ。
「そういえば、昨日言い忘れましたけど、冒険者ギルドのベルンハルトさんに教えられてここに来ました」
「あら、お父さんの知り合いなの?言ってくれればもう少し安くしたのに」
「おにいちゃん、おじいちゃんの友達?」
「えぇぇぇーー!
親子なんですか、全然似てないですよね」
(それにしても、ベルンハルトさんってこんな大きな娘さんや可愛いお孫さんがいるんだ。
しかし、自分の娘の店を紹介するとは、なんて商売上手なんだ!)
「お父さんにあまり似ていないでしょ、私はお母さん似なのよ」
メルは話を続けた。
「いつも怖い顔をしているけどお母さんの体が不自由になるまではよく笑う人だったのよ。あまり怖がらないであげてね」
「そんなにお母さんの怪我はひどかったんですか」
「父から聞いていたの?
そうね…。あまり他人に話すような内容じゃないんだけど、聞いてくれる?
良い治療の方法を知っている人を紹介してくれると嬉しいんだけど、症状を知らないと治療方法もわからないと思うから教えるわね。
お母さんの症状は片足は膝から下が無くてもう一方は腿の半分くらいから無いわ。それに、片腕は完全になくなってるし顔の片側にも大きな傷が残っているのよ。
アンナが怖がるからって言って、会いに行っても家に入れてくれないの。
アンナも大丈夫だって言ってくれるんだけどお母さんは自分を見てびっくりされるのが嫌だって言って頑なに玄関を開けてくれないのよ」
「そうなんですか」
(ポーションで治るって言ってたけど、そんな大怪我が治るんだろうか)
シズラー婆さんからひどい怪我をしたと聞いていたが、そこまでひどいとは思ってなかった。
メルの話を聞いていると店の入り口が開き、男が入ってきた。
「よう、やっぱりここに泊まったんだな」
「あ、お父さん。こんな朝早くからどうしたの?」
現れたのはベルンハルトだった、その大きな体の後ろには隠れるようにもう一人誰かがいるようだ。
「こいつがお礼をしたいって言うから、もしかしてここに泊まってるんじゃねーかと思って連れて来たんだ」
ベルンハルトの後から現れた女性の姿を見たアンナは驚きのあまり固まってしまう。
「お母さん? 本当にお母さんなの?!」
手足が欠損して顔にもひどい怪我をしていたはずの母親が何事もなかったようにそこに立っていたのだから驚かないはずがない。
「メルちゃんお久しぶり、アンナちゃんも大きくなったわね。
お母さんの小さい時にそっくり。
おばあちゃんよ、分かるかしら」
アンナは感極まって泣き出しそうな母と、お祖母ちゃんだと言った母によく似た女性の顔をキョロキョロと交互に見ていた。
「本当にお母さんなの?」
一体何がどうなっているのか理解ができないでいるメルにベルンハルトが話しかける。
「前に母さんの怪我を治すために探しているめちゃくちゃ高価なポーションがあるって話をした事があったよな。
それが昨日手に入ったんだ。珍しい物で使った奴を見た事が無かったからその効果の噂は半信半疑だったんだが、藁にもすがる思いで使ってみればこのとおりだ」
メルは説明されても信じられないような話が、目の前の母を見て本当の事だと分かった。
「君がジン君? ポーション本当にありがとう」
カレンがジンにお礼を言った。
「ベルンハルトさんの奥さんすごい美人なんですね。凄腕の冒険者って聞いていたからもっとゴツイ人だと思ってました」
「あら、やだ照れるじゃない」
美女と野獣っていうのはこんな夫婦のことだという見本のようだった。
「でも、再生できてよかったですね、結構ひどい状況だと聞いていましたから」
「そうね、 意識が戻って自分の状況が分かった時は人生を諦めたわ。
旦那が励ましてくれなかったら何年も耐えられなかったと思うわね。
でも頑張ってよかった、家の外に出られただけでも楽しいのよ。
これで元の生活に戻れるわ」
「それから、これを受け取ってくれ。
大白金貨2枚と白金貨を5枚入れてある」
ベルンハルトがポーチの中から革の袋を取り出してジンに差し出した。
「何ですか、これ?」
「ポーションの代金だ。
昨日はポーションが手に入ると分かって舞い上がってしまったが、ただなんて事は冒険者としての矜持が許せない。それに、ギルドマスターが冒険者から無理やり取り上げたとか、賄賂を受け取ったといった噂が立つのもまずいからな。
すまんが、受け取ってくれ」
「そうですか。
悪い噂が立つのも困りますから、ありがたく受け取らせてもらいます」
「ジン君、そんな格好をしているところをみると、冒険者なの?」
「いえ、まだ冒険者じゃないです」
「そうなの。私はリハビリが済んだらギルドで新人のお世話でもしようと思っているから、困ったことがあったらいらっしゃい。その時は相談に乗るわ」
「ありがとうございます、すぐにでも冒険者の登録をしようと思っているので困ったことがあったらお願いします。
家族で積もる話もあるでしょうから、俺は出かけますね」
そう言うとジンは席を立ち、外へ出かけた。
今日はまず教会に行って神様にお祈りをして、そのあとは情報収集の予定だ。
教会は金の麦亭の前を通る旧街道沿いを北西方向に1km ほど行った場所にあると聞いたので町の風景を楽しみながら歩いていた。
すると道沿いにある1軒の魔道具屋の看板がジンの目に入った。
(時間はたくさんあるから、ちょっとのぞいてみよう)
どんなものが置いてあるんだろうとワクワクしながら店の扉を開いて中に入った。
「こんにちは-」
中は思った以上に薄暗く、人の気配がしない。
(普通入り口の見えるところに店番がいるだろ!
入り口開けっ放しで誰もいないなんて空き巣に入られたら取られ放題だぞ。
不用心にも程がある!)
「誰かいませんかー」
ギイィ、パタン!
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「いらっしゃいませ~。
あら、店が暗いね、よいしょっと」
いかにも雑貨屋のおばちゃんという感じの人が出てきて店のマジックランプをつけた。
「朝早くから来るお客さんなんて珍しいからねぇ、まだ開けたばかりだったんだよぉ。
お兄さん冒険者かい、この辺で見ない子だねぇ」
「商品を見たいのですが、良いですか」
「暇だから気が済むまで見ておゆき、どこかの宿に泊まっているんだろぉ?
町の中ならサービスで配達もしているからねぇ。
赤い札がついているのは割引して安くなってるからお買い得だよぉ」
在庫処分で安くなっているのかもしれない、面白いものがあったら買って宿には配達してもらおう。
店の商品は地球で言う家電や調理器具のような物が並んでいて、見ていて面白かったがこの階には欲しい物はなかったので店を出ることにした。
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