転生者ジンの異世界冒険譚(旧作品名:七天冒険譚 異世界冒険者 ジン!)

夏夢唯

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第1章 転生

37話 殲滅によるレベルアップ

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 ラージカミカゼアント殲滅後、ジンたちはアラバスタに滞在して町の警護を続けていたのだが、少し困ったことが起きていた。
今までと同じように物に触れると酷いことになるのだ。
それに気がついたのはアラバスタに引き返した次の日、半壊してしまった住居にラージカミカゼアントが残っていないか調査している時だった。

「ジン、昨日調査隊が調べたんだからもういないと思うが、一応確認しておいてくれ」

「わかりました、怪しいところは確認しておきます」

  (この壊れかけた戸の後ろなんて怪しいよな)

ドカッ!バキッ!

「ええぇーーー!」

「なんだ、どうした」

「いえ、開けようとしたドアがスッカスカで軽すぎて壊れちゃいました」

「どれだ」

引き剥がしてしまった大きなドアを発泡スチロールでも持っているように片手で渡すとベルンハルトもそれを片手で受け取ろうとした。

「うぉ、ぐぬぬぬぬ!
はぁはぁはぁ。あぶねえ、落とすところだったぞ。
めちゃくちゃ重いじゃねえか。」

ベルンハルトは両手で持ち直してジンに扉を返すとジンは再び片手で受け取った。

「何を冗談言ってるんですか、ほらこんなに軽いですよ」

そんな様子を見てベルンハルトは気がついた。

「ジン、昨日何匹くらい倒したんだ?」

実際の数はわかっているのだが、変に思われないように知らないふりをした。

「わかりません、ファイヤートルネードに次から次へと吸い込まれていったので、相当な数だと思います」

「それだ、後で見てみろ。大幅にレベルが上がっているはずだ。それと同時に何かのスキルを手に入れたんだろう。
力の配分を練習しないと、とんでもない事になるぞ」

「なんとかならないか練習してみます」

「そうだな、俺が調査している間お前は力加減の練習をしていろ」

ベルンハルトが隣の家の調査に行ったのを良いタイミングだと思いレイに相談してみる。

  (力加減って言ってもな~、こんな時のレイ頼り)

『レイ、力が強すぎるようだから調整できないか』

『新しく得たスキルの中に【制限リミット】というものがあります、これを使えば任意の値で実行ステータス値を調整できます』

  (新しいスキルも増えていたんだ、そういえばステータスを見ていなかったな)

ステータスを表示させると次のようになっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】  ジン・オキタ
【年齢】  15
【種族】  ヒューマン
【称号】  ルーキー冒険者
【レベル】             97
【HP】     28783/28783
【MP】   103390/103390
【STR(力)】        9893
【AGI(敏捷性)】      8099
【CON(体力)】       8908
【INT(知能)】       7589
【DEX(器用)】       7800
【LUC(運)】          80
【状態】              正常
【魔法】      火魔法(全属性適応)
【スキル】
  威圧 鑑定Lv5  異常耐性Lv6 
  身体強化Lv3 身体能力加速Lv3
  剣術(居合・二刀) 格闘術 投擲術    
  気配感知 気配遮断 思考加速 Lv2
  短距離転移Lv2 魔力操作 魔法障壁
【ユニークスキル】
  偽装LvMAX アイテムボックス∞
  自動回復Lv7 ナビゲーターLv3
  マップLv3 制限 魔法創造 
【加護】創造神の加護 エンデ主神の加護
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  (すごい事になっているな、レベルが97になっている)

ナビゲーターのレベルが上がっていたのでナビゲーターLv3と出ている場所をタッチすると説明が出てきた。

ナビゲーターLv3:鑑定・分析・解析・看破 データベース機能 スキルとの連携機能
          チュートリアル機能 マップとの連携機能 

今回のレベルアップのどこかでスキルが変化したのであろう。
他にもスキルレベルが上がったものもあったが能力が強化されているだけで特に新しい機能が付いているものは無かった。

『これだと余程制限をかけないと酷いことになってしまうな』

『そうですね、同じレベルのヒューマンに合わすこともできますが、どうしますか』

『10%にしておこう』

『リミット10%に設定しました』

『ありがとう、それからレベルアップの報告を止めていたけど、再開してくれ』

『了解しました』

『ナビゲーターの機能の中に看破というのがあるけど、これは何?』

『いままでの鑑定の機能では相手が高レベルの偽装を使った場合に見えない内容がありましたが、正しい情報を見ることができるようになりました』

『そうか、あといつものように偽装をお願い。偽装で表示する魔法は火魔法と障壁、スキルは鑑定Lv3それと身体強化の二つにしてほしい』

『了解しました』

『これで外からの見た目は普通のヒューマンのレベル97だけど、短期間にレベルが上がりすぎかな。
レベルを低く見せるのもありかな』

『ギルドタグに記録されているラージカミカゼアントの数の経験値との整合性が取れなくなりますのでレベルを低く偽装するのは勧められません』

『そうか、ならしょうがないね。あと、短距離転移が転移Lv3になっているんだけどどう変わったの?』

『短距離転移Lv3の現在は本人と触れているものを目視できる場所若しくはマップされている場所へ50Km以内であれば転移する事が可能です』

『ありがとう』

能力に制限をかけ、ステータスの確認が済んだのでベルンハルトと合流して調査を再開した。

「ベルさん、コツがつかめました」

「そうか、さすがに早いな。それならそっちの方を頼む」

倒れている棚を起こしてみると先ほどとは違い重量を感じる。

  (まだ少し軽く感じるけど、これでしばらく試してみよう)

「もういないみたいですね、でも全部の家を確認するんですか?」

「そうだ、戻る前に調べたがたった50人で調べただけだから見落としがないとも限らないからな」

「そうですね、下手をすると死人が出ますからしっかり確認します」

「だな、見落とさないようにやってしまおう」

1週間後の朝、ギルドハウスに集まるとベルンハルトから現地解散の連絡があり、やっと冒険者全員が解放された。
褒賞はマール市に戻った後ギルドで精算という事もありマールの冒険者は蜘蛛の子を散らすようにアラバスタの町から姿を消した。
ジンは捕まえた男達が乗っていた馬を1頭もらったので、馬に乗る練習をしながらベルンハルトと共にマールへ戻った。
帰り着いた日はギルドハウスの厩舎に馬を置かせてもらったがこのまま世話をすることが難しいので、ギルドに引き取ってもらい必要な時だけ貸してもらうという話になったが、自分一人の時は転移で移動するので、人に同行する時以外は馬を必要としないというのが本当の理由であった。

 ギルドで9日ぶりに金の麦亭に行くと前と同じ部屋の鍵を渡された。

「おかえりなさい、はい202号室ね。
しかし、ひどい汚れと匂いね~、先にお風呂に入ってらっしゃい」

そういえば、前に入ったお風呂は鉱山の温泉が最後でその後入っていなかった。
濡れタオルで拭いたり、水を浴びたりしていたが服は洗っていなかったので臭くなっていたのかもしれない。
湯船にゆっくり浸かり旅の疲れを落として着替えると脱いだ服と装備をアイテムボックスにしまって食堂へ向かった。

「お腹すいたでしょ、すぐに持ってくるわね」

戻ってきたジンを見てたメルさんはそう言うと厨房からすぐに夕飯を持ってきてくれた。

「ありがとうございます、今日の夕食も美味しそうですね」

「今日のメニューはフォールドラビットの肉をジャガイモと野菜と一緒に煮込んだ物とパンよ」

「いただきます」

まだ早い時間だったが、周囲を見るとジンの他にはパーティが2組ほど食堂にいたが、見たことがないのでアラバスタの町に行った組ではないと分かった。
今回の招集でいっぺんにCランク以上の冒険者が町にいなくなってしまったので、どの宿屋も1週間ほど閑古鳥が鳴いていたのだが、明日になればほとんどの冒険者が戻ってくるのでこの町の宿屋もまた賑やかになるのであろう。

しかし、冷えていないエールは美味しくない。
部屋に戻る前にエールをジョッキに入れてもらい、エールを飲みながら串焼きを部屋で食べているのだが、エールがあまりにもまずくて我慢ができなくなったので氷系の魔法で冷やせないか試してみた。
木製のバケツの中に水を入れ、手のひらを向けると空気が冷やされて全ての気体が液体になり凍りついてしまうイメージをしながら魔力を集中した。

ピシッ、パキン『【氷魔法】を覚えました』

バケツの中の水どころかその周り全てが凍り始めた。
冷気が広がり始めたので後ろに下がるとテーブルの下の床まで凍りついてしまった。
テーブルの上に飾られていた花も凍りつき、触れると粉々になってしまった。

『レイ、できた氷の温度は何度かわかるか?』

『現在の温度はマイナス226度です、触れると危険ですので注意してください』

  (液体酸素が凍る温度じゃん、あぶねー!)

『今の俺の魔力で絶対零度にする事は可能か?』

『可能です』

『冷やしすぎないようにしないと身の危険がありそうだな、気をつけよう』

テーブルの上にある半分残っていたエール入りのジョッキを突いてみたが中身は完璧に凍りついていた。
エールを諦めて寝ることにしたがあまりの寒さのため、部屋の窓を全開にして寝ることにした。
壁際にあるベッドの中に入ったが、とても寒かったので凍りついたテーブルとバケツをアイテムボックスに収納することでやっと眠ることができた。
翌日の朝、アイテムボックスにしまったテーブルと出して食堂へ行くと天井から冷気が降りてきていた。

「寒いですねー、どうしたんですか?」

「夕べ突然寒くなったみたいで食堂に来たらこんなに冷え込んでたのよ」

  (メルさんごめんなさい、今度埋め合わせはします)

「不思議ですね~、ちょっと急ぐのでもうでますね」

そう言って金の麦亭から逃げるように出かけるのであった。
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