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11. 銅貨一枚の戦い
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銅貨一枚でより多くの物を買った方が勝ちという市場での買い物競争。
私は自分の勝利を確信していた。何故なら、事前調査が完璧だから。
なので私は余裕たっぶりに、ロキシード様に微笑むと、大見得を切ったのだった。
「私、既に買うものは決まってますの。これなら絶対にロキ様に勝てますわ」
「そうなんだ。さっき市場を一周した時に、そこまで考えて見て回ってたんだね」
「え……、えぇ、そうですわ!」
本当は何日も前から下調べをしていたので、殿下の純粋な言葉に少し胸が痛んだ。
けれど、勝負とは駆け引き。
ロキシード様に勝つためなら、手段を選んでいられなかった。
「では、ロキシード様。ここで一旦お別れです。これは勝負ですから、買い物は別々に行いますわ!手の内は見せられませんからね。」
「分かった。それじゃあ、各々買い物をしたらこの中央広場で落ち合おうか。」
「えぇ、分かりましたわ。それでは、また後ほど。」
そう言って別々に歩き出そうとした――その瞬間。
「お嬢様……!」
「二手に分かれられたら警備が……!」
背後から悲鳴のような声が上がった。
振り返ると、殿下の従者と私の侍女が、顔面蒼白であたふたしていた。
「お嬢様、警備計画が崩れてしまいますので、お二人がバラバラに行動するのはおやめ下さい!!」
侍女が涙目で懇願してくるので、流石の私もその訴えを無下には出来なかった。
何せ彼女の言うとおり、王太子殿下であるロキシード様の御身に何かあってはいけないのだから。
(うーん……確かに、侍女の言うことももっともですわね……)
私は侍女や従者たちの気持ちを汲み取り、必死に考えた。
そして――とても良い案を思いついたのだった。
「分かりましたわ。それでは、こうしましょう。五分以内に買い物をすましてここに戻ってくるのです。そうすれば、私たちが分かれて行動する時間が短く抑えられますし、買い物競争勝負も難易度が上がって楽しくなりますわ!」
五分という短い時間であれば、殿下の優秀な護衛騎士はきっと予定に無い行動でも、何とかしてくれると私は考えた。
それに加えて、既に買うものが決まっている私にとって、少ない制限時間は利点になるのだ。これほどの名案はなかった。
私は周囲の大人たちの顔色がさらに青くなっていることに気づかず、自分の天才的な案に内心拍手を送りながら、ロキシード様へ宣言した。
「良いですか、ロキシード様。制限時間は五分です。五分以内に買い物を済ませて、ここへ戻ってきてくださいね。」
「あぁ、分かったよ。」
「では、勝負開始ですわ!!」
こうして、私たちのお買い物勝負は、今度こそ本当に幕を開けたのだった。
「あぁっ!!お嬢様、お待ちください!!!」
後ろから悲痛な叫び声を上げて侍女が追ってくるのを感じながら、私は目的の店に向かって、全力で市場を駆け抜けて行った。
だって、買うものは既に決まってるんだもの。
私は、迷うことなく使用人の子供たちから聞いた、”銅貨一枚で一番多くおやつが買える露店”へと向かった。
****
「こんにちは、こちらの蜜掛け乾燥チェリーを頂けますか?」
中央広場から目抜き通りを真っ直ぐに走って、目的の露店に辿り着くと、私は気の良さそうな店主のおじさまに、目一杯の可愛らしい笑顔を向けて注文をした。
そう、ここの露店の蜜掛け乾燥チェリーが、私の勝利の鍵なのだ。
「お嬢さん、いくつ欲しいんだい?」
「銅貨一枚分ですわ!」
私はポケットから銅貨を取り出し、誇らしげに差し出した。
すると店主は、私から銅貨を受け取ると、慣れた手つきで並べてある商品から蜜掛け乾燥チェリーを計量スプーンで掬い、紙袋に流し入れた。
そして、にっこり笑うと、私にすっと差し出したのだった。
「はい、蜜掛け乾燥チェリーだよ。お嬢ちゃんは可愛いからオマケしてあげたよ。」
「まぁ、有難うございます!」
お礼を言って品物を受け取ると、私は紙袋を大事に抱えながら、中央広場へと急いで戻った。
蜜掛け乾燥チェリーは、甘くてちょっと酸っぱくて、貴族の子供ではまず口にすることはないお菓子であったが、前にこっそり私付きの侍女見習いのフィオネに貰ってから、私のお気に入りのお菓子だった。
この店もフィオネから教えて貰ったのだ。ここの店主は、女の子にはオマケをしてくれるのだという情報と一緒に。
(ふふふ。もしロキシード様が偶然にもこのお店で同じものを買ったとしても、
オマケの分があるから絶対に私が勝ちますわ!)
私は初めての勝利を確信しながら、中央広場で殿下の帰りを待った。
私は自分の勝利を確信していた。何故なら、事前調査が完璧だから。
なので私は余裕たっぶりに、ロキシード様に微笑むと、大見得を切ったのだった。
「私、既に買うものは決まってますの。これなら絶対にロキ様に勝てますわ」
「そうなんだ。さっき市場を一周した時に、そこまで考えて見て回ってたんだね」
「え……、えぇ、そうですわ!」
本当は何日も前から下調べをしていたので、殿下の純粋な言葉に少し胸が痛んだ。
けれど、勝負とは駆け引き。
ロキシード様に勝つためなら、手段を選んでいられなかった。
「では、ロキシード様。ここで一旦お別れです。これは勝負ですから、買い物は別々に行いますわ!手の内は見せられませんからね。」
「分かった。それじゃあ、各々買い物をしたらこの中央広場で落ち合おうか。」
「えぇ、分かりましたわ。それでは、また後ほど。」
そう言って別々に歩き出そうとした――その瞬間。
「お嬢様……!」
「二手に分かれられたら警備が……!」
背後から悲鳴のような声が上がった。
振り返ると、殿下の従者と私の侍女が、顔面蒼白であたふたしていた。
「お嬢様、警備計画が崩れてしまいますので、お二人がバラバラに行動するのはおやめ下さい!!」
侍女が涙目で懇願してくるので、流石の私もその訴えを無下には出来なかった。
何せ彼女の言うとおり、王太子殿下であるロキシード様の御身に何かあってはいけないのだから。
(うーん……確かに、侍女の言うことももっともですわね……)
私は侍女や従者たちの気持ちを汲み取り、必死に考えた。
そして――とても良い案を思いついたのだった。
「分かりましたわ。それでは、こうしましょう。五分以内に買い物をすましてここに戻ってくるのです。そうすれば、私たちが分かれて行動する時間が短く抑えられますし、買い物競争勝負も難易度が上がって楽しくなりますわ!」
五分という短い時間であれば、殿下の優秀な護衛騎士はきっと予定に無い行動でも、何とかしてくれると私は考えた。
それに加えて、既に買うものが決まっている私にとって、少ない制限時間は利点になるのだ。これほどの名案はなかった。
私は周囲の大人たちの顔色がさらに青くなっていることに気づかず、自分の天才的な案に内心拍手を送りながら、ロキシード様へ宣言した。
「良いですか、ロキシード様。制限時間は五分です。五分以内に買い物を済ませて、ここへ戻ってきてくださいね。」
「あぁ、分かったよ。」
「では、勝負開始ですわ!!」
こうして、私たちのお買い物勝負は、今度こそ本当に幕を開けたのだった。
「あぁっ!!お嬢様、お待ちください!!!」
後ろから悲痛な叫び声を上げて侍女が追ってくるのを感じながら、私は目的の店に向かって、全力で市場を駆け抜けて行った。
だって、買うものは既に決まってるんだもの。
私は、迷うことなく使用人の子供たちから聞いた、”銅貨一枚で一番多くおやつが買える露店”へと向かった。
****
「こんにちは、こちらの蜜掛け乾燥チェリーを頂けますか?」
中央広場から目抜き通りを真っ直ぐに走って、目的の露店に辿り着くと、私は気の良さそうな店主のおじさまに、目一杯の可愛らしい笑顔を向けて注文をした。
そう、ここの露店の蜜掛け乾燥チェリーが、私の勝利の鍵なのだ。
「お嬢さん、いくつ欲しいんだい?」
「銅貨一枚分ですわ!」
私はポケットから銅貨を取り出し、誇らしげに差し出した。
すると店主は、私から銅貨を受け取ると、慣れた手つきで並べてある商品から蜜掛け乾燥チェリーを計量スプーンで掬い、紙袋に流し入れた。
そして、にっこり笑うと、私にすっと差し出したのだった。
「はい、蜜掛け乾燥チェリーだよ。お嬢ちゃんは可愛いからオマケしてあげたよ。」
「まぁ、有難うございます!」
お礼を言って品物を受け取ると、私は紙袋を大事に抱えながら、中央広場へと急いで戻った。
蜜掛け乾燥チェリーは、甘くてちょっと酸っぱくて、貴族の子供ではまず口にすることはないお菓子であったが、前にこっそり私付きの侍女見習いのフィオネに貰ってから、私のお気に入りのお菓子だった。
この店もフィオネから教えて貰ったのだ。ここの店主は、女の子にはオマケをしてくれるのだという情報と一緒に。
(ふふふ。もしロキシード様が偶然にもこのお店で同じものを買ったとしても、
オマケの分があるから絶対に私が勝ちますわ!)
私は初めての勝利を確信しながら、中央広場で殿下の帰りを待った。
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