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12. お買い物勝負のゆくえ
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暫く待っていると、ロキシード様も買い物を終え、従者を連れて中央広場へ戻ってこられた。
手には、私が持っている袋とほぼ同じ大きさの紙袋。中身が気になって仕方なかったけれど――私は自分の勝利を疑わず、満面の笑みでお迎えした。
「待たせたね、アディ。」
「大丈夫ですわ、制限時間以内ですもの。でん……ロキ様も、無事にお買い物出来たようですわね。」
危うく”殿下”と呼びそうになったのを慌てて飲み込み、誤魔化すようににっこりと笑うと、ロキシード様も同じように柔らかく微笑み返してくださって、特に気にした様子もなく会話を続けられた。
「うん。言われたとおり、銅貨一枚で買い物をしてきたよ。もちろん、沢山ね。」
「まぁ……殿下はこの勝負に随分と自信がおありのようですわね」
「まぁね。今日も僕の勝ちだと思うよ」
そう言ってロキシード様が不敵に笑ったので、私は思わずムキになってしまった。
「まぁ!そう言っていられるのも今のうちだけですわ!私が思い知らせて差し上げますわ!!」
私は殿下に勝利宣言を放った。
――決まったわ
……と思ったのだが、即座に蒼ざめた侍女が、この場に居ないお兄様に代わって、私の言動を慌てて窘めたのだった。
「おっ……お嬢様、お言葉遣いをに気を付けてください!!」
そうだった。
時々忘れてしまうけど、ロキシード様は王太子殿下であり、このような失礼な発言をして良いお方ではない。
後、一応これ、婚約者候補として殿下と仲良くする為の場であることも侍女の忠告で思い出したので、私は慎重に言葉を選んで言い直した。
「え、えーっと……そう仰っていられるのも今のうちだけですわ、私が、私が……ええと……教えて差し上げますわ!」
「うん。あまり変わってないけど、まぁ、いつもの事だから僕は気にしないよ。アディにはそのままで居て欲しいしね。」
「えっと……有難うございます?」
殿下が何を言っているのか正直良くわからなかったが、ロキシード様がニコニコしているので、思わずお礼を言ってしまった。
その表情があまりに楽しそうだったので、私は直感的に確信した。
(よく分からないけど……褒められましたわ!今日こそ殿下に『参った』と言わせられる気がしますわ!)
気分が上向いた勢いのまま、私は買ってきた品を披露することにした。
「まずは私から買ってきた物をお見せしますわ。どうですか!蜜掛け乾燥チェリーが十八個も買えましたわ!」
私は自信満々でロキシード様に袋の中身を披露した。
蜜掛け乾燥チェリーはこの市場の中で銅貨一枚で一番数が多く買えるお菓子なのだが、普通の相場は銅貨一枚で十五個しか買えない。
けれども私は露天商のおじさんのオマケによって、それよりも三個も多く買えたのだ。
もしロキシード様が私と同じ物を買っていたとしても、オマケの分の差は覆らない。
私は勝利を確信し、余裕の笑みで殿下の反応を待った。
しかし――
「これは、個数勝負だったよね?」
「え、えぇ……そうですわよ?」
殿下はいつもと変わらぬ落ち着いた様子で、私の胸の奥がざわついた。
……嫌な予感が膨らんでいく。
「なら、僕の勝ちだね」
ロキシード様はにっこりと笑い、手にした布袋の口を開いた。
中には、小さな粒のようなものがぎっしりと詰まっていた。
「な……なんですのこれは??」
「押し麦。数えてはないけど、十八粒以上あるのは確実だと思うよ。」
それを聞いて私は頭の中が真っ白になった。
盲点であった。
まさか、重さで量り売りしてる商品を殿下が買ってくるだなんて、思っても見なかったのだ。
「ず、ずるいですわ!!!」
「ずるくはないと思うよ?ちゃんと銅貨一枚で買ってるし、一粒、二粒って個数を数えられるしね。」
「くっ……!」
確かに、明確にルールを制定しなかった私の落ち度だった。
だがしかし、それでもやはり私はこの結果に納得出来なかった。
「ロキ様、これは本当に一粒、二粒と数えますか?違いますよね?グラム単位ですわよね?であれば、これを粒で数える事、認められませんわ!!」
私は鬼の首を取ったかのように殿下の戦略に異議を唱えた。なんとかして殿下に勝ちたかったのだ。
けれども殿下は少し困ったような顔をしただけで、あっさりと無情な事実を告げたのだった。
「まぁ、そうだけど……グラムで数えたとしても、これ三十グラムはあるから勝敗は変わらないよ?」
「うっ……」
衝撃の事実に私は何も言えなかった。
(また私の負けなの?!そんな……何をやっても殿下には勝てないの?!まだ……まだ何か、逆転の目はあるはずよ!)
私は現実を受け入れられず、その場に固まって必死に思考を巡らせた。
……すると、その時だった。
ドンッ!!
「きゃあっ!」
後ろから走ってきた子供が私の横をすり抜けざまにぶつかり、私は前のめりに倒れかけてしまった。
「大丈夫、アディ?」
「え、えぇ。ありがとうございます……」
よろめいた私は、ロキシード様が素早く支えてくださった事で転倒は免れた。
けれど、突然の出来事と、殿下に抱きとめられた形になったことで、私の情緒は大きく乱れてしまった。だって、殿下の顔が直ぐ目の前にあるのだ。
私は動揺しているのを殿下に悟られないように必死に平静を装った。
しかし、この場で冷静でいられなかったのは私だけではなかったのだった。
「おっ、お嬢様っ!!」
背後で侍女が怯えたような声で叫んだ。
「何?そんな声を出して、一体どうしたの?」
「おっ、お嬢様、紐が、紐が切られています……」
言われて手元を見ると、巾着袋の紐だけが残り、袋本体が消えていたのだ。
私は手の中に残された紐を見て唖然としてしまった。
何故なら残された紐の切り口は――鋭利な刃物で断ち切られた事を物語っていたから。
手には、私が持っている袋とほぼ同じ大きさの紙袋。中身が気になって仕方なかったけれど――私は自分の勝利を疑わず、満面の笑みでお迎えした。
「待たせたね、アディ。」
「大丈夫ですわ、制限時間以内ですもの。でん……ロキ様も、無事にお買い物出来たようですわね。」
危うく”殿下”と呼びそうになったのを慌てて飲み込み、誤魔化すようににっこりと笑うと、ロキシード様も同じように柔らかく微笑み返してくださって、特に気にした様子もなく会話を続けられた。
「うん。言われたとおり、銅貨一枚で買い物をしてきたよ。もちろん、沢山ね。」
「まぁ……殿下はこの勝負に随分と自信がおありのようですわね」
「まぁね。今日も僕の勝ちだと思うよ」
そう言ってロキシード様が不敵に笑ったので、私は思わずムキになってしまった。
「まぁ!そう言っていられるのも今のうちだけですわ!私が思い知らせて差し上げますわ!!」
私は殿下に勝利宣言を放った。
――決まったわ
……と思ったのだが、即座に蒼ざめた侍女が、この場に居ないお兄様に代わって、私の言動を慌てて窘めたのだった。
「おっ……お嬢様、お言葉遣いをに気を付けてください!!」
そうだった。
時々忘れてしまうけど、ロキシード様は王太子殿下であり、このような失礼な発言をして良いお方ではない。
後、一応これ、婚約者候補として殿下と仲良くする為の場であることも侍女の忠告で思い出したので、私は慎重に言葉を選んで言い直した。
「え、えーっと……そう仰っていられるのも今のうちだけですわ、私が、私が……ええと……教えて差し上げますわ!」
「うん。あまり変わってないけど、まぁ、いつもの事だから僕は気にしないよ。アディにはそのままで居て欲しいしね。」
「えっと……有難うございます?」
殿下が何を言っているのか正直良くわからなかったが、ロキシード様がニコニコしているので、思わずお礼を言ってしまった。
その表情があまりに楽しそうだったので、私は直感的に確信した。
(よく分からないけど……褒められましたわ!今日こそ殿下に『参った』と言わせられる気がしますわ!)
気分が上向いた勢いのまま、私は買ってきた品を披露することにした。
「まずは私から買ってきた物をお見せしますわ。どうですか!蜜掛け乾燥チェリーが十八個も買えましたわ!」
私は自信満々でロキシード様に袋の中身を披露した。
蜜掛け乾燥チェリーはこの市場の中で銅貨一枚で一番数が多く買えるお菓子なのだが、普通の相場は銅貨一枚で十五個しか買えない。
けれども私は露天商のおじさんのオマケによって、それよりも三個も多く買えたのだ。
もしロキシード様が私と同じ物を買っていたとしても、オマケの分の差は覆らない。
私は勝利を確信し、余裕の笑みで殿下の反応を待った。
しかし――
「これは、個数勝負だったよね?」
「え、えぇ……そうですわよ?」
殿下はいつもと変わらぬ落ち着いた様子で、私の胸の奥がざわついた。
……嫌な予感が膨らんでいく。
「なら、僕の勝ちだね」
ロキシード様はにっこりと笑い、手にした布袋の口を開いた。
中には、小さな粒のようなものがぎっしりと詰まっていた。
「な……なんですのこれは??」
「押し麦。数えてはないけど、十八粒以上あるのは確実だと思うよ。」
それを聞いて私は頭の中が真っ白になった。
盲点であった。
まさか、重さで量り売りしてる商品を殿下が買ってくるだなんて、思っても見なかったのだ。
「ず、ずるいですわ!!!」
「ずるくはないと思うよ?ちゃんと銅貨一枚で買ってるし、一粒、二粒って個数を数えられるしね。」
「くっ……!」
確かに、明確にルールを制定しなかった私の落ち度だった。
だがしかし、それでもやはり私はこの結果に納得出来なかった。
「ロキ様、これは本当に一粒、二粒と数えますか?違いますよね?グラム単位ですわよね?であれば、これを粒で数える事、認められませんわ!!」
私は鬼の首を取ったかのように殿下の戦略に異議を唱えた。なんとかして殿下に勝ちたかったのだ。
けれども殿下は少し困ったような顔をしただけで、あっさりと無情な事実を告げたのだった。
「まぁ、そうだけど……グラムで数えたとしても、これ三十グラムはあるから勝敗は変わらないよ?」
「うっ……」
衝撃の事実に私は何も言えなかった。
(また私の負けなの?!そんな……何をやっても殿下には勝てないの?!まだ……まだ何か、逆転の目はあるはずよ!)
私は現実を受け入れられず、その場に固まって必死に思考を巡らせた。
……すると、その時だった。
ドンッ!!
「きゃあっ!」
後ろから走ってきた子供が私の横をすり抜けざまにぶつかり、私は前のめりに倒れかけてしまった。
「大丈夫、アディ?」
「え、えぇ。ありがとうございます……」
よろめいた私は、ロキシード様が素早く支えてくださった事で転倒は免れた。
けれど、突然の出来事と、殿下に抱きとめられた形になったことで、私の情緒は大きく乱れてしまった。だって、殿下の顔が直ぐ目の前にあるのだ。
私は動揺しているのを殿下に悟られないように必死に平静を装った。
しかし、この場で冷静でいられなかったのは私だけではなかったのだった。
「おっ、お嬢様っ!!」
背後で侍女が怯えたような声で叫んだ。
「何?そんな声を出して、一体どうしたの?」
「おっ、お嬢様、紐が、紐が切られています……」
言われて手元を見ると、巾着袋の紐だけが残り、袋本体が消えていたのだ。
私は手の中に残された紐を見て唖然としてしまった。
何故なら残された紐の切り口は――鋭利な刃物で断ち切られた事を物語っていたから。
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