生贄の姫と黄昏の国

宵待 ふた

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Episode.1 目覚めた先

◇8

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城へ連れて行かれることが決まってから時間は少し経ち。
ティアシェを除いた三人は、これからの動向について話し合っていた。

概ね予定通りには変わりないが、少なからずイレギュラーな出来事──ティアシェの事である──が起こったため、その対応についてをどうするかを決めなければなかった。

話し合いの中心である彼女と言えば、シュバルツに「寝てろ」と無理矢理寝かされ、布団に潜り込んでいた。

まだ多少熱があるせいか、目をつぶれば簡単に眠りにつくことが出来て、現在は三人の話し声を子守歌に、夢と現の狭間を漂っている状態だった。

そんな静かだった船内だが、急に活気づいた。がたん、と大きな音がしたり、誰かの話し声が聞こえたり、と。

その音にティアシェは微睡みの中からゆっくりと意識を覚醒させ、何の音かと耳を澄ませる。

「どうやら、着いたようですねぇ」
「お嬢さん、一旦動けますかね?ここからは移動になりまして、船から下りないといけないので」
「分かりました」

眠っていたお陰で体力はそこそこ戻ってきている。
これなら先程のようにふらつくことなく歩けるだろう。
そう思って、ゆっくり立ち上がりその場で確認してみる。

立ちくらみもしない、平気そうですね。そう、心の中で呟く。

ふむ、と自分で頷き、フィスに大丈夫そうだと伝えようとした時、地面から足が離れた。
眩暈がしたわけでも、先程のようにシーツか何かに足を取られた訳でもない。

「…あー、その、陛下?」
「なんだ」
「その恰好は…?」
「この方が断然早い。これは自力で歩かせるとそのうちまた転びそうだ」
「確かに~お姫様華奢ですもんねぇ」

戸惑った様子のフィスと、その隣でシュバルツの言葉にうんうん頷くセラ。
視覚は正常に動いているが聴覚の方は機能していなかったらしく、会話が右から左へと流れていった。

それでも何とかティアシェは固まりそうな思考を動かし、状況を確認する。
地面から浮いた身体。背中と膝裏あたりに添えられた腕。

至近距離の、深紅の瞳。

……。

シュバルツ陛下に、抱き上げられている?

状況を理解し、一瞬思考が固まる。しかしすぐにハッと我に返って口を開いた。
相手は一国の王なのだ。王に抱き上げてもらうなど恐れ多いと、本の中で書いてあったはずだ。

「…あの、陛下」
「なんだ」
「重いでしょうし、降ろして下さって構いません。その、私、歩けますから」
「……。」

見つめ合うこと約三秒。

「その必要はない」

彼はそう短く言って、ティアシェを抱えたまますたすたと歩きだした。
その後は何度彼女が降ろして下さいと頼んでもシュバルツがその願いを叶える事はなかった。
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