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Episode.1 目覚めた先
◇9
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港に着いてから時間は過ぎたものの、ティアシェは未だシュバルツの腕の中にいた。
シュバルツに抱かれるのに慣れた──諦めたともいう──彼女は、物凄い勢いで過ぎ去っていく景色を、珍しそうに眺めていた。
現在、空の上である。
「我が国の土地は広大で、ここから城まで一週間以上かかります。なので移動手段はもっぱら彼らになりますね」
と、フィスが指した先には巨大な蜥蜴。
「竜です」
否、竜だった。
よく見れば、背中にはその体躯に見合う大きな翼が生えており、それを使って空を悠々と滑空していた。
…竜とは、存在しない架空の生物ではなかったのか。
ティアシェが呆然と大空を見上げていると、そのうちの一際目立つ黒い個体が音もなく目の前に降り立った。
シュバルツはその黒竜に躊躇なく乗ってそのまま飛び立った。
勿論、腕の中にはティアシェがいて、彼女は混乱したまま空の中に連れられたのであった。
そして、現在に至るわけである。
──私は、夢でも見ているのでしょうか…。
顔に当たる風。何とも言えない浮遊感。
それらがきちんと現実だと教えてくれているのだが、竜、という物語で読んだ存在を目の当たりにし、少々思考が追いついていっていないのである。
小さくなった建物、広い青空。心地よい風。
それぞれが夢のようで、まして竜に乗れるなんて物語の世界に入り込んだみたいでとても嬉しいですが、……それにしても。
「そう下ばかり眺めていると落ちるぞ」
「…!」
「冗談だ。落としはしない。……だが、時々強風が吹くこともある。それだけは注意しておいた方がいい」
「分かりましっ…!?」
「ほらな。さて、これを利用して少し高度を上げる。しがみついていろ」
これ以上高度を上げるのか。十分今でも高いと思っていたティアシェだったが、シュバルツの言い方だとまだ上げても良さそうな感じだった。
言われた通り、服の邪魔にならない所をキュッと掴むとふわっとお腹のあたりに浮遊感を感じた。
びゅう、と身体に強い風が当たったと思ったら、次の瞬間には先程のように穏やかに風が顔に当たる。
「遠くに見えるあれが、城だ」
先程より、小さくなった建物や森林。
それでも視線の先のものは他の建物とは違う存在感を放っていた。
「お前も、あそこに住むことになる」
淡々と言い切ったシュバルツを見上げる。
視線は、こちらではなくスッと城に向いていて。
お互いに口を閉じたまま、再び静寂が訪れる。
この際、色々と聞こうかとも思ったが、特に浮かぶこともなく。
「そうですか」
と、何とも味気ない返事になってしまった。
シュバルツに抱かれるのに慣れた──諦めたともいう──彼女は、物凄い勢いで過ぎ去っていく景色を、珍しそうに眺めていた。
現在、空の上である。
「我が国の土地は広大で、ここから城まで一週間以上かかります。なので移動手段はもっぱら彼らになりますね」
と、フィスが指した先には巨大な蜥蜴。
「竜です」
否、竜だった。
よく見れば、背中にはその体躯に見合う大きな翼が生えており、それを使って空を悠々と滑空していた。
…竜とは、存在しない架空の生物ではなかったのか。
ティアシェが呆然と大空を見上げていると、そのうちの一際目立つ黒い個体が音もなく目の前に降り立った。
シュバルツはその黒竜に躊躇なく乗ってそのまま飛び立った。
勿論、腕の中にはティアシェがいて、彼女は混乱したまま空の中に連れられたのであった。
そして、現在に至るわけである。
──私は、夢でも見ているのでしょうか…。
顔に当たる風。何とも言えない浮遊感。
それらがきちんと現実だと教えてくれているのだが、竜、という物語で読んだ存在を目の当たりにし、少々思考が追いついていっていないのである。
小さくなった建物、広い青空。心地よい風。
それぞれが夢のようで、まして竜に乗れるなんて物語の世界に入り込んだみたいでとても嬉しいですが、……それにしても。
「そう下ばかり眺めていると落ちるぞ」
「…!」
「冗談だ。落としはしない。……だが、時々強風が吹くこともある。それだけは注意しておいた方がいい」
「分かりましっ…!?」
「ほらな。さて、これを利用して少し高度を上げる。しがみついていろ」
これ以上高度を上げるのか。十分今でも高いと思っていたティアシェだったが、シュバルツの言い方だとまだ上げても良さそうな感じだった。
言われた通り、服の邪魔にならない所をキュッと掴むとふわっとお腹のあたりに浮遊感を感じた。
びゅう、と身体に強い風が当たったと思ったら、次の瞬間には先程のように穏やかに風が顔に当たる。
「遠くに見えるあれが、城だ」
先程より、小さくなった建物や森林。
それでも視線の先のものは他の建物とは違う存在感を放っていた。
「お前も、あそこに住むことになる」
淡々と言い切ったシュバルツを見上げる。
視線は、こちらではなくスッと城に向いていて。
お互いに口を閉じたまま、再び静寂が訪れる。
この際、色々と聞こうかとも思ったが、特に浮かぶこともなく。
「そうですか」
と、何とも味気ない返事になってしまった。
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