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新たな力
生きるための知識を得る
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這う這うの体で港湾都市ブロントから逃げてきたウル。
丘を越えて、ようやく山道へと入った。
ここまで来れば、もう追手は来ないだろう。
ウルは山から港湾都市ブロントを眺めた。
山から見下ろす港湾都市は。
生まれ育ったガンムとは似ても似つかない、多くの人で賑わっている。まさに都市。
建物も林立しているし、山手には大きな屋敷がたくさん建っている。おそらく大金持ちや商人が住んでいるのだろう。
港へと目をやると、奴隷商船は沖へと流されることなく、無事に港へと戻っている。
人を騙して売り飛ばそうとしてくれた“人でなし”ではあったが、彼らの船に乗せてもらわなければ、大陸には渡れなかったし、とりあえずは感謝の意を込めて、港にお辞儀をした。
さらばだ。
船から降りるためのタラップのように、ただ通り過ぎただけの港湾都市よ。
さてと。
街道を通れば、迷うことなく皇都のソレイユへと辿り着けるだろう。
ウルは歩き出した。
ギュルル。お腹が鳴った。
思えば、船に乗ってから2日間とはいえ1日1食の日々。
しかも、時間を無駄に過ごしたくないから、ずっと立ったまま波の揺れと戦って過ごしていた。おかげで、身体は鈍らなかったけれど、出発前よりも痩せてしまった。
単純に食事を半分にして過ごしてきた訳だから、お腹も減ってくるのは当然。
「しっかし、山の中で食べる所なんて、あるのかねぇ」
いっその事、ブロントで食事を済ませておけば良かったと後悔すらする。
道はあれども、山の中。
何か、食べられるものはあるのかな?
探しながら、ひたすら街道を進む。
しばらくして。
やはり、脚がフラついてきた。
おまけに喉も乾いてきた。
「ヤベッ。水筒を忘れてきた」
今になって思い出した。
無いのは水筒だけではない。
火を起こす道具すら持ってきていない。
バックパックを背負ってはいるが、中には何も入っていない。
今頃になって、旅の無計画さを嘆いても仕方がない。
雀の涙ほどとはいえ、路銀もあるにはある事だし、当分は何とかなるだろう。
しかし。
お金はあっても、ここはすっかりと山の中。
空腹が過ぎて、足取りも重い。とはいえ、お金を口にしたところで腹の足しにもなりはしない。むしろ体を壊すのがオチだ。
それでもなお、歩き続ける。
だって、それしか、しようがない。
少し荷物を軽くして負担を減らそう。
考えても、バックパックの中身は空っぽ。
今現在、デッドウェイトとなっているのは“板の剣”のみ。
ウルは首を強く横に振った。
これが無ければ、何のために皇都ソレイユを目指しているのか?
これだけは絶対に手放してはならない。
捨てるなど以ての外。
根拠の無い自信を支える唯一の武器。それが板の剣。
もはや足を引きずるようにして、ようやく山をひとつ越えた。
と、またもや峠。
すると、今度は道が二股に分かれており、片方には足跡が幾つも残っている。
それは人の往来が盛んだという証し。
少しだけど、希望が湧いてきたぁーッ!
人の往来があるという事は。
お食事処もしくは宿屋があるかもしれない。いや!あるに違いないと思いたい。
希望が満ちるという事は、人にとって、それは原動力となる。
原動力は、時に冒険心をくすぐるもの。
ウルは道端に生えている草を引き千切ると、それを口に運んだ。
と、すぐさま。ペッ!ペッ!と吐き出した。
やはり、とてもじゃないけど、食べられたものではない。しかも喉を潤すどころか、苦すぎて、返って喉が渇きそう。
教訓:その①
むやみやたらと、その辺の草を食べてはならない。
とりあえず、ウルは今さっき口にした植物を、もう一度手に取り観察した。
形と匂いを覚えておこう。
数日も経てば、忘れてしまうかもしれないけれど、経験を積むという事は、拾って捨てての繰り返しだとウルは考える。
何度も何度も失敗を繰り返しては成功に近づける。
現在のところ、未だ成功を導き出せた試しは何一つ無いけれど。
文字通り、道草を食ってしまったが、おかげで“生きている”実感を取り戻せたような気がする。
ウルは再び歩き出した。
すると、なにやら遠くに立ち上る一筋の煙が。
人がいる。
体力温存なんて、この際、どうでもいい。ウルは走り出した。
「あった!」
目指す方向には、小さな小屋が。
峠の茶屋を発見した。
丘を越えて、ようやく山道へと入った。
ここまで来れば、もう追手は来ないだろう。
ウルは山から港湾都市ブロントを眺めた。
山から見下ろす港湾都市は。
生まれ育ったガンムとは似ても似つかない、多くの人で賑わっている。まさに都市。
建物も林立しているし、山手には大きな屋敷がたくさん建っている。おそらく大金持ちや商人が住んでいるのだろう。
港へと目をやると、奴隷商船は沖へと流されることなく、無事に港へと戻っている。
人を騙して売り飛ばそうとしてくれた“人でなし”ではあったが、彼らの船に乗せてもらわなければ、大陸には渡れなかったし、とりあえずは感謝の意を込めて、港にお辞儀をした。
さらばだ。
船から降りるためのタラップのように、ただ通り過ぎただけの港湾都市よ。
さてと。
街道を通れば、迷うことなく皇都のソレイユへと辿り着けるだろう。
ウルは歩き出した。
ギュルル。お腹が鳴った。
思えば、船に乗ってから2日間とはいえ1日1食の日々。
しかも、時間を無駄に過ごしたくないから、ずっと立ったまま波の揺れと戦って過ごしていた。おかげで、身体は鈍らなかったけれど、出発前よりも痩せてしまった。
単純に食事を半分にして過ごしてきた訳だから、お腹も減ってくるのは当然。
「しっかし、山の中で食べる所なんて、あるのかねぇ」
いっその事、ブロントで食事を済ませておけば良かったと後悔すらする。
道はあれども、山の中。
何か、食べられるものはあるのかな?
探しながら、ひたすら街道を進む。
しばらくして。
やはり、脚がフラついてきた。
おまけに喉も乾いてきた。
「ヤベッ。水筒を忘れてきた」
今になって思い出した。
無いのは水筒だけではない。
火を起こす道具すら持ってきていない。
バックパックを背負ってはいるが、中には何も入っていない。
今頃になって、旅の無計画さを嘆いても仕方がない。
雀の涙ほどとはいえ、路銀もあるにはある事だし、当分は何とかなるだろう。
しかし。
お金はあっても、ここはすっかりと山の中。
空腹が過ぎて、足取りも重い。とはいえ、お金を口にしたところで腹の足しにもなりはしない。むしろ体を壊すのがオチだ。
それでもなお、歩き続ける。
だって、それしか、しようがない。
少し荷物を軽くして負担を減らそう。
考えても、バックパックの中身は空っぽ。
今現在、デッドウェイトとなっているのは“板の剣”のみ。
ウルは首を強く横に振った。
これが無ければ、何のために皇都ソレイユを目指しているのか?
これだけは絶対に手放してはならない。
捨てるなど以ての外。
根拠の無い自信を支える唯一の武器。それが板の剣。
もはや足を引きずるようにして、ようやく山をひとつ越えた。
と、またもや峠。
すると、今度は道が二股に分かれており、片方には足跡が幾つも残っている。
それは人の往来が盛んだという証し。
少しだけど、希望が湧いてきたぁーッ!
人の往来があるという事は。
お食事処もしくは宿屋があるかもしれない。いや!あるに違いないと思いたい。
希望が満ちるという事は、人にとって、それは原動力となる。
原動力は、時に冒険心をくすぐるもの。
ウルは道端に生えている草を引き千切ると、それを口に運んだ。
と、すぐさま。ペッ!ペッ!と吐き出した。
やはり、とてもじゃないけど、食べられたものではない。しかも喉を潤すどころか、苦すぎて、返って喉が渇きそう。
教訓:その①
むやみやたらと、その辺の草を食べてはならない。
とりあえず、ウルは今さっき口にした植物を、もう一度手に取り観察した。
形と匂いを覚えておこう。
数日も経てば、忘れてしまうかもしれないけれど、経験を積むという事は、拾って捨てての繰り返しだとウルは考える。
何度も何度も失敗を繰り返しては成功に近づける。
現在のところ、未だ成功を導き出せた試しは何一つ無いけれど。
文字通り、道草を食ってしまったが、おかげで“生きている”実感を取り戻せたような気がする。
ウルは再び歩き出した。
すると、なにやら遠くに立ち上る一筋の煙が。
人がいる。
体力温存なんて、この際、どうでもいい。ウルは走り出した。
「あった!」
目指す方向には、小さな小屋が。
峠の茶屋を発見した。
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