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[1]高砂・飛遊午
-15-:俺をピンにしやがったのが一番許せねぇ!
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敵の口から明かされる驚愕の事実。
「ああ。だからミツナリの野郎はトンズラこきやがったのさ。お前も今からじゃもう助からねぇから、俺の邪魔だけはするな。いいな?」
話しながらも銃撃の手は休めない。でも掠りもしない。
「わかった。だが、撃って大爆発とかしないのか?」
「盤上戦騎の火器は、破壊しても汚染や誘爆の心配はありません」
先ほど聞いた悲鳴の主だ。喋れば落ち着いた澄んだ声をしている。
心底ヒデヨシが羨ましい。こちらは人間嫌いの気難しい中年オヤジだというのに。話し掛けるにも気を使ってしょうがない。
キャサリンが続ける。
「ソネの放ったグレネード弾は恐らく時限式で、花火が球状に爆発することから、ある程度落下してから爆発するのではないでしょうか?」
その見解はほぼ正解だと思えた。
ソネはグレネード弾を射出してから移動を始めている。それは爆発に巻き込まれないためだろう。
真上に撃ったのだから上昇中に爆発させたのではベルタを巻き込むことはできない。逆に地上付近だと爆発の影響範囲をみすみす地上部分に食われる結果となってしまう。これはムダだ。
先ほどベルタが滞空していた高度は2000メートル付近。爆発範囲がどのくらいに及ぶのか見当もつかないが、確実に巻き込むつもりならば、きっと元の高度の±500メートル付近だと思われる。
しかしソネの騎影はまだレーダーレンジに納まっている。
これはどういう事なのか?
グレネード弾が上昇を終えて落下を始めた。現在の高度8000メートル。
もう、いつ爆発してもおかしくはない。が、ソネは何故今の距離からさらに離れようとしない?
追撃を加えていたキャサリンが弾切れを起こしてしまった。ならばと。
馬上槍で突きを試みるも、焦りからか、ただ落下しているだけのグレネード弾を突き刺すことができない。だけど諦めずにリトライ。でも、まるで掠りもしない。
そんな中、横一閃が走る。
ベルタが右手のツメを横一文字に走らせて、グレネード弾を切り裂いた。
キャサリンの言った通り誘爆は無く、小さく爆発しただけ。
「しっかりしてくれよ。ヒデヨシ殿」
「お、おぅ。手間取らせちまったな」
そんなやり取りの中。
キンッ!ベルタは背後から振り下ろされた曲刀の一撃を、顔を向けることなく左手のツメで受け止めた。
「!?コイツ・・後ろに目でも付いているのか??」
ミツナリは見事なまでのノールックガードを披露したヒューゴに驚愕した。
「レーダーでは把握していたんだがな・・。助かったぜ。ルーティ」
「まっ、ウチはアレや。やる事が無かったからレーダーと周囲に気を配ることができただけや」
さっきのお返しにと言わんばかりに告げるとニィと笑い・・二人して「イェーイ」ハイタッチ。
「時限爆弾がブラフなのはお見通しだぜ。爆弾に注意を逸らせたつもりだろうが、時限式の爆弾を使うなら、相手の脚を潰してからでないと確実性が損なわれる。なぁ、もうちょっと頭ひねって戦えよ」
ベルタがソネを睨み付ける。
怯んだソネの顔面に、横からキャサリンの右ストレートが叩き込まれた!
落下を始めるソネの騎体に、さらに追い討ちをかけてキャサリンが立て続けに顔面に向けてパンチを叩き込む。
落下するよりも早く、何度も何度も。
遂にソネの騎体はホテイアオイが群生する琵琶湖湖面に叩きつけられた。
「テメェは琵琶湖の底で鱈腹水でも飲んでおきな!」
どこの誰かが捨てたホテイアオイの群生は、ソネを優しく包み込むベッドにはならなかった。
ソネの体は水泡を浮き上がらせるものの、深く湖底へと沈んでいった。
「いくら何でも、チトやり過ぎなんじゃ…」
まさかの仲間割れに、思わずヒューゴは声を挟んでしまった。
「アレが爆発していたら、俺たちの日常は木端微塵に吹き飛んでいたんだぜ。俺たちだけじゃない。みんなの日常が消えて無くなるところだったんだ」
何かカッコイイ事言っている…。
全員が同じ感想を抱いた。
「あの野郎・・俺をピンにしやがったのが一番許せねぇ!」
「ピン?」
ここから耳にしたら、漫才師が相方に逃げられて否応なしにピン芸人にさせられたように聞こえてしまう。
怒りに打ち震えるヒデヨシにヒューゴが訊ねた。
「ある駒を攻撃して、その背後にある重要な駒が攻撃に遭っちまうから、その駒が動けなくなる状態のことだよ。つまり、さっきお前がグレネード弾を追っていた俺を攻撃していたら、お前は爆発でお陀仏だったって事だ」
「足止め?捨て駒?人質かな?うーん・・どれもピンと来ないな」
うまく言ったつもりは毛頭ないし、誰も彼らのやり取りを気に留めない。
「解り辛かったかな。ついついチェス用語を使って表現しようとしたモンでよ」
「ほほぅ。チェスをおやりですか?」
回りくどい言い回しはさて置いて。
「ま、まぁな。これでも結構腕を上げているんだぜ。ノブナガの野郎からは1つも駒を取れねえ―」
照れ臭そうにヒデヨシが話している途中に通信がブチン!と切られてしまった。
一体、彼に何が起こったのか?
「ああ。だからミツナリの野郎はトンズラこきやがったのさ。お前も今からじゃもう助からねぇから、俺の邪魔だけはするな。いいな?」
話しながらも銃撃の手は休めない。でも掠りもしない。
「わかった。だが、撃って大爆発とかしないのか?」
「盤上戦騎の火器は、破壊しても汚染や誘爆の心配はありません」
先ほど聞いた悲鳴の主だ。喋れば落ち着いた澄んだ声をしている。
心底ヒデヨシが羨ましい。こちらは人間嫌いの気難しい中年オヤジだというのに。話し掛けるにも気を使ってしょうがない。
キャサリンが続ける。
「ソネの放ったグレネード弾は恐らく時限式で、花火が球状に爆発することから、ある程度落下してから爆発するのではないでしょうか?」
その見解はほぼ正解だと思えた。
ソネはグレネード弾を射出してから移動を始めている。それは爆発に巻き込まれないためだろう。
真上に撃ったのだから上昇中に爆発させたのではベルタを巻き込むことはできない。逆に地上付近だと爆発の影響範囲をみすみす地上部分に食われる結果となってしまう。これはムダだ。
先ほどベルタが滞空していた高度は2000メートル付近。爆発範囲がどのくらいに及ぶのか見当もつかないが、確実に巻き込むつもりならば、きっと元の高度の±500メートル付近だと思われる。
しかしソネの騎影はまだレーダーレンジに納まっている。
これはどういう事なのか?
グレネード弾が上昇を終えて落下を始めた。現在の高度8000メートル。
もう、いつ爆発してもおかしくはない。が、ソネは何故今の距離からさらに離れようとしない?
追撃を加えていたキャサリンが弾切れを起こしてしまった。ならばと。
馬上槍で突きを試みるも、焦りからか、ただ落下しているだけのグレネード弾を突き刺すことができない。だけど諦めずにリトライ。でも、まるで掠りもしない。
そんな中、横一閃が走る。
ベルタが右手のツメを横一文字に走らせて、グレネード弾を切り裂いた。
キャサリンの言った通り誘爆は無く、小さく爆発しただけ。
「しっかりしてくれよ。ヒデヨシ殿」
「お、おぅ。手間取らせちまったな」
そんなやり取りの中。
キンッ!ベルタは背後から振り下ろされた曲刀の一撃を、顔を向けることなく左手のツメで受け止めた。
「!?コイツ・・後ろに目でも付いているのか??」
ミツナリは見事なまでのノールックガードを披露したヒューゴに驚愕した。
「レーダーでは把握していたんだがな・・。助かったぜ。ルーティ」
「まっ、ウチはアレや。やる事が無かったからレーダーと周囲に気を配ることができただけや」
さっきのお返しにと言わんばかりに告げるとニィと笑い・・二人して「イェーイ」ハイタッチ。
「時限爆弾がブラフなのはお見通しだぜ。爆弾に注意を逸らせたつもりだろうが、時限式の爆弾を使うなら、相手の脚を潰してからでないと確実性が損なわれる。なぁ、もうちょっと頭ひねって戦えよ」
ベルタがソネを睨み付ける。
怯んだソネの顔面に、横からキャサリンの右ストレートが叩き込まれた!
落下を始めるソネの騎体に、さらに追い討ちをかけてキャサリンが立て続けに顔面に向けてパンチを叩き込む。
落下するよりも早く、何度も何度も。
遂にソネの騎体はホテイアオイが群生する琵琶湖湖面に叩きつけられた。
「テメェは琵琶湖の底で鱈腹水でも飲んでおきな!」
どこの誰かが捨てたホテイアオイの群生は、ソネを優しく包み込むベッドにはならなかった。
ソネの体は水泡を浮き上がらせるものの、深く湖底へと沈んでいった。
「いくら何でも、チトやり過ぎなんじゃ…」
まさかの仲間割れに、思わずヒューゴは声を挟んでしまった。
「アレが爆発していたら、俺たちの日常は木端微塵に吹き飛んでいたんだぜ。俺たちだけじゃない。みんなの日常が消えて無くなるところだったんだ」
何かカッコイイ事言っている…。
全員が同じ感想を抱いた。
「あの野郎・・俺をピンにしやがったのが一番許せねぇ!」
「ピン?」
ここから耳にしたら、漫才師が相方に逃げられて否応なしにピン芸人にさせられたように聞こえてしまう。
怒りに打ち震えるヒデヨシにヒューゴが訊ねた。
「ある駒を攻撃して、その背後にある重要な駒が攻撃に遭っちまうから、その駒が動けなくなる状態のことだよ。つまり、さっきお前がグレネード弾を追っていた俺を攻撃していたら、お前は爆発でお陀仏だったって事だ」
「足止め?捨て駒?人質かな?うーん・・どれもピンと来ないな」
うまく言ったつもりは毛頭ないし、誰も彼らのやり取りを気に留めない。
「解り辛かったかな。ついついチェス用語を使って表現しようとしたモンでよ」
「ほほぅ。チェスをおやりですか?」
回りくどい言い回しはさて置いて。
「ま、まぁな。これでも結構腕を上げているんだぜ。ノブナガの野郎からは1つも駒を取れねえ―」
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一体、彼に何が起こったのか?
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