盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま(マテチ)

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[13]ミドルゲームスタート!!

-118-:こんな所で会えるなんてね。高砂・飛遊午

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 時計の針は、ただひたすら時を刻み続ける…。

 人知れず繰り広げられているデスゲーム・魔導書グリモワールチェスのチェスクロックの針も、すでに次の戦いへと狙いを定めて、刻一刻と時を刻んでゆく。



 明けて6月16日―。

 “鈴木・くれは”の謹慎が解かれて、彼女は3日ぶりに学校へ。


 しかし。


 もはや日課となっている、草間・涼馬の待ち伏せを察知したクレハは、部屋から通学路へと向かう交差路に設けられたカーブミラーに目をやった。


 3階の窓から身の乗り出して覗きこむのは不自然と、鏡を駆使して様子をうかがう事にした。


 いた。

 今日もいやがった。


 アイツに構っていると、走って登校しなければならない。
 久しぶりの学校だというのに、走るのは体育の授業だけにしておきたい。


 クレハは決めた。


 違う道を通って学校へ行こう。



 ヘアクリップを鷲掴み、クレハは朝の準備に取り掛かった。

 家族が皆、目を丸くしている。

 母親が「雨でも降るんじゃない?」と冷やかし、それを気にも留めることなく、いつになくテキパキと準備を整える。

 いつも、こうだと良いのにこぼす親の期待などお構いなし。

 ただ。

 草間・涼馬との面倒に巻き込まれたくないだけ。


 いつもなら高砂・飛遊午が迎えにくるのだが、今日は逆に彼を迎えに行った。



「おはよー、タカサゴ!」

 元気よく朝の挨拶。

 が。

「大丈夫か?」

 それが朝の挨拶かいッ!?
 いつもと違うクレハに彼は戸惑いの色を隠せない。



 今日は少し遠回りをして、河川沿いの道を行くことに。

 いつもと違う道は、新たな発見をもたらしてくれる。


 世の中、暇な人が多いんだなぁ…。

 働き盛りの男性がジョギングしていたり、犬の散歩をしながら世間話に花を咲かせるおばさんたち。
 クレハは自身を常識の中心と捉えて、世の人たちの生活リズムに疑問を抱く。

 出勤時間や起床時間は人それぞれなのに。


 そんな色眼鏡に満ちたクレハたちは、河川沿いに敷設されているバスケットコートに差し掛かった。


 そこには、一人の少女の姿が。

 ドリブルをしながらスリーポイントラインに立つと、ふわりと後ろへと跳んでフェイダウェイシュートを放った。

 ストン!軽い音を立ててゴールをキメる。


 パチパチパチと拍手の鳴る方へと少女の顔が向けられた。


「上手いもんだなぁ」
 感心するヒューゴに。

「もう!失礼だよ。彼女、貝塚・真珠かいづか・しんじゅさんはプロバスケチームが目を付けている程のスゴイ選手なんだから」
 すかさずツッコミを入れるが如く、ヒューゴの胸を叩くクレハ。

「そんなに有名なのか」
 驚くヒューゴに、クレハは続ける。

「知らないと、天馬では生きて行けないよ。彼女、ヴァルキュリアのエースなんだよ」

「ヴァルキュリア?何だ?それ」

 ヒューゴの問いに、呆れたと天を仰いで。

「そんな事も知らないの!?ヴァルキュリアってのは、ウチの学校の女子バスケット部の正規メンバーの事だよ。トラちゃんも、その一人」

「トラが!アイツがか!?そんなにスゲーヤツだったのか」
 ヒューゴの驚きは止まらない。



「こんな所で会えるなんてね。高砂・飛遊午」
 シンジュが頬に流れる汗をタオルで拭きながら、クレハたちに寄ってきた。


「スゴイよ。タカサゴ!学園の超有名人に名前を憶えてもらっているなんて」
 感動を体全体で表現するクレハとは対照的に、シンジュはため息を漏らした。


「学年トップの成績保持者にして剣道の試合で顔面を割られた、ただでさえ目立つ上に隣のクラスとくれば知らないハズも無いでしょ?」

「えぇーッ!?シンジュちゃん、隣のクラスだったの!?」
 驚きを隠せないクレハに、シンジュは軽い目眩めまいを覚えた。

「…あのね…今さっき、私の事を“学園の超有名人”とか言っていたのに、私が隣のクラスなのを知らなかったの?トラの親友のくせに」
 あまりのツッコミどころ満載さに、あきれ果てるシンジュであった。


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