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第八章 真なる聖剣
878 見つからない湖
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戻って来たフォルテが、例の魔結晶のようなものをくちばしでつついている。
「美味いか?」
「ピャウ……」
どうやら別に食べている訳ではないらしい。
スライムがたかっていた結晶を発見後、三人で炒り豆を少しつまみつつ休憩した後、埋まっていたのを掘ってみたのだ。
俺達が休憩している間に、またスライムが集まり始めていたので、再び退けてからになったが。
フォルテは、なんだか気になるということを主張したのみで、それが何であるかはわからないとのことだ。
掘り出してみると小さな丸い形をしていて、多面体であるはずの、本来の魔結晶とは全く違うことがわかる。
「ちょっとだけ精霊の気配もするけど……もしかすると、何かの種、かも?」
「種? これが?」
いっそ、魔鉱石を加工した魔宝石であると言われたほうがしっくり来るのだが、人の手の加わらない天然のものだとすると、確かに形的には、種や卵を思わせるものではあった。
「とりあえずアドミニス殿に見せるか」
千年も生きているのだから、そこそこ物知りなはずだ。
俺が知らないようなことも知っているに違いない。
とりあえず小銭を入れる革袋のなかに入れておく。
ふむ、どんどん本来の探しものとは違うものが集まっていくぞ。
マズいな。
こういうときのジンクスとして、本命が見つからないというのがあるんだよな。
「フォルテの目で上空から探しても、なかなかそれらしきものがないしな。あんまり奥に行き過ぎると、それこそドラゴンの巣に突っ込んでしまう」
「大きな川と小さな川の間って、魔王さまはおっしゃったんだよね」
「ああ。大川とその支流の間、だな。俺達は今、その支流に沿って大森林の奥へ向かって調べている訳だが、アドミニス殿の口ぶりでは、そこまで奥という印象じゃなかった。今度は、支流沿いから少し本流側に移動して、逆に遡るように調べて行くか」
俺は再びフォルテに飛んでもらって、その目を借りると、上空高くから川と川の距離を測る。
大川のほうはわかりやすいが、支流のほうは、森のなかへ入り込んだ後は全く見えなくなってしまうので、わかりにくい。
だが、今は俺達が支流沿いにいるので、その場所から大川までの距離を見ればいいので、そこまで大変でもなかった。
「よし、フォルテの視覚を意識しつつ、両方の川からの距離を維持して探索を再開するぞ。……それにしても、フォルテの視界には湖らしきものはないんだよなぁ」
森に隠れている部分以外は、岩場と低木と草地があるぐらいで、そこまで見通しも悪くない。
現に、勇者達の姿も、確認出来るぐらいだ。
結果的に俺の懸念は当たっていて、定刻に野営場所に集合したみんなの顔には疲労だけが浮かんでいた。
結局、俺達の組を始めとして、どの組も湖を発見出来なかったのだ。
「絶対おかしいだろ! あのクソジジイ、俺達を騙してやがるんだ!」
疲労もあってか、勇者が真剣に怒っている。
「それで、何も発見出来ませんでした、と、アドミニス殿に報告するのか?」
「くっ……」
負けず嫌いの勇者は、グッと詰まった。
それは嫌なんだな。
うんうん、わかるぞ。
「そもそもこれは聖剣の対価だ。そう簡単なものであるはずがない、と思わないか?」
「ぐむむ……」
「そーそー、アルフ、子どもっぽいヨ」
よせばいいのに、若葉が煽る。
勇者が抜き手も見せずに剣を抜き放つと、若葉に斬りつけた。
凄い! 今までで一番速い抜剣だったぞ。
残念ながら、今勇者の腰にあるのは、炎の魔剣であり、聖剣ではないので、赤く美しい軌跡を空中に描いただけで、甲高い音を響かせたに留まった。
渦巻いた炎も、すかさず若葉が食べる。
「いただきます!」
むしろ嬉しそうなので、喜ばせただけみたいだな。
「今に見てろよ!」
もはやアドミニス殿にキレているのか、若葉にキレているのかすらわからないありさまだった。
「ほら、疲れて腹も減っているからイライラするんだ。とりあえずまだ明るいうちに食事の準備をしてしまうぞ。ミュリアとテスタは、敷物と器の準備を、アルフは、枯れた枝を集めて来てくれ。適当に生木の枝を切って持って来るなよ?」
以前、そこらの木の枝を切り落として持って来たからな。
「俺だって学習しているぞ!」
「そうか、さすがは勇者だ。燃やしやすいようなものを頼むぞ。焚付かわりになりそうな枯れた葉っぱもあると助かる」
「わかった、任せろ!」
「マカセロ!」
若葉が、明らかに意味もわかっていないのに勇者の真似をして、殴られそうになってチョロリと背中に逃げ込んだ。
あれは絶対楽しんでるよな。
食事には、途中で採取した木の実やキノコなどを干し豆と共に煮た、季節の味わいの粥だ。
ピリッとした味の草の実を少量加えるのが味の決め手だな。
メルリルが一緒だと、有用な植物をすぐに発見してくれるので、探索中に採取もはかどったのだ。
そのメルリルは、ナイフを使って食材を切り分けるのも堂に入って来た。
修行の成果が確実に現れている。
もちろん、食後には、あの、木登りネズミが木のうろに溜め込んだ、木の実のデザート付きである。
ちょっとした貴族の晩餐よりも美味いかもしれないぞ?
その後、勇者はちゃんと枯れた使いやすい枝を見つけて持って帰って来た。
季節柄、薪に使える乾いた枝が多く落ちているのもよかったな。
焚付代わりの落ち葉のなかには、危険な煙を出すものが混ざっていたので、それは取り除いたが、まぁ素人だからそこは大目に見てやろう。
「美味いか?」
「ピャウ……」
どうやら別に食べている訳ではないらしい。
スライムがたかっていた結晶を発見後、三人で炒り豆を少しつまみつつ休憩した後、埋まっていたのを掘ってみたのだ。
俺達が休憩している間に、またスライムが集まり始めていたので、再び退けてからになったが。
フォルテは、なんだか気になるということを主張したのみで、それが何であるかはわからないとのことだ。
掘り出してみると小さな丸い形をしていて、多面体であるはずの、本来の魔結晶とは全く違うことがわかる。
「ちょっとだけ精霊の気配もするけど……もしかすると、何かの種、かも?」
「種? これが?」
いっそ、魔鉱石を加工した魔宝石であると言われたほうがしっくり来るのだが、人の手の加わらない天然のものだとすると、確かに形的には、種や卵を思わせるものではあった。
「とりあえずアドミニス殿に見せるか」
千年も生きているのだから、そこそこ物知りなはずだ。
俺が知らないようなことも知っているに違いない。
とりあえず小銭を入れる革袋のなかに入れておく。
ふむ、どんどん本来の探しものとは違うものが集まっていくぞ。
マズいな。
こういうときのジンクスとして、本命が見つからないというのがあるんだよな。
「フォルテの目で上空から探しても、なかなかそれらしきものがないしな。あんまり奥に行き過ぎると、それこそドラゴンの巣に突っ込んでしまう」
「大きな川と小さな川の間って、魔王さまはおっしゃったんだよね」
「ああ。大川とその支流の間、だな。俺達は今、その支流に沿って大森林の奥へ向かって調べている訳だが、アドミニス殿の口ぶりでは、そこまで奥という印象じゃなかった。今度は、支流沿いから少し本流側に移動して、逆に遡るように調べて行くか」
俺は再びフォルテに飛んでもらって、その目を借りると、上空高くから川と川の距離を測る。
大川のほうはわかりやすいが、支流のほうは、森のなかへ入り込んだ後は全く見えなくなってしまうので、わかりにくい。
だが、今は俺達が支流沿いにいるので、その場所から大川までの距離を見ればいいので、そこまで大変でもなかった。
「よし、フォルテの視覚を意識しつつ、両方の川からの距離を維持して探索を再開するぞ。……それにしても、フォルテの視界には湖らしきものはないんだよなぁ」
森に隠れている部分以外は、岩場と低木と草地があるぐらいで、そこまで見通しも悪くない。
現に、勇者達の姿も、確認出来るぐらいだ。
結果的に俺の懸念は当たっていて、定刻に野営場所に集合したみんなの顔には疲労だけが浮かんでいた。
結局、俺達の組を始めとして、どの組も湖を発見出来なかったのだ。
「絶対おかしいだろ! あのクソジジイ、俺達を騙してやがるんだ!」
疲労もあってか、勇者が真剣に怒っている。
「それで、何も発見出来ませんでした、と、アドミニス殿に報告するのか?」
「くっ……」
負けず嫌いの勇者は、グッと詰まった。
それは嫌なんだな。
うんうん、わかるぞ。
「そもそもこれは聖剣の対価だ。そう簡単なものであるはずがない、と思わないか?」
「ぐむむ……」
「そーそー、アルフ、子どもっぽいヨ」
よせばいいのに、若葉が煽る。
勇者が抜き手も見せずに剣を抜き放つと、若葉に斬りつけた。
凄い! 今までで一番速い抜剣だったぞ。
残念ながら、今勇者の腰にあるのは、炎の魔剣であり、聖剣ではないので、赤く美しい軌跡を空中に描いただけで、甲高い音を響かせたに留まった。
渦巻いた炎も、すかさず若葉が食べる。
「いただきます!」
むしろ嬉しそうなので、喜ばせただけみたいだな。
「今に見てろよ!」
もはやアドミニス殿にキレているのか、若葉にキレているのかすらわからないありさまだった。
「ほら、疲れて腹も減っているからイライラするんだ。とりあえずまだ明るいうちに食事の準備をしてしまうぞ。ミュリアとテスタは、敷物と器の準備を、アルフは、枯れた枝を集めて来てくれ。適当に生木の枝を切って持って来るなよ?」
以前、そこらの木の枝を切り落として持って来たからな。
「俺だって学習しているぞ!」
「そうか、さすがは勇者だ。燃やしやすいようなものを頼むぞ。焚付かわりになりそうな枯れた葉っぱもあると助かる」
「わかった、任せろ!」
「マカセロ!」
若葉が、明らかに意味もわかっていないのに勇者の真似をして、殴られそうになってチョロリと背中に逃げ込んだ。
あれは絶対楽しんでるよな。
食事には、途中で採取した木の実やキノコなどを干し豆と共に煮た、季節の味わいの粥だ。
ピリッとした味の草の実を少量加えるのが味の決め手だな。
メルリルが一緒だと、有用な植物をすぐに発見してくれるので、探索中に採取もはかどったのだ。
そのメルリルは、ナイフを使って食材を切り分けるのも堂に入って来た。
修行の成果が確実に現れている。
もちろん、食後には、あの、木登りネズミが木のうろに溜め込んだ、木の実のデザート付きである。
ちょっとした貴族の晩餐よりも美味いかもしれないぞ?
その後、勇者はちゃんと枯れた使いやすい枝を見つけて持って帰って来た。
季節柄、薪に使える乾いた枝が多く落ちているのもよかったな。
焚付代わりの落ち葉のなかには、危険な煙を出すものが混ざっていたので、それは取り除いたが、まぁ素人だからそこは大目に見てやろう。
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