Trisphere 〜三界紀の黎明

NAYUTA

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虚空に呻く者

“ツクモ(TSUKUMO)”アマツ軍内部コード:AMX-99(Amatsu eXploration-99)探索

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スカウターが反応している。

生体反応。

収穫だ。

手ぶらで帰らずに済む。

スカウターが指示する方向へ向かう。

ナギは地上を注意深く見回す。

地面はぬめりを帯び、岩肌は赤黒く、どこか生き物の皮膚のような質感をしている。

時折、風ではない微かな蠢きが足下から伝わる気がした。

不快だ、、、

彼は眉をひそめた。

空気が纏わりつくようだ。

湿気か?

嫌な感覚にバイザーを閉じたくなるが、あえて深く息を吸い込む。

ポッドでの観測では大気に異常は見られなかった。

俺の気にし過ぎだろう。

空気は生ぬるく、鉄錆と花粉を混ぜたような匂いが鼻腔を刺す。

探索班としてではなく、技術士官として派遣された身だ。

軍の生物調査などという退屈な任務に怯えを見せるわけにはいかない。

彼の矜持が、バイザーを閉めたくなる衝動を押し殺した。

「ツクモの地表、観測開始。……生体反応、南西方向に一点」

スカウターのメモリにも残るが、口頭でも記録する。

スカウターの表示が光り、数値が連続的に流れる。

生体反応の方角へ足を向けると、地面の起伏が次第に大きくなり、やがて温泉の湧出を思わせる水源が姿を現した。

岩の間から蒸気が立ち昇り、薄い水膜が光を反射している。

その光は、ただの鉱石の輝きではなかった。

虹色の粒子が岩肌に散り、見る角度によって淡く色を変える。

ナギは息を呑む。

これは、、、

ヘルメットのスキャンモードを生体反応から鉱物反応へと切り替える。

数秒後、スカウターの右下に浮かぶ文字が点滅した。

 Rare-Earth Element Probabilityレアアース元素存在確率:92.4%〉

レアアース、、、だと?92.4%の確率で?

未知惑星での鉱物発見、、、

地球の資源が枯渇し、宇宙に採掘場を求めている今、有用な鉱物であれば、その発見意義は大きい。

そして、地表に顔を出しているならば、その埋蔵量も豊富だろう。

大発見だっ!

しかし、同時に疑念が生まれた。

なぜ、これまで誰も気づかなかった?

なぜ、放棄されたままなのか?

“ツクモ(TSUKUMO)”。

アマツ軍内部コード:AMX-99(Amatsu eXploration-99)。

指令を読み、ナギはまず、“オモイカネ”のデータベースを開いた。

そこに記されていたのは、外縁宙域の測量記録として名と位置、それと、お座なりの無人探査機からの調査結果のみ。

なんで、こんなところに俺が向かわなきゃならないんだ、、、

ナギは、不満を通り越し、怒りさえ覚えた。

それが、この鉱物反応だ。

生体反応よりも、アマツ宇宙軍にとって、意義は大きい。

が、なぜこの存在を察知した?

何らかの探索の結果であれば、その事実は“オモイカネ”に記録されているはずだ。

だが、今、それをあれこれ考えても仕方ない。

帰還後に確認すれば良い。

ナギは記録データに発見情報を吹き込み、生体反応の追跡を再開した。

その時、視界の端に警告表示が赤く点滅した。

 Warning:Material Adhesion Detected付着物検知

ん?スーツの足元か?

HUDの拡大モードで足下を確認する。 

濡れた土壌がブーツにまとわりつき、まるで吸い込むように沈んでいる。

だが、異常反応の数値は微弱だ。

この惑星の地質が粘性を帯びているのは明白で、濡れた地面にセンサーが過敏に反応しただけだろう、、、

「問題なし。警告非表示」

ナギはマイクに吹き込み、指先でスカウターの端を軽く叩く。

警告反応が消えた。

足を踏み出すたび、ぐちゅ、と不快な音がする。

まるで地面そのものが彼を吸い込みたがっているような感触。

ふと、視界の下方で何かが蠢いた。

見れば、ブーツの甲の辺りを、土のような黒い粘膜がゆっくりと動いている。

なんだ、、、泥か、、、

ナギはブーツに付着した粘着性の泥が重力に従い動いているものと判断し、視線を探索方向に向ける。

粘着質の汚泥、、、

これもまた、資源と化すかもしれない。

ナギは、帰還前に、虹色の粒子の散る鉱物と共に、この汚泥のサンプルも採取しようと考える。

生体反応、前方三十メートル、、、

スカウターが告げる。

近いっ!

心拍数がわずかに上昇し、スーツの内側で体温調整ユニットが作動した。

冷却液が背中を流れ、微かな震えが走る。

ナギは、スカウターの表示に注意を払いつつ、前方を注意深く目視する。

変わりの無い風景が続く。

ぬかるみを注意深く踏みしめながら進む。

後方に小さくなったポッドの操縦室では、緊急通信のインジケーターが赤く点滅を続けている。

発信者は、リュウ・アサクラ。

だが、探索補助モードを起動中のナギのスカウターには、“リュウジン”の探索班の司令室からのメッセージしか届かない。

二十メートル、、、

手を腰に当て、電磁砲がすぐに取り出せることを確認する。

もし、その生物が獰猛な種であれば、即、対応しなければならない。

腰を低くし、未知の生体反応に向かい、ナギはゆっくりと近付いていく。

 
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