30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

特別な治療


<ギリオン視点>



「シア、こっちに来るんだ!」

「そうよ、下がって、シアさん!」

「いいえ、ここで治療します!」

 ヴァーンとブリギッテの手を振り払うシア。
 梃子でも動かねえつもりか。

 なら、やっぱりオレが。

「っ!」

 オレが!

「……」

 駄目だ。
 何度やっても、足が動かねえ。

「ぐっ!」

 その上、嫌な衝動まで湧き上がってきやがる。

「治療を始めますので、できるだけ力を抜いてくださいね、ギリオンさん」

 力を抜く?
 それどころじゃねえぞ。

「がっ、うぐっ」

 今はまだギリギリで耐えてんが、長くは無理だ。
 だから、頼む。
 逃げてくれ、シア!

「治癒の光よ、ここに集い彼の者に癒しを!」

 そんな思いを無視するように、魔法治療が始まっちまった。

「っ!」

 柔らかな光が顔を、体を照らしてくる。

「……ぅぅ」

 ゆっくり優しく沁みてくる。

「……」

「……」

「……」

 悪かねえ。
 心地いいとさえ思っちまう。
 けんど。

「やめ、ろ」

 治療しても無駄なんだ。
 大して効果がないことは、さっきまで受けていた治療で分かってる。

「大丈夫ですよ、ギリオンさん」

 だから、治療するより。

「やめて、逃げ、ろ」

「絶対治しますから」

「逃げ……」

「もう少しの辛抱ですから」

 こいつ、聞いてねえ。

「もう少し、もう少しです」

「……」

「ギリオンさん?」

「……」

「そろそろ眠くなってきましたか?」

 まあ……。

 「これは特別な治癒なので、眠くなるのが普通なんです。よかったら、目を閉じてくださいね」

「……」

 シアの言葉につられて、自然と目が閉じちまう。
 

「効いてそうだな」

「……そうね、さすがだわ」

「はは、これ完璧じゃねえか。まっ、おめえら2人は反対してたけどよぉ」

「「……」」

「シアさんに任せて大正解だぜ」

「「……」」

「ん? ん? どした?」

「「……」」

「なーに黙ってんだ?」

「うるっさいわねえ!」


 声が遠ざかってく。
 優しい光だけがオレを満たしていく。

「ぅぅ……」

 ずっと受けていた治療とはまったく違う。
 比べ物にならないほどかけ離れた治癒魔法。
 シアの腕がここまでだったとは……。


「うるせえのは、ブリギッテの声だろうが」

「……」

「って、おい、すげえぞ。こりゃ狂化の心配も無用だな」

「……」

「ほんっと、おめえら、シアさんに感謝しろよ」

「……あんたもね」

「はあ? 俺は治療に反対してねえけど」

「それでも、実際に治癒魔法を使っているのはシアさんでしょ。サージは何もしてないわよね」

「ずっと見守ってたぜ」

「それを何もしてないって言うの」


 さっきまでオレを支配しようとしていた、あの黒い衝動が消えていく。
 今はもう、ほとんど何も感じねえ。
 感じるのは、ああ、心地良さだけだ。

「……」

 このままいきゃあ、本当に治っちまう。
 衝動は失せ、鱗も消えて、完治しちまう。

 前回とはまったく違う結果に……??

 前回?
 何だ?
 前回って?

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