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第12章 激闘編
特別な治療
<ギリオン視点>
「シア、こっちに来るんだ!」
「そうよ、下がって、シアさん!」
「いいえ、ここで治療します!」
ヴァーンとブリギッテの手を振り払うシア。
梃子でも動かねえつもりか。
なら、やっぱりオレが。
「っ!」
オレが!
「……」
駄目だ。
何度やっても、足が動かねえ。
「ぐっ!」
その上、嫌な衝動まで湧き上がってきやがる。
「治療を始めますので、できるだけ力を抜いてくださいね、ギリオンさん」
力を抜く?
それどころじゃねえぞ。
「がっ、うぐっ」
今はまだギリギリで耐えてんが、長くは無理だ。
だから、頼む。
逃げてくれ、シア!
「治癒の光よ、ここに集い彼の者に癒しを!」
そんな思いを無視するように、魔法治療が始まっちまった。
「っ!」
柔らかな光が顔を、体を照らしてくる。
「……ぅぅ」
ゆっくり優しく沁みてくる。
「……」
「……」
「……」
悪かねえ。
心地いいとさえ思っちまう。
けんど。
「やめ、ろ」
治療しても無駄なんだ。
大して効果がないことは、さっきまで受けていた治療で分かってる。
「大丈夫ですよ、ギリオンさん」
だから、治療するより。
「やめて、逃げ、ろ」
「絶対治しますから」
「逃げ……」
「もう少しの辛抱ですから」
こいつ、聞いてねえ。
「もう少し、もう少しです」
「……」
「ギリオンさん?」
「……」
「そろそろ眠くなってきましたか?」
まあ……。
「これは特別な治癒なので、眠くなるのが普通なんです。よかったら、目を閉じてくださいね」
「……」
シアの言葉につられて、自然と目が閉じちまう。
「効いてそうだな」
「……そうね、さすがだわ」
「はは、これ完璧じゃねえか。まっ、おめえら2人は反対してたけどよぉ」
「「……」」
「シアさんに任せて大正解だぜ」
「「……」」
「ん? ん? どした?」
「「……」」
「なーに黙ってんだ?」
「うるっさいわねえ!」
声が遠ざかってく。
優しい光だけがオレを満たしていく。
「ぅぅ……」
ずっと受けていた治療とはまったく違う。
比べ物にならないほどかけ離れた治癒魔法。
シアの腕がここまでだったとは……。
「うるせえのは、ブリギッテの声だろうが」
「……」
「って、おい、すげえぞ。こりゃ狂化の心配も無用だな」
「……」
「ほんっと、おめえら、シアさんに感謝しろよ」
「……あんたもね」
「はあ? 俺は治療に反対してねえけど」
「それでも、実際に治癒魔法を使っているのはシアさんでしょ。サージは何もしてないわよね」
「ずっと見守ってたぜ」
「それを何もしてないって言うの」
さっきまでオレを支配しようとしていた、あの黒い衝動が消えていく。
今はもう、ほとんど何も感じねえ。
感じるのは、ああ、心地良さだけだ。
「……」
このままいきゃあ、本当に治っちまう。
衝動は失せ、鱗も消えて、完治しちまう。
前回とはまったく違う結果に……??
前回?
何だ?
前回って?
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