30年待たされた異世界転移

明之 想

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第2章 エンノア編

山に棲む者 2

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「フォルディ様、そちらは?」

「ゲオ、ミレン、サキュルス、この方はボクの命の恩人だ」

「そうでしたか」

「だから、心配する必要はない」

「……はい」

 こんな感じで、一応納得はしてくれたのだが。
 地底人云々は聞けずじまい。
 さすがに、あなた方は地底人ですかとは聞きづらいからな。

 まあ、そのうち分かるだろう。


 さてと。
 今この広いとは言えない空間に、俺、3人の男性、俺が助けた男性の5人がそろっている。
 さすがに、ここに5人は手狭だろうということで、移動して話をすることになった。

 なのだけど、移動した先には……。

 ドーム球場以上の空間が広がっていたんだよ。
 さらに、その広い空間内に数軒の家屋が点在している。

 ここって地下だよな?

 ……。

 広すぎるだろ。
 驚きだ。

 地下の空洞内にこんなに広い空間があって、そこに家まで建てられているとは。
 想像もしていなかった。

 そんな感慨を抱いている俺の前に差し出された手。

「我がエンノアへようこそ」

 差し出された手を取り、しっかりと握手をする。

「よろしくお願いします」

 その後、俺の前に集まって来た人たち全員と握手を交わすことになってしまった。





「なるほど……」

 今はこの広い空間内の中央にある広場のような場所に座って、ここに至る経緯を説明している途中。
 参加者はさっきまでの5人に加えてあと2人。この集落の長である老人とその補佐の方が参加している。

「そんなことが……」

 みんな生成りの一枚布で作られた貫頭衣のような服を着ているが、長の老人だけは貫頭衣の上に獣の皮で作られた上着を身につけている。

 最初に俺が握手をしたのは、この長老のような老人だ。
 握手はこの世界でも行われる一般的な習慣らしいな。


 簡単に説明を終えた後。

「この出会いに感謝を」

 長老が左手の掌と右手の握り拳を胸の前で合わせ、そのまま俺に向かって腰を折る。頭を上げた後、今度は広場の中央に鎮座する石像に向かって再び頭を下げた。

 このお辞儀のようなものは彼らの礼式、礼法なのだろうか?

 こちらの疑問の表情に気づいた長老がすぐにその説明をしてくれた。

 曰く、胸の前で手を合わせ腰を折る動作は感謝を表す礼法で、まず感謝する対象に、次に彼らの信仰する神に頭を下げるらしい。
 今回の場合は、まず俺に頭を下げ、次に彼らの信仰する神の石像に頭を下げるのが正しい作法になるとのこと。

 ちなみに、彼らが信仰しているのは知恵と時と魔法を司るトトメリウス神という神様。
 広場の中央にあるトトメリウス神の石像を見てみると、人の身体に鳥の頭を持つ神様だということが分かる。

「私からも感謝を」
「私からも」
「私も」
「同じく」
「……」

 長老に続いて、残りの5人が俺に対して同様の礼を尽くしてくれる。

 ……。

 礼節を尽くしたこの態度には感心させられる。
 けれど、ここまでされると恐縮してしまうというのが正直な感想だな。




「しかし、剣の一撃で地面が崩落するとは、にわかには信じがたいですな」

「ゼミア様、本当のことです。ボクがこの目で見ましたから」

「フォルディを疑っているわけではない。ただ、あまりのことに驚いてな。ブラッドウルフを倒す一撃とは、そこまで凄まじいものなんじゃのう」

「……」

 俺自身も剣で地面にあんな穴を作ってしまうなんて、思ってもみなかったからな。

「それはともかく、フォルディを助けていただいたこと、心から感謝いたします」

「いえ、偶然通りかかっただけですので」

「偶然にしても、ブラッドウルフから命を救ってくださったのは事実ですから」

「はあ、まあ……」

「感謝して当然です」

「命を助けていただき、ありがとうございました」




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