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第2章 エンノア編
エンノア 14
しおりを挟むエンノアの広場では、ゼミアさんスペリスさんをはじめ多くのエンノアの人に迎えられ、握手の連続。
今回はフォルディさんだけじゃなく、ユーリアさんも助けることができたからだろう、前回よりもさらに歓迎されているように感じる。
それはありがたいことなんだが……。
やはり、長老のゼミアさんを目の前にすると複雑な感情が浮かんできてしまう。
ひとまず保留することにしたものの、疑心という感情は消せないからな。
とはいえ、ここは考える場面じゃない。
ひとまず封印しないとな。
ということで、治療以外の考えを封印して臨んだエンノア。
なんとか、いや、無理やり話を作って今は療養室に移動中。
前回のように地下の案内などはしてもらっていない。
とにかくスピード勝負だ。
予定通り進めないと、これから日本に戻って、今夜こちらに再訪することができなくなるのだから。
「こちらになります」
そう言って室内を案内してくれるのはサキュルスさん。
彼が主になってこの病を担当しているらしい。
「では、順番に診たいと思います」
療養室としてあてがわれた室内には18名の患者。
その中に……。
いた!
前回、亡くなられた患者の方が横になっている。
よかった。
まだ命がある。
……。
もちろん、この時間にはまだ無事だったということは分かっている。
それでも、直接目にすると安心してしまうんだ。
ふぅ。
心を落ち着け。
「症状の重い方から診させてもらいます」
まずは目当ての患者のもとに足を運ぶ。
「楽にしてください」
横たわったままの状態で俺の問診に答えてもらう。
これも2回目なので、流れるように進んでいく。
しかし、この患者さん……アデリナさんはかなり辛そうに見えるが、明後日の未明に亡くなるほどには見えない。
けど、それが事実。
……。
この人以外は前回の時間の流れの中で、ビタミンを与えることで症状の改善を確認している。このアデリナさんだけがビタミンによる症状改善を確認できていないんだ。
俺が薬類を持ってエンノアに到着した時には既に亡くなっていたから当然なのだが、それでも、確認できていないということは実際にビタミンが効果を発揮するかは不明だということ。
だから、とにかく早くこの人のもとにビタミンなどの薬類を届けたい。
「ありがとうございました。ゆっくり休んでください」
こうやって問診した限りでは、他の患者さんとも変わりはないように思える。
ここから急変したということか。
やはり、時間との戦いだな。
「では次に……」
残りの重症者、中軽症者とつづけて診ていく。
もちろん、これも2回目なのでスムーズに進んでいく。
そして。
「これで終了です」
18名の診察は前回と比べることもできない程の僅かな時間で終了した。
場所を移して、広場にある集会場。
「コーキ殿、本当に治癒できるのでしょうか?」
「おそらく、薬があれば大丈夫だと思います」
ビタミン類の説明をしている時間がもったいない。
なので、ただ薬というだけで話を進める。
「おお!」
「なんと!」
「本当に?」
周りの人の口から漏れる言葉を無視して、さらに話を進める。
「その薬を手に入れるために、私は街に戻らねばなりません」
「……」
「それで、さっそくなのですが、今からオルドウに戻り必要な品を手に入れて来ます」
「今すぐでしょうか?」
「はい」
「……フォルディとユーリアの命の恩人を、何の歓待もせずお返しするわけにはまいりません」
「それは、ありがたいことですが、事は急を要します。特に症状の重い方々には早急に薬を与える必要がありますから」
時間がない。
こうして話をしている時間も無駄なんだ。
「そう言われましても……」
「早ければ今日中に戻りますので、話はその後にお願いします。とにかく、一刻も早く薬を差し上げたいんです」
ゼミアさんの顔を見つめ、言葉に強い気持ちを込める。
「そこまで急ぐ容体なのでしょうか?」
「そうです」
「……分かりました」
よかった。
これで、アデリナさんの回復の可能性が高まる。
「では、先ほどの出入口まで案内をお願いします」
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