30年待たされた異世界転移

明之 想

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第2章 エンノア編

異能 2

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「当時の祖先はテポレン山の地中だけでなく地上でも、というより、むしろその多くは地上で暮らしておりました。そんなエンノアでしたが時が経つにつれて一部の者がテポレン山を離れて暮らし始めるようになり、そんな我らの能力を高く評価する当時の権力者たちと近い関係を築き始めたのです」

 記憶を操ることができる能力を持っているのだから、それを知った権力者が放置するはずもないか。

「最盛期にはテポレン山で暮らす住民の数の5倍以上の者が都市部で暮らしていたとのことです。しかし、その蜜月関係も長く続くものではありませんでした。我らの能力によって、地位を追われる者が続出したからです」

「なるほど」

「その結果、権力者の多くが疑心暗鬼に陥り、次は我が身と不安を抱く者が増えていきました」

「エンノアの皆さんを保護する権力者はいなかったのですか?」

「もちろん、おりました。当初はエンノアの力を頼り我らを保護する者もかなり存在したとのことです」

「そうですよね」

「はい……。ですが、我らを糾弾する勢力が次第に力を持ち始め、ついにエンノアへの迫害が始まったのです」

 エンノアを求める者より、エンノアを恐れる者の力が勝ったというわけか。

「その容赦のない迫害により、地上での居場所をなくしたエンノアの大半は再びテポレン山へ戻り、そして地下へと追われることになったという訳です」

 テポレン山で暮らすエンノアの人々は地上と地下の両方を上手く活用して生活していたらしいが、迫害されていた当時は地下で暮らす者が多かったのだろう。

「その後、近隣との交流を極力避け、この地に隠れ住み続けたこともあり、現在のエンノアには地上の者への警戒心が強く残っているのです」

「その心情は納得できます。しかし、私には最初から友好的に接してくれましたよね」

「それは、ユーリアとボクの命の恩人ですから当然ですよ」

「それでも警戒した方が良いのでは?」

「コーキさんのことは、その、他のことも含め信用できる方だと判断したからです」

「……」

 信用してくれるのは、ありがたいことだが。
 何か引っかかるものがあるな。

「それに今となっては、コーキさんはエンノアを病から救っていただいた大恩人です。そんな方を信用しないなど、ありえないことです」

「……そうですか」

「コーキさんほどではありませんが、エンノアに対し友好的に接してくれる方には、警戒を解くこともやぶさかではありません」

「……」

「今でも数年に1度程度のことですが、偶然が重なりエンノアを訪れることになる者がおります」

 それは前回聞いたな。

「その者が我らに友好的であれば、やはり、それ相応の待遇で迎えますので」

 それは、まあ、そうなんだろう。

「ただし、友好的でない場合は……」

 問題だな。

「その者たちが地上に戻った後、我らの存在を広め権力者の耳に届くことになればどうなるか。我らは常に不安を抱えることになります」

 権力者に知られると、迫害されるのか?
 それとも、利用されるのか?

 いや、それ以前にエンノアの異能を理解しているのか。

「キュベリッツやレザンジュといった隣国の権力者は、皆さんの異能について知っているのでしょうか?」

「おそらく、この500年で人々の記憶からはほぼ消えていると思われます。我らと交流していた時でさえ、異能については一部の者しか知りませんでしたから。ただ、文献などには残っている可能性もあるかと」

「それならば、そこまで警戒しなくても良いのではないですか?」

「冷静に考えれば、そうなのですが……。エンノアには、どうしても拭い去れない不安がありまして」

「コーキ殿、我らにもこの存念は如何ともしがたいのです」

「なるほど、納得いたしました」

 迫害の歴史、その記憶が心底まで根付いているのかもしれないな。

「そういう訳で、こちらを訪れた全ての方に、エンノアについては口外しないようお願いしているのですが、それを守ってくれる訪問者ばかりではなく」

 そこで、記憶操作というわけか。
 確かに、それを使う気持ちは理解できる。

 操作されたこっちの気分は良くはないけど。

「ですから、我らの憂慮を取り除くため訪問者の心の内を覗き、口外する可能性がある者については、記憶を操作することにしたのです。ああ、記憶操作された者が不調をきたすことはありませんので」

 うん?
 心の内を覗くだって?

「ちょっと待ってください。人の心を覗くこともできるのですか?」

「はい、記憶操作よりは容易です」

 ということは、俺の心の中も覗かれたのか。
 まさか、異なる世界から来たことも知られたのでは!?

 ここで3人以上に露見していたら、おしまいだぞ。



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