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第3章 救出編
魔落 3
しおりを挟む「携帯食も紅茶も、それにお薬も全て素晴らしかったです。今まで口にしていたものとは全く違いました」
「そう言ってもらえると、私も嬉しいですよ」
「そんな、嬉しいのは私の方ですから」
しかし、このセレスティーヌ様の笑顔。
とんでもないぞ!
魅力が何倍にも増加している。
暗い表情の時でさえ、その美貌は驚くほどのものだったのに、笑顔になるともう言葉も出ない。
これぞ、絶世の美女、傾国の美女ってところだな。
いや、美少女かな。
うん、でも、まあ、良かったよ。
セレスティーヌ様同様、俺も食事を終えると少し楽になったような気がするな。
そんなささやかながらも満足のいく夕食後。
ふたりでこれからの方針を話し合い、今夜はこのままここで野宿して休むことに決定。
明日の早朝からこの地中を探索して、何とか脱出を試みるということになった。
「では、もうお休みください」
「はい」
用意した簡易の寝床で、セレスティーヌ様には休んでもらう。
こんな場所で眠るというのは貴族のお嬢様にとっては大変なことだと思うが、今夜のところは我慢してもらいたい。
幸い、この場の気温は寒くも暑くもなく眠るのに支障はない。
それに、携帯用のアルミブランケットを身体の上にかけているので、風邪をひくこともないはず。
そんなことを俺が考えている間に、あっという間にセレスティーヌ様は寝入ってしまったようだ。
こんな寝床で眠ることに慣れているはずはないのに。
相当疲れていたのだろうな。
翌朝。
簡単に食事を済ませ、ふたりでこの未知なる場所を探索することになったのだが……。
どうやら、ここは俺の想像以上に広いようだ。
周りを探索してすぐに分かったことは、俺たちが落ちてきた地点はおそらく円筒形のような空間の下部だということ。直径100メートル以上あるような円柱空間の底部で俺たちは休んでいたようだな。
落下してきたであろう上方は、何度眺めても上にただ空間が広がるだけ。
目ぼしいものは何も見当たらない。
ここを登るなんて想像もつかないな。
そんなわけで、円柱空間の底部。
昨夜休んだ植物密集地帯とは反対の方向、そちらの方向に伸びている横穴のような空間を今は探索しているのだけれど。
「どこまで続いているのでしょうか?」
俺と共に歩くセレスティーヌ様の顔色は良いし姿勢もしっかりとしている。
体調はまずまず回復したと思っても間違いはないかな。
それでも、その震えるような声音からは不安が隠しきれていない。
「分かりませんが、とりあえず進んでみましょう」
歩きながら横穴の先を眺めてみても……。
横穴というか大通路、いや通路と呼べるような規模じゃないな。
そう、大洞窟のように広い空間が先にどこまでも続いているだけ。
そのようにしか見えない。
「地上まで続いていれば、良いのですが」
「……そうですね」
本当にそうであったら問題なんてないのだが、あまり期待はできない。
テポレン山中に存在するこんな大きな空洞が地上まで続いているのなら、エンノアの人たちが話してくれているはずだから。
そんな思いの裏で、フォルディさんの言葉が頭から離れない。
フォルディさんから聞いたテポレン山北側の地下に存在するという魔落。
絶えず瘴気の立ち込めるその空間では、強力な魔物が跋扈しているという異質な世界。
俺たちが今歩いているのは、その魔落の中なのではないだろうか?
昨日から抱いているその考えが、どうしても気になってしまう。
もしここが魔落なら、セレスティーヌ様を護りながら無事脱出できるものなのか?
強力な魔物が棲みついているという魔落から無事に。
「……」
ただ、この地下が本当に魔落なら、既に魔物に遭遇しているはず。
なのに、昨夜から今にいたるまで魔物らしき姿を全く目にしていない。
それに……。
瘴気というほどの澱みも感じられない。
ということは……。
やはり、ただの地下空洞という可能性もある、よな。
「……」
「どうかしましたか?」
まあ、ここがどこであれ、今できることは限られている。
「いえ、今は先に進みましょう」
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