30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
241 / 1,640
第3章 救出編

智と時と魔法を司るもの 1


『では、去るが好い』

「はい。……ですが、その」

 この神域からの去り方が分からない。
 そもそも、俺たちはどうしてこの神域に入ることができたんだ?

 方法が分からないのだから。

「どうやって去れば良いのか分からないのです。恥ずかしながら、トトメリウス様の神域に足を踏み入れることができた理由も私には……」

『テポレンの地中とこの地は繫がっておるからの、そこから迷い込んだのであろう。が、この領域は本来ならば人の身で立入ることなど叶わぬ地。どれ』

 再び虚空を見つめ、さらにこちらに目を向けるトトメリウス様。
 その眼が僅かに光ったかと思うと……。

 頭の中に風が吹いたような感覚?

 これは、頭の中を読まれた?

『……なるほど』

 納得されているようだが、こちらは全く理解できない。

其方そちは時を司る異界のものの加護を得ておるのじゃよ。その加護の力ゆえ、吾の領域に入ることができたというわけじゃな』

 時を司るもの?
 神様?

 俺が加護を得ているとしたら……。

 あの神様しかいないよな。
 それしか考えられない。

 そうかぁ、あの神様は時を司っていたのか。

 いろいろと腑に落ちることがあるな。

 しかし、異界の神様だったとは。

『ふむ、ふむ、ほう……。小さきものながら其方は面白い。加護を得るだけのことはあるようじゃ』

 こちらを見ながら頷いている。
 何が面白いのか、まったく分からないが。
 トトメリウス様が評価してくれるのなら、それはそれで良いことなんだろう。

『とはいえ、少し贔屓が過ぎるかの。異界のものの業に意見するつもりはないのじゃが、その加護を受けた異世界の者が吾のこの世界で活動するというのなら……。そう、話は別じゃな』

 贔屓が過ぎる。
 確かに、思い当たる点が多過ぎる。

「コーキさん。神様は何を話されているの?」

 耳元で囁くセレス様。
 ここまで、ずっと黙って聞いてくれていたけれど。
 今のトトメリウス様の言葉に疑問を持ったのか。

 そうだよな。

「私のことだと思いますので、少し話してみます。ここは任せてください」

「……分かったわ」

 ここは引き下がってくれたが、完全に納得したわけじゃないだろう。

 申し訳ない。
 あとで話すからさ。

「贔屓とは、どのようなものでしょう?」

『その力を持つ其方は充分に分かっておろう。経験もしておるはずじゃ』

 時を司る神様から受けた恩恵。
 覚えがあり過ぎるんですよ。

 そう……。

 神様からは多くのギフトをいただいた。
 最近も、アイテム収納のギフトをいただいたばかりだ。

「……」

『そなた、のものに余程気に入られておるようじゃ』

 そうなのか?

 ……そうなんだろうな。

「ありがたいことです」

『じゃが、吾の世界ではその力は過ぎたるもの。異世界人といえど、認められんの』

「といいますと?」

 どうなるんだ?
 どの恩恵なんだ?

 トトメリウス様相手に抵抗できるわけもないし、そのつもりもないが。
 一体何を?

 トトメリウス様が俺の目の前に手をかざし、それを左右に振る。
 時間にして数秒。

 何だ、この感覚?
 力が抜けるような……。

『吾の世界に異世界の者は必要ない。そなたを元の世界に戻してやろうかとも思ったのじゃが』

 なっ!?

 まさか!
 それだけは許してほしい。

『彼のものの顔を立てて、そこは見逃してやろう。じゃが、そなたの持つ力を1つ奪っておいたぞ』

「……はい」

 よかったぁ。
 本当に、良かった。

 この世界での活動が許されるのなら、それだけで……。

 ふぅ。
 とりあえず、一息つけた。

 しかし、もし異世界間移動を禁じられていたらと思うと。
 心が張り裂けそうになるな。

 ……。

 それで、無くなった力とは?
 すぐさま、ステータスを確認する。

 すると……。


<ギフト>
異世界間移動  基礎魔法  鑑定初級  エストラル語理解 アイテム収納


 何度見ても、ギフト欄にはこれだけしか表示されていない。

 ということは……。

 ギフト欄から、セーブ&リセットが消えた。
 そういうこと。

『吾の世界で異世界の者の活動を許すのじゃ。光栄に思うと良い』

「……ありがとうございます」

 セーブ&リセットのギフトを失ってしまった。

 異世界での活動を許された喜びが大きいとはいえ。
 ショックはある。

 これからは、この世界で大きな失敗をしてもやり直すことはできないのだから。
 失敗したら、それっきりなんだ。


感想 11

あなたにおすすめの小説

ひだまりのFランク冒険者

みなと劉
ファンタジー
ここは異世界。 そこの冒険者ギルドでは毎日仕事がてんこ盛り。 そんな中 冒険者ギルドには万年Fランクの冒険者が一人いる。 その名は、リルド。 彼は、特に何もない感じに毎日 「薬草採取」「石集め」Fランク向け「討伐」場合によっては「ポーション生成」をする。 この話はこの万年Fランク冒険者リルドの物語である。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

[完]異世界銭湯

三園 七詩
ファンタジー
下町で昔ながらの薪で沸かす銭湯を経営する一家が住んでいた。 しかし近くにスーパー銭湯が出来てから客足が激減…このままでは店を畳むしかない、そう思っていた。 暗い気持ちで目覚め、いつもの習慣のように準備をしようと外に出ると…そこは見慣れた下町ではなく見たことも無い場所に銭湯は建っていた…

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

病弱設定されているようです

との
恋愛
『あのようにご立派な家門にお産まれになられたのに⋯⋯お可哀想なご令嬢だそうですのよ』 なんて噂が流れているけれど、誰も会ったことがないミリー・ミッドランド侯爵令嬢。 ネグレクトなんて言葉はない時代に生まれ落ちて、前世の記憶を取り戻したら⋯⋯。 前世の記憶と共に無双します! 再開しました。完結まで続投です。 ーーーーーー 恋愛小説大賞27位、ありがとうございました(感謝) ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定。 完結確定、R15は念の為・・