30年待たされた異世界転移

明之 想

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第4章 異能編

和見幸奈 5

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※ 今話はセンシティブな内容となっております。
※ 苦手な方は、読まずに次話に進んでください。

※ 性的描写ではございません。


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<和見幸奈視点>


 15歳当時のわたしは、父の命令ならどんなことでも拒否せず従っていた。
 従うことで父に受け入れられ、愛されると。
 あり得ない可能性にすがっていたのだと思う。

 だけど、その時はさすがに……。




 脱ぎなさいという父の言葉。

 いくら父の言葉でも、全てを脱いで裸になることには抵抗を感じてしまう。
 だから、下着だけでも着けることが許されて良かった。

 良かったけれど……。

「何をしている。早くしなさい」

「……はい」

 父の声に反応するわたし。
 いまだ残る躊躇を、シャツとともに脱ぎ去る。
 そして、下着姿に。

「……お父様」

 父の顔も言葉も無機質そのもの。

「わたしは、どうすれば?」

 下着姿のわたしへ向ける視線にも、変わりはない。
 興味など微塵も感じられない。

 それでも、やっぱり……。

 恥ずかしい。
 こんな姿を見られるなんて。

「浴槽に入りなさい」

「この、中にですか?」

 浴槽の中には深紅よりもっと深く濃い不気味な液体。
 気持ちが悪いなんてものではない。

「はやく!」

 何度も見せるわたしの躊躇に、父の声が厳しさを増す。
 その声を拒否することなどできるわけもなく。

「……はい」

 指示通り浴槽の中に身体を入れる。
 すると、ねっとりとしたその液体が密度をもって身体に絡みついてきた。

 生温い上、若干の異臭も……。

 本当に気持ちが悪い。
 ゾッとする。

「……お父様?」

「そこに頭を置いて、しばらく横になっていなさい」

「……はい」

 枕のように高くなっている箇所に頭を置き仰向けに横たわると、深紅の液体が身体を覆い隠してくれた。

「……」

 まとわりつくような液体の不快さに変わりはないけれど、肌を隠せた安堵感の方が先立ち、一息ついてしまう。

「それは異能発現効果のある特別な液体だ。これから当分の間は、その液体に浸かることになるだろう」

 やはり、異能。
 そうだと思った。

 父がわたしに興味を抱くなんてことは、異能以外にあり得ないのだから。

「……」

「15歳になったその身体には、これが最後のチャンスになる。分かっているな」

「……分かっています」

「よろしい。では、これから隔日でここに来るように」

「……はい」

 わたしにそれ以外の返事などあるはずもない。

 それでも、このくらいなら問題はない。
 もちろん不快ではあるけれど、液体の中で少し横になっていればいいだけなのだから。

 この時は、そう思っていた……。



 それからは、1日おきに地下室に足を運び深紅の液体に身体を浸すという生活が始まった。

 短くて2時間、長い時には休憩も含めて4時間もの間地下室にとどまるという生活。
 最初の頃こそ、父は近くでわたしの様子を眺めていたけれど、次第にわたしを地下室に放置して階上へ戻ることが増えていった。

 ひとり地下の空間で液体に浸る。
 長時間のそれは決して心地良いものではない。
 特にはじめの数日は、辛くて仕方なかった。

 それでも、人は慣れるもの。
 こんな液体にも慣れてしまうもの。

 傍で父に見られてさえいなければ。
 ある程度は、気楽に過ごすことができるようになっていった。


 そんな生活が1月程度過ぎた頃。
 1度目の変化が訪れることになる。

 わたしに異能発現の兆しが全く見えないということで、液体の効果を高めるための特殊な素材が追加されるようになったのだ。

 それは……。
 それは……。

 できれば、言葉にもしたくない。
 おぞましい。

 おぞましく、忌まわしいモノ。
 
 ……。

 ……。

 見たこともないような多くの虫の死骸だった。

 ……。

 ……。

 それらを浴槽に入れられた時のこと。
 忘れられない。
 この先も決して忘れることはないだろう。

 決して、決して……。

 人には言えない。

 コーキに知られちゃいけない。

 こんなわたし……。




 見た目にもおぞましい数々の不気味な死骸が深紅の中に浮かんでいる。
 気持ちが悪い。

「……」

 それがわたしの素肌にあたるザワザワした感触。
 粟立つ肌をおさえきれない。

「……」

 深紅の液体と混ざった鼻をさす異臭。
 吐きそうになる。

「……」

 辛い。

 辛い。

 


 それでも、わたしに異能発現の兆しは見られなかった。
 だから、当然のように2度目の変化がやってくることに……。

 次に加えられたのは虫ではない。

 ああ……。

 ああぁ……。

 ……。

 ……。

 それは……。

 それは、様々な……。


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