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第5章 王都編
記憶
アリマ青年と戦う予感がするだって。
それは?
「模擬戦?」
「違うわ」
「実戦で戦う予感なのかい?」
「ええ」
困る。
リーナが実戦で相手なんかしたら、大変なことになるぞ。
彼を壊すのはやめてほしい。
「お手柔らかに頼めるかな」
「当たるとも限らない、ただの予感よ」
「それでも、だよ」
リーナの予感はよく当たるからさ。
「彼のこと、本当に気に入ったのね」
「君と同じくらいにはね」
「……」
「アリマ青年がオルドウ出身の冒険者だというのが気になる?」
「……」
やっぱりね。
「もう諦めた方がいい、彼を探すのは」
「別に探してないわ」
「いいや、探しているね。君が頻繁にオルドウに立ち寄っていることを僕が知らないとでも思っているのかい」
リーナは剣姫の姿でも自身の姿でも、オルドウをよく訪れている。
「……仕事のついでよ」
「オルドウに立ち寄るのは別にいいんだ。でもね、彼を探しても無駄だよ」
「……分かってる」
「それなら、いいけど」
この10年の間、見つけることができなかったんだ。
今さら……。
「ねえ」
「うん?」
「あの人……似てない?」
アリマ青年が似ている?
「コーキにかい?」
「……ええ」
「ここからじゃ、顔は良く見えないなぁ……。でも、髪色が違うじゃないか。コーキは珍しい黒髪だったんだから。似ているとしても、別人だろうね」
「……」
「ラピタルの偽宝を持っているなら、話は変わってくるけどさ」
ラピタルの偽宝は髪色、眼の色、顔のつくりなどに変化を及ばす宝具。
その宝具を使っているなら、彼がコーキである可能性もなくはない。
とはいえ。
「あり得ないだろ」
秘宝とも呼ばれる貴重な宝具を持っているわけがない。
「……そうね」
それに、名前も違うのだから。
「そんなわけないわよね」
「ああ」
「……」
「……」
あれは10年前。
オルドウ大祭に招待された時のこと。
領主館に用意された部屋をリーナとふたりで抜け出し、大祭に沸くオルドウの街を見て回ったんだよな。
ああ、もちろん、影は僕たちのあとについて来たけれど、彼らはいつも隠れて僕を護っているだけだから。事が起こるまでは姿を現さないし、余計なことを口にすることもない。
リーナとふたりきりみたいなものだ。
で、その時に出会ったのがコーキ。
珍しい黒髪に目を引かれ魔球合戦に誘ったものの、髪色以外はいたって平凡な子供だった。
役に立たないメンバーだった。
けど、最後の試合で……。
魔力を見事に使いこなしてみせたんだ!
最初は上手く扱えなかった魔力を僅かな時間で!
リーナも驚くほどの魔力運用だった。
「……」
ふふっ。
それにしても、あれは痛快だったなぁ。
負けたあいつらの顔と言ったら。
何度思い出しても、笑みがこぼれてしまう。
「……」
あの試合の勝利。
あの優勝は、コーキの一投のおかげ。
最初は足を引っ張るだけだったコーキの活躍で、優勝できたんだ。
それなのに……。
コーキは消えてしまった。
広場に集合と言ったのに。
賞品も渡せていないのに。
「……」
あの日以降。
何度もオルドウの街を探させたけど、コーキを見つけることはできなかった。
手掛かりのひとつも。
そんなコーキを今さら……。
「……魔球合戦の間だけ」
「え?」
「コーキと過ごした時間は、本当に短い時間だった」
だというのに。
「記憶に残っている。鮮烈にね」
そう。
僕だけじゃなく、リーナの心にも。
「不思議だな」
「ええ……」
****************************
※ リーナ(剣姫)は時間ができると、オルドウの街を訪れているようです。
※ 第1章『再び 14』でコーキが見かけたのはリーナになります。
※ 第1章『男子会 2』でヴァーンが、第3章『緊急事態 3』でギルドマスターが剣姫のオルドウ滞在について話しています。
それは?
「模擬戦?」
「違うわ」
「実戦で戦う予感なのかい?」
「ええ」
困る。
リーナが実戦で相手なんかしたら、大変なことになるぞ。
彼を壊すのはやめてほしい。
「お手柔らかに頼めるかな」
「当たるとも限らない、ただの予感よ」
「それでも、だよ」
リーナの予感はよく当たるからさ。
「彼のこと、本当に気に入ったのね」
「君と同じくらいにはね」
「……」
「アリマ青年がオルドウ出身の冒険者だというのが気になる?」
「……」
やっぱりね。
「もう諦めた方がいい、彼を探すのは」
「別に探してないわ」
「いいや、探しているね。君が頻繁にオルドウに立ち寄っていることを僕が知らないとでも思っているのかい」
リーナは剣姫の姿でも自身の姿でも、オルドウをよく訪れている。
「……仕事のついでよ」
「オルドウに立ち寄るのは別にいいんだ。でもね、彼を探しても無駄だよ」
「……分かってる」
「それなら、いいけど」
この10年の間、見つけることができなかったんだ。
今さら……。
「ねえ」
「うん?」
「あの人……似てない?」
アリマ青年が似ている?
「コーキにかい?」
「……ええ」
「ここからじゃ、顔は良く見えないなぁ……。でも、髪色が違うじゃないか。コーキは珍しい黒髪だったんだから。似ているとしても、別人だろうね」
「……」
「ラピタルの偽宝を持っているなら、話は変わってくるけどさ」
ラピタルの偽宝は髪色、眼の色、顔のつくりなどに変化を及ばす宝具。
その宝具を使っているなら、彼がコーキである可能性もなくはない。
とはいえ。
「あり得ないだろ」
秘宝とも呼ばれる貴重な宝具を持っているわけがない。
「……そうね」
それに、名前も違うのだから。
「そんなわけないわよね」
「ああ」
「……」
「……」
あれは10年前。
オルドウ大祭に招待された時のこと。
領主館に用意された部屋をリーナとふたりで抜け出し、大祭に沸くオルドウの街を見て回ったんだよな。
ああ、もちろん、影は僕たちのあとについて来たけれど、彼らはいつも隠れて僕を護っているだけだから。事が起こるまでは姿を現さないし、余計なことを口にすることもない。
リーナとふたりきりみたいなものだ。
で、その時に出会ったのがコーキ。
珍しい黒髪に目を引かれ魔球合戦に誘ったものの、髪色以外はいたって平凡な子供だった。
役に立たないメンバーだった。
けど、最後の試合で……。
魔力を見事に使いこなしてみせたんだ!
最初は上手く扱えなかった魔力を僅かな時間で!
リーナも驚くほどの魔力運用だった。
「……」
ふふっ。
それにしても、あれは痛快だったなぁ。
負けたあいつらの顔と言ったら。
何度思い出しても、笑みがこぼれてしまう。
「……」
あの試合の勝利。
あの優勝は、コーキの一投のおかげ。
最初は足を引っ張るだけだったコーキの活躍で、優勝できたんだ。
それなのに……。
コーキは消えてしまった。
広場に集合と言ったのに。
賞品も渡せていないのに。
「……」
あの日以降。
何度もオルドウの街を探させたけど、コーキを見つけることはできなかった。
手掛かりのひとつも。
そんなコーキを今さら……。
「……魔球合戦の間だけ」
「え?」
「コーキと過ごした時間は、本当に短い時間だった」
だというのに。
「記憶に残っている。鮮烈にね」
そう。
僕だけじゃなく、リーナの心にも。
「不思議だな」
「ええ……」
****************************
※ リーナ(剣姫)は時間ができると、オルドウの街を訪れているようです。
※ 第1章『再び 14』でコーキが見かけたのはリーナになります。
※ 第1章『男子会 2』でヴァーンが、第3章『緊急事態 3』でギルドマスターが剣姫のオルドウ滞在について話しています。
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