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第6章 移ろう魂編
ワディン領へ
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
「セレス様、体調はいかがですか?」
「ありがとう。もう大丈夫です」
「それでしたら良いのですが……。しばらくは馬車の中ですので、もし体調が悪くなった場合はすぐにおっしゃってくださいね」
「分かりました。シアさん、ありがと」
ワディン領に向けての旅が始まってすぐ。
馬車での移動で体調を崩してしまったわたしを、皆さんが気遣ってくれた。
特にシアさんは、ずっと傍にいてくれる。
今も私のすぐ横に。
「……」
「本当に平気ですので」
馬車に酔って最初は気持ちが悪くなってしまったけれど。
少し慣れてきたのか、今は問題ないのだから。
そんなに心配しないで。
「……はい」
わたしが目覚めてから、シアさんはわたしの心配ばかり。
シアさんも疲れているのに、申し訳なくなってしまう。
でも、どうして馬車に酔ったんだろ?
わたしは馬車に乗り慣れていたはず。
馬車酔いの経験も皆無、のはず……。
数日意識を失っていた影響がまだ残っているの?
まだ無理しちゃいけないのかな?
「セレスティーヌ様、今後体調に変化があった場合は、すぐにお知らせください」
「ディアナさん、ありがとう」
「いえ……私に礼など不要です。敬称も必要ありませんので」
「……」
「ユーフィリアと私はセレス様の護衛騎士なのですから」
「えっと、そうですね」
敬称、それにわたしのこの口調。
皆さんが言うには、以前のわたしの口調とは違うみたい。
丁寧な言葉遣いは止めてほしいと何度も言われてしまって……。
皆さんの言うことも理解できるのだけど、それでもやっぱり、しっくりこないと言うか違和感があるというか。
どうしても丁寧な言葉になってしまう。
色々と自分のことを思い出せたのに、口調は元に戻せない。
その上、こういう思考自体にも何かおかしな感じが?
思考も口調も、今のわたしと昔のわたしが混ざっているような?
自分でも不自然だと思う。
だから……。
何とかしないと。
頑張らないと。
皆さんがわたしのために頑張ってくれているのだから、わたしも!
「セレス様、わたしのこともシアとお呼び下さいね」
「はい。すぐには難しいですが、少しずつ……」
「……」
ああ。
シアさん、困ったような顔を。
「ごめんなさい。なるべく、早く慣れるようにしますから」
「いえ、セレス様、そんなことを! こちらこそ申し訳ありません」
わたしが謝ると一転して、焦り始めるシアさん。
「シアさんが謝る必要なんてありませんよ」
「ですが……」
「本当にいいんです」
「……はい」
「それより……。わたしも以前の自分に戻れるよう努力しますから、シアさんも今のわたしに慣れてくれれば嬉しいです」
「……そうですよね。今のセレス様に」
「あっ、少しずつでいいんですよ」
シアさんの気遣いはとっても嬉しいんだけど。
わたしの言葉に過剰に反応するところがあるので、ちょっとだけ対応に困ってしまう。
このあたりも、自分が元の自分に戻れていない証拠だ。
「はい。わたしの考えが足りず申し訳ありませんでした」
「だから、謝らないでくださいね」
「……」
「そうだぜ、シア。セレスさんがこう言ってるんだから、少し気楽にすればいいんだ」
「ヴァーン……」
「ヴァーン、お前はもっと遠慮しろ」
「ディアナがこんなこと言ってますが、どうしましょうか? セレスさん」
「ふふ、ヴァーンさんは今のままでいいですよ」
「だそうだぜ」
「ちっ!」
「おっ? 今舌打ちしただろ。そいつぁ、騎士様とは思えねえ態度だなぁ」
「うるさい。おまえには言われたくない」
「はっ、そうかよ」
「おまえ! 大体だな……」
ディアナさんとヴァーンさんが、また口論を始めてしまいました。
もう既に何度か見かけたこの光景……。
「あれは気にしなくていいですから」
「分かってますよ、アル君」
きっと、あのふたりは気が合うんだと思う。
ほんと、とても楽しそう。
「セレス様……アル君っていうのは、さすがに……」
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彼のことは弟みたいに思えてしまって、アル君と呼ぶのがピッタリなんだけど。
本人が嫌だというなら、アルと呼べるようにならなきゃ。
「あの、以前のわたしは皆さんのことを敬称をつけずに呼んでいたのですよね?」
「はい。ヴァーンやコーキ先生以外は呼び捨てにされていました」
「……そうなのですね」
実感はないし、どうしてもしっくりこない。
でも、シアさんがそういうのだから間違いない。
みんなを敬称なしかぁ……。
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