30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

異なる世界 3

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 荒涼とした鉄錆色の大地。
 生温かく濁った赤銅色の空。
 現実の世界とは思えない、不気味な赤に覆われた空間。

 そこに存在するのは、剣姫と俺、それに魔物たちの死骸だけ。
 エビルズピークの悪意という、わけの分からない怪物の姿は見えない。


「転送されたのか?」

「そうかもしれません」

「しかし、空も地も赤とはな」

「……」

「このような奇妙な地など、聞いたこともない」

「キュベリッツ王国内ではないのでしょうか?」

「キュベリッツでもレザンジュでもない。いや、エストラルに存在するのかも怪しいものだ」

「異なる大陸だと?」

「分からぬ。そもそも、ここは人の暮らす世界なのか?」

 それについては、俺も疑問に思っていたところだ。

「……」

 人外の地といえば、トトメリウス様の神域、魔落。
 この赤の世界、魔落とは雰囲気は異なるものの、どこか似ている気もする。

「考えても無駄であろうな」

 確かに。
 ここで長考しても正解を導き出せるわけがない。

「それよりだ。あの竜のごとき化け物を退治るか? それとも、この地からの脱出を図るか?」

「退治するにしても、相手がいませんよ」

「その内に姿を現すだろ」

「私たちを遠隔地に転送しただけなら、もう姿を現さない可能性もありますが」

「……」

「とりあえず、この地を調べてみませんか?」

「うむ。あいつが現れるまで、探索するのも悪くない」

「では、このまま進んでみましょう」


 鉄錆色の大地を踏みしめ、ゆっくりと歩を進める。
 もちろん、方向など分からない。
 北に向かっているのか、南なのか?
 どこに向かっているのか?

 ホワイトアウトとは言わないまでも、軽く方向感覚が麻痺するほどには視界が悪い。

「想像以上に歩きづらいな」

「……そうですね」

 赤銅色に濁った空間の透明度の低さは相当で、周囲や先を見渡すこともできないのだから当然だ。

 ジャリ。

 ジャリ。

 ジャリ。

 足裏がとらえるのは、赤茶けた砂利ばかり。

「……」

 不気味な幻想のような世界。
 そんな地に存在するのは、俺と剣姫と魔物の死骸のみ。

 当初はそう思っていたものだが、実際はそんなわけがない
 足下には大地が存在するし、大地には砂利と大小さまざまな石、岩が転がっている。

 ただ、生あるものは俺と剣姫だけ。
 これは間違いなさそうだ。

 ジャリ。

 それでも、この両足に覚える感触が強烈に訴えかけてくる。
 ここは幻の中じゃない。実在しているのだと。

 ジャリ。

 ジャリ。

 ジャリッ。

「っ!?」

「イリサヴィア様、足下には気を付けてください」

 見通しが悪いため、油断すると躓いてしまう。

「……君もな」



 そんな調子で数分は歩き続けただろうか。
 突然、濁った視界の奥に奇妙なものが入ってきた。

「アリマ、見えるか?」

「……なんとか」

 ただし、はっきりとは見えない。
 いや、認識できないだけか?

「……奇っ怪な」

「ええ」

 話しながらも、ふたりの足は止まらない。
 直後、到着した先には……!?

 暗黒??

「何なのだ、これは?」

「……分かりません」

 分かるわけがない。
 ここまで続いた鉄錆色の地が途絶え、赤銅色の空が消え、目の前には暗闇だけが存在しているのだから。

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