30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

改良

「完璧には程遠いがな」

 完璧ではなく微量。
 それでいて、この威力。

「不完全でこれは素晴らしいです! もう少し魔力を増やせれば、鱗を破壊できますよ!」

 初めて経験した魔力内部付与の剣撃。
 微量であっても、剣表面へのそれとは比べ物にならない。

 よし!
 希望が見えてきたぞ。
 
「……うむ」

 なのに、剣姫は浮かぬ顔。

「どうしました? 何か問題でも?」

「内部付与はかなり繊細な操作が必要になる」

 容易じゃない、か。

「微量でも定着させるのは困難だ。なかなか安定しない。増量となると……」

 魔力増量、その上時間が限られるなら、なおさらなのだろう。

「私も挑戦しますよ、イリサヴィア様」

「……」

「あいつの次の進化前に完了しなくてもいいですから。今はこれに挑戦すべきです」

 できれば、進化までに間に合わせたい。
 が、無理なら仕方ない。

「続けましょう」

「そう、だな」

「では、内部付与を教授ください」



 剣内部への魔力付与訓練開始から1日が経過。
 微量なら、剣姫の内部付与も安定してきた。ただし、増量となると不安定なまま。
 それでも、次戦は内部付与を施した剣で戦えることは確実だな。

 一方俺は……まだ内部付与に成功していない。
 何度繰り返しても内部に定着しないんだ。
 剣姫の魔力運用が特別優秀なのか、それとも魔剣ドゥエリンガーが優れているからか?
 
 とりあえず、今は表面付与で戦うしかない。
 若干改善された魔力付与剣で。

「……」

 あいつの次の進化は?
 次回の戦闘後か次々回か?
 いずれにしろ、近々だろう。
 そうすると、ここ2回の戦闘が極めて重要になってくる。

「アリマ?」

「……すみません。訓練を続けましょう」

 俺も剣姫も準備万端とは言いがたい。
 けれど、戦いは待ってくれないんだ。

 ならば!
 今の俺たちで勝ちに行くのみ!




*************************

<セレスティーヌ視点(姿は和見幸奈)>



「最近、変な客が多いと思わないか、姉さん」

「……そうね」

「父さんの仕事関係とは思えないような人ばかりだよなぁ」

「……」

「全身黒ずくめで、黒の帽子と手袋に黒のベールまで着けてる女性もいたんだぜ」

 武志君、壬生さんを見たのね。

「他にも怪しい雰囲気のやつばかりでさ。気味が悪いよ」

 おそらく、和見の父が異能の関係者を家に呼んでいるのだろう。

「ずっと家にいなかった僕が言える立場じゃないけど……。父さん、おかしいよな」

 武志君が家に戻って来て落ち着いた父が、また異能に傾倒し始めたのよ。
 それで、私が言うことを聞かないから焦っている。今はそんな状態だと思う。

「とにかく、変なやつばかりだから。姉さんは近づかない方がいい」

 先日、和見の父と壬生さんに対して強く抵抗して以降、父からは何も言われていない。ただ、時折私を見つめる目には、ぞっとするような念がこもっている。

 あの目を見ていると、このままでは済まない、父は諦めていないと感じてしまう。


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