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第7章 南部編
潜伏
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今回の偵察任務。
ウラハムの魔眼のせいで大変な目に遭うところだったが、エリシティア様にいただいた書面と記章のおかげで何とか難を逃れることができた。それどころか、王軍の内情をそれなりに見知ることもできた。
一時はどうなるかと思ったものの、結果的には上手くいったってことかな。
とはいえ、今回は運が良かっただけ。
全てはエリシティア様のおかげなのだから。
ただ、正直なところ……。
エリシティア様からの褒賞を利用して彼女の母国の兵士たち相手にこういうことをするのは、気が引けるものがある。
ローンドルヌ駐留軍にはエリシティア様子飼いの騎士たちが多いとのことだから、余計にそう感じてしまう。
けれど今は、俺の感傷よりセレス様と幸奈の無事を優先すべき。
そのためにも、まずはローンドルヌ大橋を無事に通過する必要がある。
そう割り切るべきところなんだが。
どうしても、エリシティア様に対する申し訳ない気持ちを拭い切れない。
なので、ここは借りひとつ。
今回は、そう思っておくことにしよう。
「ここでよろしいですか?」
「ああ……そうですね」
ローンドルヌ大橋南端まで案内してくれたトゥオヴィ配下のレザンジュ騎士。
約束通り、いや、それ以上の対応で解放してくれた。
「ここまでの案内、感謝いたします」
「とんでもない、エリシティア様の恩人は我らが恩人も同様なのですから。この程度、なんてことはないです」
ほら。
こんなこと、さらっと言ってくれるから。
心がちくっと痛むんだよ。
「それでは、この先の旅路が良いものになることを祈っております」
さらに、祈願まで。
やりづらいこと、この上ないな。
「あなたも……」
だから、こんな言葉しか返せない。
若干決まりが悪い別れの言葉を交わした後、そのまま南へと歩を進め。
足早にローンドルヌ大橋をあとにした俺。
もう既に、大橋を視認できない場所まで足を運んでいる。
「……」
さっきのローンドルヌ南岸偵察。
間違いなく、収穫はあった。
俺の気持ちは別にして、ここまでは上々と言える出来だ。
ただし、問題はこれから。
自由になったのはいいが、レザンジュ王軍に面が割れてしまったのはいただけないな。
このまま南岸に戻って駐留部隊の様子を窺うなんて、できそうもない。
そうは言っても、今日明日あたりにローンドルヌ大橋を渡って戻るという選択肢も取りがたいものがある。
この流れで、北岸に戻るのは明らかに不自然だろ。
今後のことを考えれば、やめた方がいい。
ローンドルヌ河を泳ぎ渡るというのも、とりあえずは避けるべきか。
となると、今は簡単には皆のもとに戻ることもできない状況ってことだな。
セレス様達への連絡については手紙を投擲すればいいから、差し障りはないものの……。
「……」
仕方ない。
しばらくは遠方から無難に偵察をして様子を探ることにしよう。
それからどう動くかは、状況を見て判断するしかない。
まずは、落ち着ける場所を確保だ。
ということで、街道をさらに南下し小さな村に到着。
今はその村で休憩をしているところ。
ただし、あまり落ち着ける状態でもない。
レザンジュ兵が近くで俺を監視しているからだ。
まあ……。
レザンジュ側による尾行は想定内。
この局面で、俺を完全に信用する方がどうかしているというもの。
尾行なんて当然のことだろう。
とはいえ、動きづらい状況であることに変わりはない、な。
「……」
さて。
この監視下で、何をするか?
色々とすべきことはあるが。
白昼堂々動けない現状では……。
一度日本に戻るべきかな?
異世界間移動の後、最短の滞在でこっちに戻れば丁度良い時間になるはず。
日本でやっておきたいこともある。
そうだな。
やはり、ここは日本に戻るとしよう。
と、その前に一応ステータス確認を。
「鑑定……!?」
なっ!
これは、どういうことだ?
こちらの世界の露見欄に4という数字が点滅している。
露見4/3となって点滅を!!
ウラハムの魔眼のせいで大変な目に遭うところだったが、エリシティア様にいただいた書面と記章のおかげで何とか難を逃れることができた。それどころか、王軍の内情をそれなりに見知ることもできた。
一時はどうなるかと思ったものの、結果的には上手くいったってことかな。
とはいえ、今回は運が良かっただけ。
全てはエリシティア様のおかげなのだから。
ただ、正直なところ……。
エリシティア様からの褒賞を利用して彼女の母国の兵士たち相手にこういうことをするのは、気が引けるものがある。
ローンドルヌ駐留軍にはエリシティア様子飼いの騎士たちが多いとのことだから、余計にそう感じてしまう。
けれど今は、俺の感傷よりセレス様と幸奈の無事を優先すべき。
そのためにも、まずはローンドルヌ大橋を無事に通過する必要がある。
そう割り切るべきところなんだが。
どうしても、エリシティア様に対する申し訳ない気持ちを拭い切れない。
なので、ここは借りひとつ。
今回は、そう思っておくことにしよう。
「ここでよろしいですか?」
「ああ……そうですね」
ローンドルヌ大橋南端まで案内してくれたトゥオヴィ配下のレザンジュ騎士。
約束通り、いや、それ以上の対応で解放してくれた。
「ここまでの案内、感謝いたします」
「とんでもない、エリシティア様の恩人は我らが恩人も同様なのですから。この程度、なんてことはないです」
ほら。
こんなこと、さらっと言ってくれるから。
心がちくっと痛むんだよ。
「それでは、この先の旅路が良いものになることを祈っております」
さらに、祈願まで。
やりづらいこと、この上ないな。
「あなたも……」
だから、こんな言葉しか返せない。
若干決まりが悪い別れの言葉を交わした後、そのまま南へと歩を進め。
足早にローンドルヌ大橋をあとにした俺。
もう既に、大橋を視認できない場所まで足を運んでいる。
「……」
さっきのローンドルヌ南岸偵察。
間違いなく、収穫はあった。
俺の気持ちは別にして、ここまでは上々と言える出来だ。
ただし、問題はこれから。
自由になったのはいいが、レザンジュ王軍に面が割れてしまったのはいただけないな。
このまま南岸に戻って駐留部隊の様子を窺うなんて、できそうもない。
そうは言っても、今日明日あたりにローンドルヌ大橋を渡って戻るという選択肢も取りがたいものがある。
この流れで、北岸に戻るのは明らかに不自然だろ。
今後のことを考えれば、やめた方がいい。
ローンドルヌ河を泳ぎ渡るというのも、とりあえずは避けるべきか。
となると、今は簡単には皆のもとに戻ることもできない状況ってことだな。
セレス様達への連絡については手紙を投擲すればいいから、差し障りはないものの……。
「……」
仕方ない。
しばらくは遠方から無難に偵察をして様子を探ることにしよう。
それからどう動くかは、状況を見て判断するしかない。
まずは、落ち着ける場所を確保だ。
ということで、街道をさらに南下し小さな村に到着。
今はその村で休憩をしているところ。
ただし、あまり落ち着ける状態でもない。
レザンジュ兵が近くで俺を監視しているからだ。
まあ……。
レザンジュ側による尾行は想定内。
この局面で、俺を完全に信用する方がどうかしているというもの。
尾行なんて当然のことだろう。
とはいえ、動きづらい状況であることに変わりはない、な。
「……」
さて。
この監視下で、何をするか?
色々とすべきことはあるが。
白昼堂々動けない現状では……。
一度日本に戻るべきかな?
異世界間移動の後、最短の滞在でこっちに戻れば丁度良い時間になるはず。
日本でやっておきたいこともある。
そうだな。
やはり、ここは日本に戻るとしよう。
と、その前に一応ステータス確認を。
「鑑定……!?」
なっ!
これは、どういうことだ?
こちらの世界の露見欄に4という数字が点滅している。
露見4/3となって点滅を!!
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