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第7章 南部編
トゥレイズ子爵 2
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「そんな……」
「「「「「「閣下!!」」」」」
しまった!
王軍に気を取られるあまり、子爵への警戒を怠っていた。
いや、違う。
子爵のことを疑ってなかったんだ。
子爵家は数世代にわたりワディンに尽くしている家門。
信頼できる忠臣、そう聞いていたから……。
今、この状況で油断していいわけがないのに!
やってしまった。
「貴様ぁ!!」
胸を鮮血で染めた辺境伯。
傍らにいた数名の護衛騎士はトゥレイズの兵によって既に斬り伏せられている。
「血が、血が! 誰かお父様を助けて!」
樹林に幸奈の悲痛な声が響く中。
ルボルグ隊長やワディン騎士たちが動こうとしているが、トゥレイズの兵たちに囲まれた状況では、迂闊にセレス様のもとを離れられない。
セレス様の護衛を何より優先するようにと辺境伯から命令されていた影響もあるのだろう。
俺とヴァーンも同様。
100人のトゥレイズ兵は無視できない。
それに、まだ裏切り者がいる可能性だってある。
簡単には動けないんだ。
「よくも、裏切ってくれたな!」
「裏切るとは、おかしなことを」
「……」
「確かに、我が家門はワディン家の寄子です。これまでお世話になってきたことも事実です。ですが、我々はワディンの臣下ではない!」
「レザンジュに、降るつもりか!」
「降る? はは……。我らはレザンジュ王国の臣。レザンジュの民ですよ」
「……」
「閣下は理解した方がいい。ワディンの正義が全てではないということを。トゥレイズにも正義があるということを。もちろん、レザンジュにも」
「……」
「とはいえ、私もこんなことをしたくはなかった。あなたが病床であのまま……」
「まさか、こ、この体調不良も貴様のせいなのか!」
「ふっ、どうでしょうね」
「ゴフッ! ……よくも!」
「閣下、もう充分! 充分なのですよ。……我々はこれまでワディンのために献身してきました。そして、多くの民を犠牲に……」
「……」
「残念ですが」
「っ! ゴホッ!」
「……ここまでです」
「き、さま! ゴボッ!」
辺境伯は胸に大きな傷を負いながらも、気丈に話し続けている。
ただ、あの傷では。
「お父様、お父様ぁ!」
「セレス様、駄目です。ここを離れないでください」
「でも、お父様が! シアさん!」
「分かってます。ですが!」
「早く、急がないと!」
セレス様の護衛騎士たちが動けない中、幸奈は自ら伯爵に駆け寄ろうと一歩踏み出した。
そんな幸奈を止めるシア。
「今動かれるのは危険です。どうか、我慢してください」
「待ってたら手遅れに!」
「セレス様……」
「ゴホッ、ゴホッ!」
「レザンジュ王家と敵対した閣下が悪いんですよ」
「……」
「あなたが大人しく王家に従っていれば、何も問題はなかったんです」
「っ! ゴボッ!」
辺境伯が地面に膝をついてしまった。
「お父様ぁ!!」
「「「「「閣下!!」」」」」
「来るな! おまえたちはセレスを護るんだ!」
「「「「「……」」」」」
「娘に向けるその優しさを我らにも少しいただければ、違う未来もあったでしょうね」
「ゴホッ……セレスをどうするつもりだ!」
「ここで消える閣下に教える必要はありません。あなたは、ただ静かに去ればいい」
「貴様!」
「皆の者、神娘を捕えよ」
「「「「「「「はっ!!」」」」」」」
「ワディン騎士たちは、始末してもよい」
子爵の号令に、俺たちを囲んでいたトゥレイズの兵たちが詰め寄ってくる。
その兵数は約100。
対するこちらは20。
後遣隊の中にはワディンの騎士もいるが、今ここにいるのはこの数だけ。
「「「「「「閣下!!」」」」」
しまった!
王軍に気を取られるあまり、子爵への警戒を怠っていた。
いや、違う。
子爵のことを疑ってなかったんだ。
子爵家は数世代にわたりワディンに尽くしている家門。
信頼できる忠臣、そう聞いていたから……。
今、この状況で油断していいわけがないのに!
やってしまった。
「貴様ぁ!!」
胸を鮮血で染めた辺境伯。
傍らにいた数名の護衛騎士はトゥレイズの兵によって既に斬り伏せられている。
「血が、血が! 誰かお父様を助けて!」
樹林に幸奈の悲痛な声が響く中。
ルボルグ隊長やワディン騎士たちが動こうとしているが、トゥレイズの兵たちに囲まれた状況では、迂闊にセレス様のもとを離れられない。
セレス様の護衛を何より優先するようにと辺境伯から命令されていた影響もあるのだろう。
俺とヴァーンも同様。
100人のトゥレイズ兵は無視できない。
それに、まだ裏切り者がいる可能性だってある。
簡単には動けないんだ。
「よくも、裏切ってくれたな!」
「裏切るとは、おかしなことを」
「……」
「確かに、我が家門はワディン家の寄子です。これまでお世話になってきたことも事実です。ですが、我々はワディンの臣下ではない!」
「レザンジュに、降るつもりか!」
「降る? はは……。我らはレザンジュ王国の臣。レザンジュの民ですよ」
「……」
「閣下は理解した方がいい。ワディンの正義が全てではないということを。トゥレイズにも正義があるということを。もちろん、レザンジュにも」
「……」
「とはいえ、私もこんなことをしたくはなかった。あなたが病床であのまま……」
「まさか、こ、この体調不良も貴様のせいなのか!」
「ふっ、どうでしょうね」
「ゴフッ! ……よくも!」
「閣下、もう充分! 充分なのですよ。……我々はこれまでワディンのために献身してきました。そして、多くの民を犠牲に……」
「……」
「残念ですが」
「っ! ゴホッ!」
「……ここまでです」
「き、さま! ゴボッ!」
辺境伯は胸に大きな傷を負いながらも、気丈に話し続けている。
ただ、あの傷では。
「お父様、お父様ぁ!」
「セレス様、駄目です。ここを離れないでください」
「でも、お父様が! シアさん!」
「分かってます。ですが!」
「早く、急がないと!」
セレス様の護衛騎士たちが動けない中、幸奈は自ら伯爵に駆け寄ろうと一歩踏み出した。
そんな幸奈を止めるシア。
「今動かれるのは危険です。どうか、我慢してください」
「待ってたら手遅れに!」
「セレス様……」
「ゴホッ、ゴホッ!」
「レザンジュ王家と敵対した閣下が悪いんですよ」
「……」
「あなたが大人しく王家に従っていれば、何も問題はなかったんです」
「っ! ゴボッ!」
辺境伯が地面に膝をついてしまった。
「お父様ぁ!!」
「「「「「閣下!!」」」」」
「来るな! おまえたちはセレスを護るんだ!」
「「「「「……」」」」」
「娘に向けるその優しさを我らにも少しいただければ、違う未来もあったでしょうね」
「ゴホッ……セレスをどうするつもりだ!」
「ここで消える閣下に教える必要はありません。あなたは、ただ静かに去ればいい」
「貴様!」
「皆の者、神娘を捕えよ」
「「「「「「「はっ!!」」」」」」」
「ワディン騎士たちは、始末してもよい」
子爵の号令に、俺たちを囲んでいたトゥレイズの兵たちが詰め寄ってくる。
その兵数は約100。
対するこちらは20。
後遣隊の中にはワディンの騎士もいるが、今ここにいるのはこの数だけ。
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