30年待たされた異世界転移

明之 想

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第7章 南部編

出血

<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>



 お父様の口元には大量の鮮血!
 胸の傷口は塞がっているのに、どうして?

「申し訳ありません。私の治癒魔法では内臓の治療は難しく……」

 えっ?

「内臓に大きな損傷があるのですか?」

「おそらく、その可能性が高いかと」

 コーキさんが途方に暮れている。
 こんな表情見たことない。
 内臓の傷がそれほど酷いの?

「っ!」
 
 お父様、さっきまでは平気だと言ってたのに!
 もう痛くない、傷は塞がっていると言っていたのに!

「あるいは、子爵が使った宝剣に毒や呪の類が施されていたか……」

 毒、呪い!
 そんな卑怯なことまで!

「とにかく今は、内臓の出血をできるだけ止めなければいけません」

「おまえたち、治癒魔法の強度を上げるんだ」

「「はっ」」

 コーキさんとワディン騎士2人が治癒魔法の発動を続け、同時に魔法薬も使っている現状。これ以上どんな治療をすればいいの?

「……」

 神娘の権能。
 祝福の力。

 記憶を失ってから今まで一度も使えなかったけれど。
 今この場で使えれば!
 使えるようになれば!

 そう!
 わたしが力に目覚めればいいのよ!

 お願いです、ローディン様。
 わたしにもう一度だけ力をお授けください!


「ゴホッ……苦労を、かけるな」

「閣下、そのようなことは決して!」

「そうです。お父様は回復だけに専念してください」

 必ず助けますから!

「ゴホゥ……うむ」

「……」

 皆が懸命に治療を続けてくれている。
 わたしは、わたしも……。




「ゴホッ、ゴホッ!」

 お父様の咳が止まらない。
 出血も。

 わたしも変わらず無力なまま。
 変わったのは。

 騎士2人の治癒魔法。
 治癒の光が弱まりつつある。
 魔力残量が限界に近い!

「ぐっ、うぅ……」

 ああ!
 ついに1人の魔力が尽き、治癒の光が消えてしまった。

「ゴホッ!」

 お父様の容態に変化はないのに。

「……もう、よい。ゴフッ!」

「「「閣下?」」」

「もう、よいのだ」

「お父様?」

「「「「……」」」」

「自分のことはよく分かっておる。私の内臓にこれ以上の治療は無駄というもの」

「そんなことないです! このまま治療を続ければ、きっと!」

「ゴフッ! ……治療のおかげで、こうして時間をもらえた。セレスと話すこともできる。それだけで満足だよ」

「話なんて、この先いつでもできますから! だから、だから、どうか!」

「……」

「閣下、まだ魔法薬もあります。治療はこれからです!」

「ルボルグ!」

「はっ」

「治療より娘と2人で話す時間を。よいであろう?」

「閣下……」

「お父様……」

「セレス、ルボルグ、コーキ殿、老いぼれの願いを聞き入れてくれんか?」

「「「……」」」

「治療は……話をした後に、また受けよう」

「……分かりました」

「……」

 ルボルグ隊長と2人の騎士が下がっていく。
 コーキさんも。

 残されたのは、お父様とわたしだけ。


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