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第8章 南部動乱編
黒都カーンゴルム 2
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<ヴァルター視点>
まっ、レザンジュ王はワディナートから黒都に戻ったばかり。
それに今はまだワディン紛争の最中で、ワディン領南部も騒がしい。
無理もないか。
「……」
とにかくだ。
これで、ようやく面会が叶う。
レザンジュ王に会うことができる。
お嬢が実父と対面できるんだ!
うむ。
さっさと宿に戻るとしよう。
冒険者ギルドから外に出て、空を見上げてみると。
既に雨はやんでいた。
陰鬱な空気も幾分晴れているような気がする。
こうなると、大通りを歩くのも悪くないと思えてしまうから不思議だ。
オレの気分なんて所詮そんなものか。
といった軽い気持ちと身体で軽快に歩を進め。
宿までの道のりの半分を経過したところで。
「……」
足をゆるめ、思わず顎を撫でてしまう。
迷った時のオレの癖だな。
「はあ~」
早く宿に戻って、お嬢の喜ぶ顔を見たいのに。
「……」
仕方ない。
少しばかり釘を刺しておくか。
ウィル様、ちょっと待っててくださいよ。
少々遠回りにはなるが。
大通りから外へ遠ざかるように足を進め。
幾つか通りを曲がると、わずかに悪臭が漂い始めてきた。
汚物特有の臭いだ。
「……」
異臭の漂う汚れた路地を黙々と歩き続け完全な裏道に到着。
狭い路地は人がすれ違うのがやっとの細さ。
さてと。
「そろそろ顔を見せたらどうだ?」
「……」
「ずっと尾行していたのは分かっているんだぞ」
おそらく、黒都の冒険者だろう。
「……」
ただ現状は、殺意も害意も感じられない。
とはいえ、王との面会が決まった以上放置してはおけないからな。
「どうした、逃げるつもりか?」
逃げるなら追走するのみ。
が、観念したようだ。
「……」
オレの前に現れたのは女性冒険者。
しかも、かなり若い。
「理由を説明してもらおう」
「……何を?」
「尾行の理由だな。今さら惚けても意味がないぞ」
「……」
「言えないのか?」
もちろん、簡単に喋らないことなど承知している。
それでも、見逃がすわけにはいかないんだよ。
「……こっちは何もしていない。後ろを歩いていただけだ」
「こんな路地裏までか」
「ああ」
開き直ったな。
「それが通じると?」
「私は何もしていない。おまえに害など与えていないだろ!」
「……」
尾行というのは、そこが難しい。
確たる証拠など無いようなものだから。
とはいえ、やり様はある。
「分かっているならいい。私は帰らせてもらう」
「許すと思っているのか?」
「……」
「ここで話すかギルドで話すかの二択だ。どっちを選ぶ?」
「……」
また沈黙。
「確かに、後ろを歩いてただけじゃ犯罪にはならない。が、冒険者がそれを見逃すとでも? 冒険者ギルドにも罰則はあるんだぞ」
「……」
「とりあえず、ギルド証を見せろ」
見せる気はない、か。
なら。
「冒険者ギルドに行くとしよう」
「くっ!」
逃げようとする女性冒険者の手を掴み、引き寄せる。
「やめろ!」
「……」
「くそっ!」
暴れても無駄だぞ。
「放せ!」
「放してほしいなら、まず名乗ったらどうだ」
「名乗ったら見逃してくれんのかよ?」
「尾行の理由も話してもらう」
「理由を話せば見逃すんだな?」
「……おまえを処断することはやめてやろう」
「……」
「どうする?」
「……分かった。全部話すから見逃してほしい」
この状況で、よく言えたな。
が、まあ……。
そう悪い奴にも見えないか。
「私はラルス。黒都の冒険者パーティー憂鬱な薔薇のメンバーだ」
まっ、レザンジュ王はワディナートから黒都に戻ったばかり。
それに今はまだワディン紛争の最中で、ワディン領南部も騒がしい。
無理もないか。
「……」
とにかくだ。
これで、ようやく面会が叶う。
レザンジュ王に会うことができる。
お嬢が実父と対面できるんだ!
うむ。
さっさと宿に戻るとしよう。
冒険者ギルドから外に出て、空を見上げてみると。
既に雨はやんでいた。
陰鬱な空気も幾分晴れているような気がする。
こうなると、大通りを歩くのも悪くないと思えてしまうから不思議だ。
オレの気分なんて所詮そんなものか。
といった軽い気持ちと身体で軽快に歩を進め。
宿までの道のりの半分を経過したところで。
「……」
足をゆるめ、思わず顎を撫でてしまう。
迷った時のオレの癖だな。
「はあ~」
早く宿に戻って、お嬢の喜ぶ顔を見たいのに。
「……」
仕方ない。
少しばかり釘を刺しておくか。
ウィル様、ちょっと待っててくださいよ。
少々遠回りにはなるが。
大通りから外へ遠ざかるように足を進め。
幾つか通りを曲がると、わずかに悪臭が漂い始めてきた。
汚物特有の臭いだ。
「……」
異臭の漂う汚れた路地を黙々と歩き続け完全な裏道に到着。
狭い路地は人がすれ違うのがやっとの細さ。
さてと。
「そろそろ顔を見せたらどうだ?」
「……」
「ずっと尾行していたのは分かっているんだぞ」
おそらく、黒都の冒険者だろう。
「……」
ただ現状は、殺意も害意も感じられない。
とはいえ、王との面会が決まった以上放置してはおけないからな。
「どうした、逃げるつもりか?」
逃げるなら追走するのみ。
が、観念したようだ。
「……」
オレの前に現れたのは女性冒険者。
しかも、かなり若い。
「理由を説明してもらおう」
「……何を?」
「尾行の理由だな。今さら惚けても意味がないぞ」
「……」
「言えないのか?」
もちろん、簡単に喋らないことなど承知している。
それでも、見逃がすわけにはいかないんだよ。
「……こっちは何もしていない。後ろを歩いていただけだ」
「こんな路地裏までか」
「ああ」
開き直ったな。
「それが通じると?」
「私は何もしていない。おまえに害など与えていないだろ!」
「……」
尾行というのは、そこが難しい。
確たる証拠など無いようなものだから。
とはいえ、やり様はある。
「分かっているならいい。私は帰らせてもらう」
「許すと思っているのか?」
「……」
「ここで話すかギルドで話すかの二択だ。どっちを選ぶ?」
「……」
また沈黙。
「確かに、後ろを歩いてただけじゃ犯罪にはならない。が、冒険者がそれを見逃すとでも? 冒険者ギルドにも罰則はあるんだぞ」
「……」
「とりあえず、ギルド証を見せろ」
見せる気はない、か。
なら。
「冒険者ギルドに行くとしよう」
「くっ!」
逃げようとする女性冒険者の手を掴み、引き寄せる。
「やめろ!」
「……」
「くそっ!」
暴れても無駄だぞ。
「放せ!」
「放してほしいなら、まず名乗ったらどうだ」
「名乗ったら見逃してくれんのかよ?」
「尾行の理由も話してもらう」
「理由を話せば見逃すんだな?」
「……おまえを処断することはやめてやろう」
「……」
「どうする?」
「……分かった。全部話すから見逃してほしい」
この状況で、よく言えたな。
が、まあ……。
そう悪い奴にも見えないか。
「私はラルス。黒都の冒険者パーティー憂鬱な薔薇のメンバーだ」
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