30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 5

 遂にこの時が来た。

 ザッ、ザッ、ザッ。
 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

 今のところ王軍に妙な動きは見られない。
 こちらの迎撃態勢をある程度理解していても、真正面からの進軍を選んだようだ。
 数で押し切る作戦、それに尽きるということか。

 なら、こっちはそれを受け止めるだけ。

 ザッ、ザッ、ザッ。

 あと20歩。
 敵の先陣がA地点に入ろうとしている。

 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

 あと10歩。
 もう少しだ。

 5、4、3、2……。

「ゼミアさん!」

「撃てぇ!!」

 ゼミアさんの掛け声と同時に、エンノアの魔道具隊からクロスボウの矢が放たれた。
 黒線が蒼天を埋め尽くすように空を駆け、敵先陣へ。


「来たぞ、構えろぉ!!」

「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」
「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」
「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」

 初撃に備える王軍先陣。
 両手に盾を1つずつ持った歩兵5人が1組になって前後左右、上方に10の盾を構え、その場に膝をつき待機している。

「「「「「ドーン!!」」」」」

「「「「「バーン!!」」」」」

「「「「「ドガーン!!」」」」」

 炸裂した魔法矢が王軍に襲いかかる!
 が……。

「「「「「おお!」」」」」

「耐えたぞ!」

「いける」

 魔法矢の効果は……。
 前回の半分もないか。




***********************

<和見幸奈視点(姿はセレス)>



 結局、コーキさんとは深い話をすることもできず、この日を迎えてしまった。
 戦いが始まってしまった。

「コーキさん……」

 山道の奥、小高い場所に設置された本陣。
 その中にいる今も、絶えず感じてしまう違和感。
 喉元まで出かかっている、この……。

「セレスティーヌ様、不安だとは思いますが、ここは私たちにお任せください」

 ディアナさん……。

「はい、皆さんにお任せしますし、信じております」

 レザンジュの大軍との戦いがどうなるのか?
 その心配や不安はとても大きい。
 何よりも大きい。

 そんなの当然だ。

 ただ、こうしてコーキさんの姿を見ていると……。
 どうしても考えてしまう。

「コーキ殿が心配ですか?」

「えっ!」

 急にそんなこと。

「コーキ殿のことが気になるのですよね?」

「……」

 ディアナさんの言う通りだ。
 それが偽りのない本当のわたしの気持ち。

 でも今は……。
 今は戦闘が行われている最中。
 無理を言って本陣にまで出てきたのに、戦闘以外のことを考えるなんて。

「セレスティーヌ様……」

「……」

 ディアナさんに対して答えられない。
 上手く言葉が出てこない。

 だから、咄嗟に口から出てしまったのが。

「その、コーキさんの作戦が心配で」

 こんな言葉。
 でも、嘘じゃないから。

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