30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

治療 10


「シア、少しは楽になったか?」

「姉さん?」

「さむ……」

「コーキさん、まだ寒いって!」

「ああ」

 分かってる。

 魔法と薬がどれほど優れていようとも、失った血が戻ることはない。
 当然、すぐに寒さが消えることもないだろう。
 それでも、治癒魔法と魔法薬以外に手段はない。
 この治療を続けるしか!

 全ての神経を魔力行使に集中して治癒魔法を継続、治癒状態を保持。

「「……」」

「「……」」



 すると。

「コーキ!」

「コーキさん!」

 少しではあるが、シアの血色が戻ってきた。
 呼吸も落ち着きつつある。

「シア、寒さは?」

「……さむ、くない」

「そうか! 寒くないんだな!」

「……うん」

「姉さん、息は苦しくないか?」

「……だいじょうぶ。でも……眠い」

「眠い? コーキ?」

 ここでシアが眠さを感じるのが良いことなのか悪いことなのかは判断できない。
 それでも今の様子を見るに、最悪の事態ではないはず。
 なら、眠らせた方がいい。

「シア、このまま治療を続けるから安心して眠ってくれ」

「先生、ありが……」

 言い終わる前に睡眠状態に入ってしまった。

「コーキ、大丈夫なんだよな?」

 もう大丈夫なのか?

「……」

 はっきりとは分からない。
 ただ、顔色と呼吸が戻ってきていることだけは確か。

「コーキさん?」

 失った血を戻すことはできなくとも、治癒魔法でシアのこの容態を維持できるなら。いずれ根本的な回復に向かってくれる。そう信じたい。

「どうなんだ?」

 何より、治癒者である俺が弱気になってる場合じゃないだろ。
 患者とその周囲を不安にさせて良いことなどないのだから。

「このまま治療を続ければ、大丈夫」

「そうか! そうだよな!」

 安心したように息を吐くヴァーン。

「よかった……。コーキさん、ありがとう」

 安堵の声で感謝を口にするアル。

「……」

 回復傾向にあるとはいえ、先がまだ分からない状況でこれは心苦しいものがある。
 けれど……。

「安心してくれ。シアの命は必ず助ける」

 それも全て飲み込むしかない。

「治療を続けるぞ」




**********************

<セレスティーヌ視点>



「さむい……」

 暖かい室内で寒さに震えるシア。

 治ったんじゃなかったの?
 どうして、こんなことに?

「……」

 今すぐシアに祝福を使いたい。
 心配で、どうにかなってしまいそう。

 でも、今は。

「ゴホッ、ゴホッ!」

 ディアナを放置できない。
 シアのことはコーキさんに任せて、ディアナを治療するしか!

「セレスティーヌ様、ユーフィリア……ありが、ゴホッ!」

 だけど、咳が治まってくれない。
 祝福しているのに、さっきまでの効果が見えてこない。

「ゴホゥ!!」

 咳とともに溢れ出る真っ赤な血まで……。

「ディアナ、しっかりして!」

 そんなディアナの手をユーフィリアが強く握っている。

「……」

 この状況。
 幻視した並行世界の光景にそっくりだ。
 違うのは、苦しんでいる人物だけ。

 そう……。

感想 11

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