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第9章 推理編
あなたのことが……
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セレス様は覚醒したばかり、祝福を十全に行使できるようには見えない。
ただ、今のディアナを救うには祝福しか。
セレス様に頼るしか……。
「問題ありません!」
「「「……」」」
「祝福を行います!」
鬼気迫るその表情に、ヴァーンもアルもユーフィリアも沈黙してしまう。
そんな皆を尻目に、セレス様がディアナに手を伸ばし祝福を発動。
発動……。
「えっ??」
「セレスさん、どうした?」
「そんな! 祝福が!?」
まったく発動しない。
「回復してねえ、のか?」
やはり。
「まだ使えないなんて……」
「「「……」」」
残酷な現実を前に、ヴァーンたちが動きを止め。
セレス様も……。
「コーキさん!」
いや、セレス様は立ち止まっていない。
諦めていない。
「治癒魔法は?」
「……続けています」
もちろん、俺もだ。
一瞬たりとも止まることなく治癒魔法を発動し続けている。
治療しているが。
「ただ……」
治療の効果はというと。
「……」
治癒魔法と低級魔法薬だけでは……。
「セ、レス様?」
「ディアナ?」
「会えて……ゴホッ……よかっ……ゴホゥ!!」
「「「ディアナ!」」」
「ゴホッ……さき、に……」
「何言ってるの!」
「……いき……ゴホゥ、ゴホゥ!!」
「ディアナ!」
「ゴホッ……お、にいさま……?」
「えっ?」
「そこに……おにい……」
幻覚まで!
「……すぐ……おそば、に……」
「……」
「やめて、ディアナ、やめてよ!」
「……ユーフィ?」
「ええ、そうよ! 戻って来て、ディアナ!」
「……ありが……ゴホッ!」
「そんな言葉要らないから、お願い!」
ディアナの顔からは色が消えている。
生気の欠けた瞳は、焦点も定まっていない。
もう……。
「ディアナ、まだ私に仕えてくれるんでしょ!」
「ゴホッ、ゴホゥ……もうし、わけ……」
「……」
「セレ、スさま……あなた、のことが……」
ゆっくりと手をセレス様のもとへ。
「……でした」
「ディアナ!」
「……どうか……に……」
「……」
「……おにい、さ……は、い……」
「「「ディアナぁ!!」」」
虚ろな目で一瞬宙を見据えたディアナ。
そして……。
腕が床に。
「……」
ゆっくりと瞼を閉ざしてしまった。
「そんな……」
「ディアナ、おめえ……」
言葉は返ってこない。
「「ディアナ……」」
「……」
「ディアナ……」
「……」
「……」
「……」
常にセレス様の傍に控え、緊張感を切らすことのなかったディアナ。
手を抜く姿なんて見たこともない。
護衛騎士の見本のような女性だった。
そんな彼女が。
静かに去っていった。
霧が消えるように、逝ってしまった。
「……」
苦しかったはずなのに、その頬には微かな笑みが残っている。
苦悶の色のない安らかな表情。
それだけが……。
「ディアナ!」
風が吹く。
閉鎖された地下の一室に風が。
「ディアナ……」
僅かに湿気を帯びた風が部屋を通り抜け、花瓶に飾られたベニワスレの一枝を揺らす。
ひとひらの花弁が舞い落ちた。
ただ、今のディアナを救うには祝福しか。
セレス様に頼るしか……。
「問題ありません!」
「「「……」」」
「祝福を行います!」
鬼気迫るその表情に、ヴァーンもアルもユーフィリアも沈黙してしまう。
そんな皆を尻目に、セレス様がディアナに手を伸ばし祝福を発動。
発動……。
「えっ??」
「セレスさん、どうした?」
「そんな! 祝福が!?」
まったく発動しない。
「回復してねえ、のか?」
やはり。
「まだ使えないなんて……」
「「「……」」」
残酷な現実を前に、ヴァーンたちが動きを止め。
セレス様も……。
「コーキさん!」
いや、セレス様は立ち止まっていない。
諦めていない。
「治癒魔法は?」
「……続けています」
もちろん、俺もだ。
一瞬たりとも止まることなく治癒魔法を発動し続けている。
治療しているが。
「ただ……」
治療の効果はというと。
「……」
治癒魔法と低級魔法薬だけでは……。
「セ、レス様?」
「ディアナ?」
「会えて……ゴホッ……よかっ……ゴホゥ!!」
「「「ディアナ!」」」
「ゴホッ……さき、に……」
「何言ってるの!」
「……いき……ゴホゥ、ゴホゥ!!」
「ディアナ!」
「ゴホッ……お、にいさま……?」
「えっ?」
「そこに……おにい……」
幻覚まで!
「……すぐ……おそば、に……」
「……」
「やめて、ディアナ、やめてよ!」
「……ユーフィ?」
「ええ、そうよ! 戻って来て、ディアナ!」
「……ありが……ゴホッ!」
「そんな言葉要らないから、お願い!」
ディアナの顔からは色が消えている。
生気の欠けた瞳は、焦点も定まっていない。
もう……。
「ディアナ、まだ私に仕えてくれるんでしょ!」
「ゴホッ、ゴホゥ……もうし、わけ……」
「……」
「セレ、スさま……あなた、のことが……」
ゆっくりと手をセレス様のもとへ。
「……でした」
「ディアナ!」
「……どうか……に……」
「……」
「……おにい、さ……は、い……」
「「「ディアナぁ!!」」」
虚ろな目で一瞬宙を見据えたディアナ。
そして……。
腕が床に。
「……」
ゆっくりと瞼を閉ざしてしまった。
「そんな……」
「ディアナ、おめえ……」
言葉は返ってこない。
「「ディアナ……」」
「……」
「ディアナ……」
「……」
「……」
「……」
常にセレス様の傍に控え、緊張感を切らすことのなかったディアナ。
手を抜く姿なんて見たこともない。
護衛騎士の見本のような女性だった。
そんな彼女が。
静かに去っていった。
霧が消えるように、逝ってしまった。
「……」
苦しかったはずなのに、その頬には微かな笑みが残っている。
苦悶の色のない安らかな表情。
それだけが……。
「ディアナ!」
風が吹く。
閉鎖された地下の一室に風が。
「ディアナ……」
僅かに湿気を帯びた風が部屋を通り抜け、花瓶に飾られたベニワスレの一枝を揺らす。
ひとひらの花弁が舞い落ちた。
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