30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

決意 1

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「ほんとかよ、コーキ?」

 幸奈として現代日本で暮らした経験があったからだろう、セレス様は疑問を残しながらも俺の話を信じてくれた。が、他の皆は信じられるわけもないか。

「そんな話、聞いたこともねえぞ」

 こっちの世界でそこまでの失血をした場合、一命を取り留めること自体難しい。
 失明する前に命を失ってしまうはず。
 それなら、話に聞くことがないのも当然だ。

「コーキさん?」

「……大量の失血は失明に繋がることもあります」

「「……」」

「「……」」

 もちろん、この世界に暮らす人々の人体構造、機能があっちの世界の人々と同じであることが前提なんだが。

「けどよ、それが本当なら、血が戻れば目も見えるようになるってことだよな?」

「……」

 そう単純な話じゃないんだ。
 ただ……。
 視力は簡単には戻らないなんて、この場で言えるはずもない。

「シアの視力は回復するのですか?」

「回復するんだろ?」

 沈黙する俺に、皆が良い答えを期待している。

「先生?」

「……」

 口を開けない。
 回復の見込みが薄いなんて口に出すことは……。

「コーキ……」

「コーキさん……」

「……」

「「「……」」」


 いや。
 待てよ。
 ここは日本じゃないんだ。
 だったら、回復の可能性も方法も日本とは異なるはず。

 そもそも、人体構造が違うかもしれないし、この世界には魔法や魔法薬、宝具なんていう代物まで存在する。神様だって実在して、テポレン山の下に住んでいるんだ。

 シアの視力が戻っても何もおかしいことはない。


「コーキ、頼むから無理とは言わねえでくれ」

 ああ、今はもう無理だというつもりはない。
 ただ。

「この後の様子を見てみないと、はっきりしたことは言えない」

「視力が戻らねえってのか?」

「その可能性も考えられる」

「なっ!」

「「コーキさん!」」

「が、術はあるはずだ。シアの視力を戻す手段がな」

 こんなこと、決して明言できることじゃないと分かっている。

「そう、か!」

 もちろん、簡単なことではないだろう。
 それでも必ず。

「視力は戻るからな、シア」

「先生……」




***********************

<ヴァーン視点>



「シア……」

 エンノアの地下広場。
 その中央にある神像の近くに佇むシア。

 視力を失ってから自由に動くことができなくなったシアは、こうして広場で物思いにふけることが多くなった。

 俺はただその横にいるだけ。
 シアの苦しみを引き受けることもできない。

「どうしたの、ヴァーン?」

「……何でもない」

「そう」

「……」

「……」

 沈黙の時間も長くなった。

 あれから5日しか経っていないんだ。
 無理もないことだと分かっている。
 俺自身も黙考する時間が増えたんだから。

 ただ、ふたりでいる時くらいは……。

「……」

「……」

「ヴァーン、わたし決めたわ」

 そんな俺の思いを断ち切るように、決然とこちらに向き直るシア。
 言葉にも表情にも、迷いは見えない。

「何を決めたんだ?」

「ここを出る」

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